□ H14年08月期 A-13  Code:[HE0505] : 直接・間接FM方式の違いと、周波数安定度向上のための付加回路
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無線工学 > 1アマ > H14年08月期 > A-13
A-13 次の記述は、FM(F3)変調方式について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
 FM変調方式には、一般に[A]の同調回路におけるリアクタンスを変調信号によって変化させる直接FM方式と、発振器の後段に[B]を設ける間接FM方式とがあり、前者には搬送波の周波数安定度を良くするために[C]を用いる。


自励発振器 位相変調器 AFC回路
自励発振器 平衡変調器 AFC回路
自励発振器 位相変調器 IDC回路
水晶発振器 平衡変調器 IDC回路
水晶発振器 位相変調器 IDC回路

 直接FM変調と、間接FM変調についての問題で、よく出題されています。両者に違いは、一言で言ってしまえば、発振器の発振周波数を外からの変調入力で変えてしまうのが直接変調、常に一定の周波数で発振している回路に外部回路を付加し、信号の位相を変える(PM)ことで等価的にFMを得るのが間接FM方式です。間接FMに関しては、何だか分かったようなワカナライような…ですが、できるだけ分かりやすく説明してみます。

[1]発振周波数をダイレクトに変える直接FM変調の原理

 FMとはそのものずばり、「周波数を変える変調」ですから、例えば、LC発振器で発振している周波数を、L(インダクタ)またはC(キャパシタ)の値を外部から何らかの方法で変化させてやれば、すぐにFM波が得られます。
 Fig.HE0505_aは、そんな考えを具体的な形にした例です。左から信号波(交流)が入ってくると、その振幅が黄色で囲まれた中の可変容量ダイオードDVにかかる逆バイアス電圧を変化させます。すると、この共振回路のCが変化しますから、共振周波数が変化して、出力周波数が信号波によって変化します
 ちなみに、R1とR2は、DVに逆バイアス電圧を与えるための抵抗で、C1は直流阻止の為のACカップリングのため、L1は信号波(低周波)と直流を通し、共振回路の高周波を入力側に漏らさないためのチョークコイル的役割です。
Fig.HE0505_a Cが外部より可変の直接FM変調器
Fig.HE0505_a
Cが外部より可変の直接FM変調器
 また、C2は直流阻止の為のACカップリングのために設けられています。高周波的にはショートなので、DVとC3は並列になっていると考えられます。
 Trはエミッタフォロワになっていて、出力電圧の一部がC4によって帰還されます。Trのバイアス点は、R3とR4(とR5)で定めます。C5は次段へのカップリングコンデンサです。
 割と単純で、すぐこれで送信機に使えそうな感じですが、直接周波数を変化させられるLC発振器というのは、やはり安定性に問題があります。そこで、次に述べるAFC回路で周波数を安定化させてやる必要があります。

[2]直接変調の安定度を補うAFC回路

 AFC回路は、LC発振器の不安定さを補正するフィードバック回路の一種で、Fig.HE0505_bのような構成になっています。
 水晶発振器は(通常は)LC発振器で発振すべき周波数で、安定に発振することができます。その出力とLC発振器からの直接FM変調出力を周波数混合器に入力します。
 周波数混合器では、通常2つの入力の和と差の周波数が出てきますが、ここでは差を取ります。つまり、LC発振器の周波数が、理想的な(水晶が供給する)周波数からのズレの周波数信号として取り出すわけです。
 さらにこれを増幅(ここでの増幅は緩衝増幅的な役割でしょう)して、周波数弁別器に入力します。周波数弁別器は、FM復調の回路でも出題されていますが、入力の周波数に対応した電圧を出力します。
Fig.HE0505_b AFC回路の構成と動作
Fig.HE0505_b
AFC回路の構成と動作
 この電圧を、可変リアクタンス回路に周波数の変動を打ち消す極性にして加えてやれば、LC発振回路の周波数の変動を水晶の周波数に合わせ込むことができます。
 ここでお気づきの方もおられるかと思いますが、この補正は高速で行なうとFM変調でかかった(本来変動してしかるべき)周波数のズレまで補正されてしまい、変調がかからなくなったと同じことになってしまいます。なので、音声周波数よりももっとゆっくりな応答での変動を抑えるようになっているのだと思います(実設計をしたことがないので、自信がありません)。

[3]位相変化を周波数変化に変える間接FM変調

 間接FM変調の方式を理解するには、1アマでは出題されない(将来はわかりません)「位相変調」という変調方式の知識を少しばかり使います。交流にはその特性を表現する要素に、「振幅」「周波数」「位相」という3要素がありますが、この3要素を変化させる方式がそれぞれ存在します。振幅変調はAMですし、周波数変調はFMでした。間接FM変調では、位相を変化させる変調である、PM変調(位相変調)を使います。
 ここで、注意すべきなのは、周波数と位相の関係が微分と積分の関係にある、ということです。大変大雑把な言い方ですが、位相を(時間で)積分すると周波数に、周波数を(時間で)微分すると位相になります。イメージでは、ある(周波数・位相が)一定の信号に対して、位相ズレが積もり積もって周波数が低くなったり高くなったり、逆に、瞬間的な周波数の変化はその時の位相ズレ量に比例する、というような感覚的な理解です。
Fig.HE0505_c 位相変調回路の動作原理
Fig.HE0505_c
位相変調回路の動作原理
 Fig.HE0505_cに位相変調器の原理図を示します。回路の左下の交流電源は、間接FMでは水晶発振器などの安定な交流電源を使います。これに、リアクタンスの並列回路と直列の抵抗Rを接続し、それらの両端に発生する電圧、Vr(抵抗の両端)とVZ(並列回路の両端)に着目します。
 なお、並列回路はインダクタLとコンデンサC、それと「ミソ」である可変容量ダイオード(容量CV)を全て並列に接続します。可変容量ダイオードへの信号波の印加回路は図には示していません。
 この回路のついての電圧ベクトル図をFig.HE0505_cの右に示します。電源Vsに対して、VrやVZは、以下の式を満たします。
 Vs2=Vr2+VZ2 …(1)
すなわち、Vrを底辺とした、高さがVZ、斜辺がVsの直角三角形をなす訳です(VrとVZは位相が90°違うから)。従って、並列回路がどんな状態にあっても、辺Vrと辺VZの交点はVsを直径とする円周上を動くだけです。
 いま、可変容量ダイオードに、ある電圧が加わっていて、Fig.HE0505_c右上のような状態にあったとしましょう。この時、Vsを基準にすると、VsとVZのなす角がθ1であったとします。
 次の瞬間、加わる電圧が変化して、同図右下のような状態に変化したとします。すると、VsとVZのなす角はθ2に変化します。
 ここでのθ1やθ2は、交流電源Vsに対する、並列回路両端に生じる電圧VZの「位相」を示していますから、可変容量ダイオードの両端に加える信号波によって、位相変調されたVZが得られたことになります。
 後は、上に述べた「周波数は位相の積分」なる回路を、どのように実現するか、です。

[4]信号波を積分して加えればいい

 周波数の変化が、位相のズレの積み重ね(積分)であるならば、積分した信号波を入力してやれば周波数変調になるのではないか、というのが間接FMのミソです。位相変調器の信号入力は、すなわち変調出力の位相をきめます。ここに、積分された信号波を入れてやれば、出力が周波数変調になるではないか、ということです。ここで、微分とか積分とか言っていますが、回路を見れば簡単で、微分が高域強調(又は低域減衰)、積分が低域強調(又は高域減衰)の回路です。
 この目的(変調入力に積分された信号波を用いる)のために、間接FM方式では「前置ひずみ回路」というものが用いられます。
Fig.HE0505_d 前置ひずみ回路の構成と動作
Fig.HE0505_d
前置ひずみ回路の構成と動作
 Fig.HE0505_d右にその「前置ひずみ回路」なる、中身が積分器の回路と、周波数特性を示します。灰色で示した抵抗R2は直流での振幅を制限する目的でつけたもので、本質的意味はありません。
 ところで、なぜこの回路が間接FM変調に用いられると「ひずみ回路」というかというと、積分器で相対的に高域を落としてしまいますから、元の波形がいろいろな周波数を含む場合は、出力波形が元の波形とは違った形になる、すなわちひずむからです。
 周波数特はFig.HE0505_d右下に示したように、周波数が倍になれば出力振幅が半分になる、いわゆる6dB/oct特性です。
 同図左のように、これを位相変調器と組み合わせれば、周波数変調信号が得られる、というわけです。具体的にはここで得られた積分された信号波(低周波信号)をFig.HE0505_cの可変容量ダイオードに加え、中間周波で発振している同図中のVsを中心とする周波数変調波が得られたことになります。

[5]間接FM変調と直接FM変調の比較

 それぞれに下記のような特徴があります。

周波数偏移量 周波数安定度
直接FM変調 共振回路の共振周波数を直接変化させるので、大きく取れる。 共振回路がLCで構成されているので、安定度は高くない。外部に安定化回路(AFC回路)が必要。
間接FM変調 リアクタンスの変化による位相変調を利用するので、あまり大きな周波数偏移にはならない。 源発振に水晶を使えるので安定で、AFC回路は不要。

 間接FM変調で大きな周波数偏移を得るためには、変調器の後段に設ける周波数逓倍段の逓倍数を多くしなければなりません。
 最近では、PLLに使うVCO(電圧制御発振器)を直接FMに使うケースもあり、IC回路技術の進歩によって直接FMだから不安定、というわけでもないようですが、今のところ1アマレベルで問われているのは、ここまでです。

それでは、解答に移ります。
 ここまでマスターしてこられれば、解答は容易でしょう。
 …直接FM方式は、自励発振器の周波数を変化させます
 …間接FM方式は、発振器やその後段に位相変調器を設けます
 …直接FM方式では、周波数安定のためAFC回路が必要です
となりますから、正解はと分かります。
 この問題の選択肢からは、上記の正解しかないですが、数多ある変調回路の中には、水晶発信器に可変リアクタンス素子(バリキャップ等)を付加して、電圧で発振周波数を変化させられるVCXOとしてFM波を得る、直接変調方式もあります。ですから、水晶発振器を使っている=間接変調方式である、とは言い切れないので、ご注意下さい。
 選択肢の中に、IDC回路がありますが、IDC回路は過大な音声入力があった時に、即座に周波数偏移を規定内に抑え込む働きをするもので、周波数安定のためのものではありません。AFCと混同しないようにしましょう。