□ H13年04月期 A-22  Code:[HI0201] : 直線偏波が電離層反射後にだ円偏波になる理由と偏波性フェージング
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2022年
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09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1304A22 Counter
無線工学 > 1アマ > H13年04月期 > A-22
A-22 次の記述は、電離層伝搬について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
ダイポールアンテナから放射されたHF帯の水平偏波の電波が電離層で反射して伝搬する場合、電波は、[A]の影響を受けて[B]偏波となって地上に到達する。このため、受信点では垂直偏波用のアンテナでも受信できるようになるが、この偏波の状態は時間的に変化するために[C]フェージングを生ずる。

地球磁界 垂直 吸収性
地球磁界 だ円 偏波性
第二種減衰 垂直 吸収性
地球磁界 だ円 吸収性
第二種減衰 だ円 偏波性

 ダイポールや八木など水平アンテナで送信した電波が、なぜ垂直アンテナで受信できるのか、ずっと疑問でした。HFの電離層波については、この問題で問われているような現象によって、水平成分の他に垂直成分も現れてくるので、交信可能になるわけです。

[1]電離層の正体はプラズマだ

 地球には、太陽から紫外線やそれより波長の短い(=エネルギーの大きな)光が降り注いでいます。この光が、大気を構成する酸素や窒素に当たると、電子(多くの場合は最外殻電子)をたたき出します。つまり、これらの原子が紫外線等に当たってイオンに変化(電離)し、自由電子とイオンからなる「プラズマ」状態となります。
 気体が電離すると、電離がない時には素通りできたものが、電波は反射、屈折、散乱、減衰と、波動としてのいろいろな現象を示すようになります。しかも、それが周波数特性を持つので、HFの電波は反射されて、地球の裏側とも通信できるのに、VHFでは突き抜けてしまうため(通常)近距離としか通信できない、という現象になるわけです。

[2]磁界中のプラズマに電波を入射すると偏波面が回転する

 ここから先はプラズマ物理になってしまうので、私も原理からの説明はできませんので、現象だけ書きます。
Fig.HI0201_a 電離層プラズマと偏波面回転
Fig.HI0201_a
電離層プラズマと偏波面回転
 プラズマを磁界中に置き、直線偏波の電磁波を入射すると、その相互作用距離(プラズマの中を通っている距離)やプラズマの密度、磁界の強さ・向きといった要素によって、回転偏波(楕円偏波)となって出てきます
 電離層プラズマの場合は、磁界は地球の磁場によるものです。
 最初に入射した電波の振動方向をx軸とすると、それと直角なy成分も含まれて出てくる、ということです。x軸が水平方向ならy軸は垂直ですから、垂直成分の電界が含まれることになり、受信側が垂直系のアンテナでも受信できることになります。
 この現象は可逆ですから、受信側が送信した時にも同じ現象により元送信側で水平偏波が受信可能になります。

[3]電離層は変化している…偏波性フェージング

 電離層は自然現象ですので、雲が流れたり沸き起こってくるように、常に変化しています。地球の磁場はほとんど変化しませんが、電離層の中では電子密度の分布や密度そのものが太陽の動き等によって変動しています。
 上に述べた楕円偏波面の長軸、短軸の長さは、プラズマの密度等によって時間とともに変化しますので、受信側では電界強度が変化する現象、すなわち偏波性フェージングが観測されます。

それでは、解答に移ります。
 …偏波面回転に対して電離層が受けるのは地球磁界の影響です
 …直線偏波はだ円偏波となって反射されます
 …回転偏波の状態が変化して生じるのは偏波性フェージングです
となりますから、正解はと分かります。