□ H13年04月期 A-10  Code:[HH0702] : 八木アンテナをスタックとした時、一本の利得とスタック段数から利得計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1304A10 Counter
無線工学 > 1アマ > H13年04月期 > A-10
A-10 利得8 [dB]の同一特性の八木アンテナ4個を、2個ずつ同じ向きに横方向に並べて2組に分け、これらを縦に積み重ねて2列2段のスタックの配置とし、各アンテナの給電点が同じ位相になるように結合器で合成したとき、このアンテナの総合利得の値として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、log102=0.3とする。
 10 [dB]  12 [dB]  14 [dB]  16 [dB]  18 [dB]

 指向性アンテナでは多エレメントになればなるほど、エレメント(導波器)を増やすより、同じアンテナを複数並べた方が利得の増加が大きいため、よくスタックにします。ここでは、スタックにすると、どれだけ利得が上がるのかを問われています。なお、スタックにするアンテナは八木アンテナには限りませんが、ここでは例として八木アンテナで考えます。

[1]アンテナ2本で2倍、4本で4倍…

 アンテナをスタック(ここでいう「スタック」とは、上下方向に重ねる方法も、水平方向に並べるいわゆる「パラ」も両方のことを言います)にすると、利得が上がります。基本的には、アンテナの数が2本になれば、最大放射方向に得られる電波のエネルギーは2倍になり、4本になれば4倍になります。
 ここで、「基本的には」と書いたのは、スタックに必要な分配器の損失等、アンテナに至るまでの経路上の損失と、アンテナの配置により理想的に2倍にならないことがある(スタック間隔が狭すぎるor広すぎる場合など)からです。
 国家試験の問題を解くのに、そんな複雑な条件があっては難しくなりすぎるので、シンプルに考えて解きましょう。
 電力で2倍というのはデシベルで表せば約+3 [dB](=10log2)です。さらに、4倍というのは約+6 [dB](=10log4)です。従って、単体の利得が10 [dB]なら、2本スタックにした時は約13 [dB]、4本スタックなら16 [dB]といった具合です。
Fig.HH0702_a 八木アンテナのスタックと利得
Fig.HH0702_a
八木アンテナのスタックと利得
 なお、アンテナの利得の表記には相対利得と絶対利得がありますが、どちらで表記されていても、これまで書いたことは成立します。表記が絶対利得なら、スタック後の利得も絶対利得、というだけのことです。問題文中の利得の表記がどっちなんだ?なんて悩む必要はありません。
 さて、利得が増える、ということは、単純に考えれば「遠くの局がよく聞こえる」「自分の電波が遠くまで飛ぶ」ということですが、ビームアンテナを使ったことのある方ならお分かりの通り、これには条件があります。

[2]アンテナのスタックと放射パターンの関係

 その条件とは、ビームのメインローブのピーク(つまり最大放射方向)でないと信号が弱まる、ということです。言われてみれば当たり前のことですが、いくらゲインの高いアンテナを使ってスタックにしても、サイド方向から呼ばれては聞こえないことすらあります。
 これは、指向性アンテナというものが、一方向に放射する電力のみにエネルギーを集中することで利得を得ているからです。言い換えれば、全立体角(方位)に均等に電力をばら撒いてしまうことはやめて、電力を全てかき集めて、目的とする方向(最大放射方向)に絞り込んで放射するのが指向性アンテナ、ということになります。従って、利得が上がれば上がるほど、ビームがシャープになるので、サイドから呼んで来る局はどんどん弱くなります。
 スタックにして利得が上がることもこれと同じことで、
 ・水平方向にスタック(パラ)にすれば水平面内の指向性がシャープになり、
 ・垂直方向にスタックにすれば垂直面内の指向性がシャープになる
ということです。従って、4本のアンテナをスタックにしたい場合、利得の増加は4列1段でも2列2段でも4段1列(こんなの普通はやりませんが)でも、利得の増加は+6 [dB]ですが、ビームパターンはそれぞれ違ったものになります。
 それから、問題文中に書かれていることですが、スタックにする時に給電点の位相を合わせないと、ビームパターンがムチャクチャになります。

それでは、解答に移ります。
 単体で8 [dB]のアンテナを4本スタックにするのですから、上で見たように、その方法(何列何段にするか)に関わらず、利得の増加は+6 [dB]です。従って、8+6=14 [dB]となるので、正解はとなります。