□ H14年04月期 A-19  Code:[HH0303] : 100%変調のAM送信機でインピーダンス既知の同軸ケーブルにかかる電圧の計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1404A19 Counter
無線工学 > 1アマ > H14年04月期 > A-19
A-19 無変調時における送信電力(搬送波電力)が100 [W]のDSB(A3)送信機が、特性インピーダンス50 [Ω]の同軸ケーブルでアンテナに接続されている。この送信機の変調度を100 [%]にしたとき、同軸ケーブルに加わる電圧の最大値として、正しいものを下の番号からを選べ。ただし、同軸ケーブルの両端は整合がとれているものとする。
 50 [V]  71 [V]  100 [V]  140 [V]  200 [V]

 この問題は、給電線の問題というよりはAM変調度と変調波の振幅の問題といった方がいいものです。変調度と振幅の関係の復習から入ります。また、この問題には落とし穴があります。私がハマっただけかも知れませんが…。その説明もしてみます。

[1]AM変調度と出力電圧振幅の関係 (よく出るので参考)

 AM変調の実時間波形と変調度mの関係は、Fig.HH0303_aの右のようになります。変調波振幅のピーク値をa、最小値をbとすると、変調度mは、
 m=(a−b)/(a+b) …(1)
と表せます。また、搬送波の電圧(最大値)をEc、信号波の電圧(最大値)をEsとすると、変調度mは
 m=Es/Ec …(2)
とも表せます。実は、この問題で使うのはこの式だけです。
 これらの式の他、AM変調には変調度と電力の関係式もあります。搬送波の出力、すなわち無変調時の出力をPcとすると、変調度がmの時の側波帯の電力をPL(下側)とPU(上側)は、
 PL=PU=(m2/4)Pc …(3)
Fig.HH0303_a AM変調波の変調率と電力
Fig.HH0303_a
AM変調波の変調率と電力
となります。従って全出力PTは、搬送波電力と両側波帯の電力の和ですから、
 PT=Pc+PL+PU=(1+m2/2)Pc …(4)
となります。
 この関係はこの問題を解くのには直接関係はありませんが、AM変調で出題されるかもしれませんので、載せておきました。また、後で「私のやった大間違い」のところでの説明に使用します。

[2]伝送電力とケーブル内の電圧

 ここでは、ケーブルと負荷は整合が取れている場合について聞かれているので、考慮に入れる必要はありませんが、普通は厳密に整合が取れていないことの方が多いでしょう。整合が取れている場合は、(1)式又は(2)式とオームの法則だけで解けます。まず、同軸ケーブルにかかる搬送波のみの電圧Ec(最大値)を求めます。搬送波電力Pcは、
 Pc=(Ec/√2)2/Z0 …(5)
ですから、これをEcについて解いて、
 Ec=√(2Pc0) …(6)
次に、変調度がmの時は、最大電圧Emaxは(2)式より、
 Emax=Ec+Es=Ec+mEc
   =Ec(1+m) …(7)
と表されます。この式に、(6)式から求められるEcを代入すると、
 max=(1+m)√(2Pc0) …(8)
となるので、問題に与えられた各々の数値を代入すればEmaxが求められます。注意すべきなのは、問題中の電圧が、最大値(信号振幅)で書かれているのか、実効値で書かれているのか、という点です。引っ掛からないようにして下さい。

[3]私のやった大間違い

 自分の実力を思い知らされる「事件」でした。これは、このページを作成している時のことです。以下に書くことは、私のやらかした大間違いですので、絶対に真似をしないで下さい。
 変調度がmで、搬送波出力がPcのAM波の出力電力PTが、(4)式で表されることは説明しました。ならば、この電力がZ0の純抵抗に加わったら、その抵抗の両端の電圧がいくらになるか、を計算すればケーブルにかかる最大電圧Emaxが出るじゃないか、と考えたわけです。これが大間違いなのですが、その理由は後で説明します。
 PT=(Emax/√2)2/Z0 …(9)
なので、これをEmaxについて解いて、
 Emax=√(2PT0) …(10)
これに(4)式を代入して、
 Emax=√[2(1+m2/2)Pc0] …(11)
あとは各数値を代入するだけ…というわけなのですが、(8)式と(11)式は似ているようで違います。問題は、どこで考え違いをしているか、です。
 正解の方は、単に搬送波振幅と信号波振幅を加えたものから、最大電圧を求めています。一方、「誤解」の方は電力から「実効値」を求め、それを√2倍しています。この考え方は、PTという「正弦波」電力がZ0に消費されている、という前提の下に成り立ちますが、このAM変調波が「正弦波」だと考えたところに誤りがあります。
 つまり、AM変調波は「正弦波」ではなく、「ひずみ波」なので、電力とインピーダンスの積の√が振幅に比例する、という関係が成り立たないのです。周波数fcの搬送波を周波数fsの信号波(正弦波)で変調することを考えても、変調されて出てきた信号波、どう見ても正弦波ではありません。便利なオームの法則ですが、交流に適用する場合は、その元となる波形が正弦波なのかどうかに注意を払わないと、大間違いを犯してしまう、という悪例でした。

それでは、解答に移ります。
 (8)式に、Pc=100 [W], Z0=50 [Ω], m=1 (100%)を代入すれば、
 Emax=2√(2×100×50)=200 [V]
となりますので、正解はと分かります。