□ H11年04月期 A-21  Code:[HJ0201] : 整流形電流計の構造と動作原理
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09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1104A21 Counter
無線工学 > 1アマ > H11年04月期 > A-21
A-21 次の記述は、整流形電流計について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
 整流形電流計は、[A]形計器と整流器を組み合わせた[B]用の計器である。この計器は原理上[C]値を指示するが、実際には[D]値を指示するように目盛られている。

可動コイル 交流 平均 実効
可動鉄片 交流 平均 最大
可動コイル 直流 平均 実効
可動鉄片 直流 実効 最大
可動コイル 直流 実効 最大

 この問題は、測定の問題であると同時に、交流の波形に関する問題でもあります。平均値、実効値、最大値といった用語を復習してから、問題に入ります。以下、単に「交流」と書けば「正弦波交流」を指すものとします。

[1]交流の電圧の表し方

 交流は時間的に電圧が変化するので、その電圧は、いろいろな表現の方法があります。ここではFig.HJ0201_aを見ながら、「最大値」「平均値」「実効値」を見て行きます。
Fig.HJ0201_a 交流電圧の意味 平均値と実効値
Fig.HJ0201_a
交流電圧の意味 平均値と実効値
 一つ目は、最大値です。これは、「ある瞬間の電圧」で表現する方法で、最も分かりやすい「山の頂上(又は谷底)」の電圧(Fig.HJ0201_a左上)で示すやり方です。最大値は「振幅」ともいいます。
 二つ目は、平均値です。これは「時間的に積分(面積を求める)して平らに均した電圧」で表現する方法(Fig.HJ0201_a右上)です。一周期分計算してしまうと、負側もあってゼロになってしまうので、半周期だけで計算します。図のピンク色の長方形の高さがその値に相当しますが、最大値をE [V]とすると、正弦波交流の平均値は0.63662E [V]となります(この係数0.6366…は2/πです)。
 三つ目が、最も良く使う実効値です。最大値がE [V]の交流電源があるとして、ここから抵抗負荷に電力を食わせてP [W]の消費があったとします。同じ抵抗負荷に直流電源を繋いで、同じ電力を消費する時、直流電圧は何[V]を示すか、という問題(Fig.HJ0201_a下)の答えが、実効値です。
 つまり、実効値100 [V]の交流と、直流100 [V]を同じニクロム線に繋ぐと、同じ電力を消費する、ということです。正弦波交流では実効値は0.707E [V]となります(この係数0.707…は1/√2です)。
 十分ご存知かとは思いますが、商用電源の100 [V](最近は200 [V]もあるが)は、実効値の表記です。
 以上の中で、注意しておくべきなのは、平均値、実効値、ともに最大値にある係数を掛けるだけで換算可能である、という点と、この係数で換算ができるのは正弦波交流だけ、という点です。正弦波でない交流は、平均値、実効値を求める時の積分結果(=面積)が違ってくるからです。
 正弦波以外の交流で、どの程度違うのかを示す量に、波形率波高率というものがあります。実効値をVe、平均値をVa、最大値をVmとすれば、波高率Kpは、次式で定義されます。
 Kp=Vm/Ve …(1)
すなわち、波高率とは、最大値と実効値の比のことです。上で見てきたように、正弦波交流では波高率は1.41…(=√2)ということになります。波高率が高いということは、実効値に比べて最大値が大きいということですから、ピークが尖った形の波、ということになります。波高率は別名、「クレストファクタ」とも言います。
 次に、波形率についてです。波形率Kfは、次式で定義されます。
 Kf=Ve/Va …(2)
すなわち、波形率とは、実効値と平均値の比のことです。これを正弦波で考えると、上で書いた正弦波の「実効値/最大値=1/√2」と「平均値/最大値=2/π」を使って、
 Kf=Ve/Va=(Ve/Vm)/(Va/Vm)=(1/√2)/(2/π)=1.11 …(3)
と計算できるので、正弦波の波形率は1.11と覚えておいて損はないでしょう(というより、この問題のように知らなければ解けない問題が出ます)。

[2]可動コイル形計器の特性と指示値

 整流形電流計は、整流器と可動コイル形計器(メーター)を組み合わせた電流計です。イメージとしてはFig.HJ0201_bのようになりますが、あまり内部には詳しくないので、本当に整流器に全波整流のブリッジ形が使われているかどうかは分かりません。半波整流でも機能はします。
 本来、可動コイル形計器は直流用の計器ですから、交流を整流した波形(脈流)では正しい値を示しません。コイルや指針には慣性モーメントがあり、変化の速い波形には追随できない特性がありますが、これを逆手にとって、積分値(平均値)を表示させることが可能です。
 可動コイルに電流を流すと、電流に比例した回転力(偶力)が生まれますが、これがバネと釣り合う所で指示が止まります。電流がこれらの慣性モーメントで追随できないほど高速に変化すれば、電流の平均値に比例した位置を指示するはずです。
Fig.HJ0201_b 整流器と可動コイル形計器の組合せ
Fig.HJ0201_b
整流器と可動コイル形計器の組合せ
 これが、可動コイル形計器で平均値Vaが測定できる仕組みです。さらに、これを実効値Veに変換するには、(2)式と(3)式から、
 Kfa=1.11Va …(4)
となります。
 但し、この変換ができるのは(しつこいようですが)測定対象が正弦波の時だけです。インバータを多数接続したりして、正弦波からかけ離れている波形では、誤差を生じます。また、整流器の特性等により、測定可能な周波数も、商用周波数から音声周波数の低い方(数100 [Hz]程度)と考えた方が良いでしょう。
 逆に非常に低い周波数(10 [Hz]程度以下)では、針がぶれて測定ができません。
(ここでは、可動コイル形計器で電圧を測定することを考えていますが、可動コイル形計器は本質的に電流計なので、電圧計として使うには直列に大きな抵抗(倍率器)を入れます。)

それでは、解答に移ります。
 …整流形電流計は、可動コイル形計器と整流器を組合せたものです
 …整流形電流計は、交流用の計器です
 …整流形電流計は、その原理上平均値を指示します
 …平均値に係数を掛けて、実効値を指示するように目盛ります
となりますから、正解はと分かります。