□ H14年04月期 A-07  Code:[HD0402] : 2個のトランジスタと出力にトランスを用いた平衡変調器の動作原理
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1404A07 Counter
無線工学 > 1アマ > H14年04月期 > A-07
A-07 次の記述は、図に示す平衡変調回路の原理的動作について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
(1) aa’端子から[A]を、bb’端子から[B]を加えて、トランジスタTr1及びTr2の[C]を利用して変調する。
(2) 出力変成器Tの[D]で搬送波成分は打ち消されるため、cc’端子では上側波帯及び下側波帯の成分が得られる。

信号波 搬送波 直線性 一次側
信号波 搬送波 非直線性 一次側
信号波 搬送波 直線性 二次側
搬送波 信号波 直線性 一次側
搬送波 信号波 非直線性 二次側
問題図 H1404A07a
Fig.H1404A07a

 平衡変調器の問題です。リング変調器と並んでアナログ的に搬送波を抑圧した振幅変調波を得たい時に使われますが、最近ではデジタル的に合成してしまう方式(こっちはプロの国家試験で出題されます)もあります。

[1]平衡変調、すなわち消したいのは搬送波

 平衡変調で得たいのは、SSBまたはDSBです。搬送波は要りません。このことを頭に入れて、問題の回路図をよく見れば、搬送波をどこに入力したらいいのかがすぐに分かります。
Fig.HD0402_a 平衡変調器の構成と動作原理
Fig.HD0402_a
平衡変調器の構成と動作原理
 まず、信号波はどこにも入れずに、搬送波だけをa-a'に入れたとします。すると、青矢印のように電流が流れますから、T3の両端には出力が出てしまいます。これでは、搬送波が要らない平衡変調にはなりません。
 では、今度は搬送波だけをb-b'に入れてみます。すると、赤矢印のように3の一次側に流れる電流が、センタータップの上側と下側で逆向き(逆相)なので、打ち消しあって二次側には起電力が生じません。これで、搬送波はb-b'に入れることが分かったので、残る信号波はa-a'に入力します。
 ところが、先に見たように、a-a'に入力した信号は、センタータップの上側と下側で同相なので、出力c-c'に出てきてしまうようにも思えますが、T3は高周波トランスなので、直流はもちろんのこと、信号波(通常は音声周波数)のような低周波は通れません。従って、このままでは出力側には何も出てきません。

[2]両側帯波を得るための仕掛け=デバイスの非線形性

 うまく搬送波を消せたのはいいですが、これでは出力に何も出てきません。どうしてこれが「変調器」として機能しうるんだ!というと、その鍵は半導体素子(この場合はトランジスタ)の「非線形性」にあります。非線形性というと難しく聞こえますが、要するにひずみです。
 オーディオアンプでもHFの1 [kW]のリニアアンプでもそうですが、ある信号を入れてやると、出力は必ず少しはひずみます。特に、fcという正弦波と、fsという周波数の正弦波(普通はfc≫fs)の2信号を入れてやると、単なる和の項と同時に積の項が生じ、その積の方にはfc+fsとfc−fsという2成分のひずみ(混変調ひずみ)が出力されます。これがすなわち両側帯波ですから、この変調器としてはあまりひずみの少ない設計をしてしまうと、出力が出ません。
 詳しい計算は専門書に出ていますので、興味のある方は挑戦していただきたいのですが、このひずみによる電流(両側帯波)は、信号波の電流と同じようにT3の一次側ではセンタータップの上下で同相です。なおかつ搬送波に近い高周波であるため、二次側に出力されます
 この変調器で得られるのはDSBですから、SSBを得るには上側又は下側の側帯波のみを通過するフィルタを、この変調器の後段に設けます

それでは、解答に移ります。
 …a-a'から加えるのは信号波です
 …b-b'から加えるのは搬送波です
 …この変調器はトランジスタの非直線性で変調器として動作します
 …搬送波成分は、Tの一次側で打ち消されます
となりますから、正解はと分かります。