□ H13年12月期 A-16  Code:[HF0102] : 受信系の等価雑音温度の定義と公式
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1312A16 Counter
無線工学 > 1アマ > H13年12月期 > A-16
A-16 次の記述は、等価雑音温度について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下から選べ。
微弱な信号を受信する衛星通信における受信系の雑音は、受信アンテナを含む受信機自体で発生する雑音とアンテナで受信される宇宙からの外来雑音などの電力和を、低雑音増幅器入力やアンテナ入力に換算した雑音電力で表す。
この雑音電力値が、絶対温度T [K]の[A]から発生する[B]の電力値と等しいとき、このTをアンテナを含む受信機システム全体の等価雑音温度という。したがって、受信機の周波数帯域幅B [Hz]、ボルツマン定数k [[C]]とすると、このときの雑音電力PNは、PN=kTB [W]で表される。

半導体 熱雑音 J/K
半導体 ショット雑音 W/K
抵抗体 熱雑音 J/℃
抵抗体 ショット雑音 W/K
抵抗体 熱雑音 J/K

 宇宙通信や電波天文などで、高感度の受信機を使用する場合、いろいろな要素のノイズをまとめて一つの指標で表すことが考え出されました。ノイズ源がなんであれ、統一した指標で表せれば比較がしやすいからです。その指標が「ある温度の抵抗の両端に発生するノイズ電力」ということなのですが、そもそも抵抗がノイズを発生する、とはどういうこと?なんでしょうか。

[1]抵抗はノイズを発生する

 いきなり本質ですが、どんな抵抗も、その抵抗体の温度で決まるノイズを発生します。これは物理で決まっている(と書くと子供だましですが、本質は電子の熱運動に起因します(研究されたい方は物理の教科書を見てみて下さい)。高価な抵抗を持ってきたからノイズがなくなるか、というとそうではなく、どんな抵抗も、その抵抗値R [Ω]と温度(絶対温度)T [K]、それに測定の対象とする周波数帯域幅B [Hz]の積に比例した大きさのノイズ電力P [W]を下回ることはできません。この関係における比例定数をk(ボルツマン定数)といい、単位は[J/K](ジュール毎ケルビン)です。この関係を式にすれば、
 N=kTBR [W] …(1)
となります。
 このノイズは、抵抗体の選び方や製造方法で増えることはありますが、(1)で決まる限界を下回ることができません。オーディオマニアがいくらお金を出すから、と言って高価な抵抗でアンプを作っても、物理法則を下回るS/Nは得られません。
 設計の現場では、超高感度の光センサなど微小電流源を信号源とする時に、数100 [MΩ]からギガオーム単位の抵抗を使用することもあり、このような抵抗は非常に大きなノイズを発します。ですから、先に挙げた3つの要素のうち、抵抗値Rは回路そのものの設計ですから変更できないとすると、冷やす(Tを小さくする)、フィルタを入れる(帯域Bを狭くする)などして、PNを減らし、S/Nを上げるように設計します。

[2]受信機入力のノイズを規定する等価雑音温度

 このように、抵抗体は温度で決まる熱雑音を発生していますから、受信機の入力ノイズを評価するのに、温度を指標にすることができます。
Fig.HF0102_a 等価雑音温度を使ったノイズの評価
Fig.HF0102_a
等価雑音温度を使ったノイズの評価
 どういうことかというと、受信機で観測される単位帯域幅あたりのノイズ電力が、
(1) 実際にアンテナを接続した時
(2) ある温度Tに保たれたアンテナインピーダンスと同じ抵抗を受信機(のアンテナ端子)につないだ時
で同じであれば、そのアンテナ系の等価雑音温度はT [k]だ、ということができます。早い話が、受信機にアンテナの代わりに抵抗をつなぎ、アンテナをつないだ時と同じノイズ出力が得られるように抵抗の温度を決めてやれば、それが等価雑音温度、ということです(但し、つなぐ抵抗値はアンテナインピーダンスと同じにすること)。
 通常、アンテナインピーダンスは50 [Ω]なので、R=50 [Ω]で計算します。アンテナ系のノイズが大きければ、等価雑音温度が高いということになり、ノイズが小さければ等価雑音温度は低い、ということになります。
 衛星通信の場合、宇宙から飛んでくるノイズも、地面の熱雑音もプリアンプの発するノイズも、みんな一からげにして「抵抗から発生しているとしたら、その抵抗は何[K]に相当するだろう」という評価の仕方です。
 普通、我々が受信機のノイズ、というとS/N比を指標としますが、「比」ではなくノイズの「絶対量」で比較できるのがこの方法です。

それでは、問題に移ります。
 …雑音電力は絶対温度Tの抵抗体から発生するものとして評価します
 …抵抗の雑音のうち、物理で決まる熱雑音を指標とします
 …ボルツマン定数の単位は、J/Kです
となりますから、正解はと分かります。