□ H12年12月期 A-03  Code:[HA0901] : 磁界中の導体に流れる電流。電流と導体に働く力の方向の関係
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12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1212A03 Counter
無線工学 > 1アマ > H12年12月期 > A-03
A-03 図1において、磁界中の直線状の導体に紙面の裏から表の方向に電流が流れているとき、直線状の導体に働く電磁力の方向と、図2において、電磁力Fが矢印方向へ働くとき、磁界中の直線状の導体に流れる電流の方向との組合せとして、正しいものを下の番号から選べ。

図1の電磁
力の方向
図2の電流の方向
紙面の表から裏の方向
紙面の裏から表の方向
紙面の表から裏の方向
紙面の裏から表の方向
問題図 H1212A03a
Fig.H1212A03a

 フレミングの右手、左手の法則は覚えにくい(私だけ?)ですね。どの指が何の向きだったか、右と左で各3本、計6本の方向を暗記しなくてはならなくて、試験の時に忘れてしまったら困ります。そんな時に、あまり暗記に頼らず、問題が解ければいいと思いませんか? 暗記が苦手な私は、いつもそう思います。

[1]電流と磁界の相互作用を理解する

 上に書いたように、この手の問題が出たら、フレミングは使いません(使えません)。どの指がどれ(電流、磁力線、力)に当たるかも、すぐに思い出せないので。自然界には右手、左手、という人間がこじつけた?理解の仕方よりも、もっとシンプルな必要最低限の原理・原則で解ける理屈があるはずだ、と思ってきました。
 では、その覚えておくべき最低限の原理原則は何か、というと、以下の3つだと思っています。
 (1) 電流が作る磁界の向きは右ネジの向き
 (2) 磁力線は交わらず、常に広がろうとする
 (3) 磁界と運動する導体(閉回路)がある時、運動を妨げる方向に力が働く、あるいは起電力が発生する
 (1)は電流によって作られた磁界であろうと、磁界中を運動している導線に発生した誘導電流であろうが、普遍的に言えることですし、(2)も同様です。また、(3)は言い換えると、閉回路が囲む磁力線の数が変わる(回路が磁力線を束ねる「断面積」が変化してもいいし、磁力線の密度=磁束密度が変化してもよい)ように動く時、その変化が妨げられるように力が働いたり、起電力が発生したりする、ということです。

[2]磁界中の電流が受ける力(フレミングの左手の法則)

 上記をもう少し具体的に図で説明します。まずは、磁界中に電流が流れている場合、その電流が受ける力についてです。Fig.HA0901_aをご覧下さい。
Fig.HA0901_a 電流が作る磁界と力
Fig.HA0901_a
電流が作る磁界と力
 磁界の中に流れる電流を置くと、磁石が作る磁力線と、電流が作る磁力線が重ね合わされます。このような配置と電流・磁界の向きでは、電線の下半分では磁石が作る磁界の向きと電流が作る磁力線とが同じ方向を向きます。逆に、上半分では、2つの磁界の向きが逆になります(ここまでで使うのは(1)右ネジの法則のみ)。
 すると、今度は上に述べた(2)のように(同じ向きの)磁力線の密度が上がろうとすると、それを妨げようとする力が電流に働くので、力は磁力線の密度が高い方から低い方に向きます。
 すなわち、この図では電線には上向きの力が働くことになります。電線を止めておこうとする力が他になければ、電線は上向きに運動を始めます。これがモーターの原理です。また、これがフレミングの左手の法則の説明にもなっています。
 試験場で、どうしてもフレミング左手の法則が使いたくなったら、「モーターのスイッチは(力のない)左手でも入れられる」と覚えておけば、磁界中の電流が受ける力の説明が「左手」だ、ということを思い出すことができます。どの指が何の向きだったか、までは出ませんが…。

[3]運動する電流が磁界から受ける力(フレミングの右手の法則)

 次に、逆のケースを検討します。「逆」というのは正確ではありません。正確には「磁界の中を運動する導体が横切るケース」です。
 このケースは、Fig.HA0901_bのように考えます。磁界の中を導体が横切って、そのことにより誘導電流が流れ「たら」(この「たら」が重要)、磁力線がどうなるか、を考えます。
 上の原理原則(3)のように、磁界から電流(電線)が受ける力は、その運動を妨げる向きですから、この図で行けば、上向きに動いている運動を妨げるのは下向きの力です。
 誘導電流の向きを考えるにはこうします。誘導電流が作る磁界と磁石の磁界が重ね合わされて下向きの力が働くのだから、磁力線の密度は導体よりも上側が高くなっているはず
Fig.HA0901_b 運動する導体と磁界
Fig.HA0901_b
運動する導体と磁界
 つまり、電流の周囲にはこの面から見て右回りの磁界が生じている、ということは、誘導電流は画面の表から裏へ向かう方向であるはずです。
 これが発電機の原理で、フレミングの右手の法則にもなっています。試験場で、またまたフレミング右手の法則が使いたくなったら、「発電機は(力の要る)右手でなければ回らない」と覚えておけば、誘導電流の原理が「右手」だ、ということを思い出すことができます。これまた、どの指が何の向きだったか、までは出ませんが…。
 また、重要なことは、回路が閉回路でない場合(つまり誘導電流が流れない場合)は起電力は存在しますが、導線は力を受けません。上で、誘導電流が流れ「たら」、が重要だと書いたのはこのことです。誘導電流が流れなければ、これが作る磁力線もありませんから、磁石が作る磁界から力を受けることもありません。
 発電機に負荷を繋がず回転させるのに、軸の摩擦程度の力しか必要ない事実が、このことを説明しています。

それでは、解答に移ります。
 問題図1の配置は、Fig.HA0901_aと同じですから、「電磁力」は上向きで、答えはです。これがきちんと分かれば、問題図2の方は確認になります。電磁力の向きは磁力線の密度が低い方向ですから、電流によって図2の「直線状の導体」には左回りの磁界が生じています。右ネジの法則で考えれば、電流は画面の裏から表に流れていることになります。従って、こちらの答えはBかDとなり、図1の結果とあわせて、が正解と分かります。