□ H14年08月期 A-24  Code:[HJ0701] : 低周波発振器・電力計・擬似空中線を用いたSSB送信機の出力測定方法
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1408A24 Counter
無線工学 > 1アマ > H14年08月期 > A-24
A-24 次の記述は、図に示す構成によるSSB(A3J)送信機の出力電力の測定方法について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。ただし、[ ]内の同じ記号は、同じ字句を示す。
問題図 H1408A24a
Fig.H1408A24a
 低周波発振器の発振周波数を1,500 [Hz]とし、その出力をレベル計で監視して常に一定に保ち、可変減衰器を変化させてSSB送信機への変調入力を順次増加させてゆき、SSB送信機から擬似空中線に供給される[A]をCM形電力計の入射電力と[B]の差から求める。この操作をSSB送信機の出力電力が最大になるまで続け、変調入力対出力電力のグラフを作り、[C]を読み取る。このときの[C]の値がSSB送信機出力のA3J電波の[D]となる。


尖頭電力 給電線損失 尖頭電力 平均電力
尖頭電力 反射電力 飽和電力 平均電力
平均電力 給電線損失 飽和電力 尖頭電力
平均電力 給電線損失 尖頭電力 尖頭電力
平均電力 反射電力 飽和電力 尖頭電力

 設備規則では、SSB(J3E)電波の出力は、単一周波数の正弦波で変調した時の「尖(せん)頭電力」で表記することになっていて、ここでは、その測定方法について問われています。
(なお、この問題では、電波形式の表記が旧表記(A3J)となっていますが、これは現在の表記ではJ3Eになります。)

[1]CM形方向性結合器の動作原理

 予備知識として、この問題に出てくるCM形方向性結合器について、簡単に復習しておきます。
 CM形方向性結合器は、HFからVHF程度までの広い周波数範囲で使われている方向性結合器です。CMとは、容量性結合のCと、誘導性結合(相互インダクタンス)のMです。CだMだといっても何のことだか良く分かりませんから、回路の実例で話を進めましょう。
Fig.HJ0701_a VHF程度までの方向性結合器
Fig.HJ0701_a
VHF程度までの方向性結合器
 Fig.0701_aの左にCM形方向性結合器の原理図、右に実際の応用を示します。
 原理図で、進行波は左から右に、反射波は右から左に流れるものとします。こうすると、図の真ん中にあるトランスに、進行波に比例した電流TmF、反射波に比例した電流TmRがそれぞれ重なって生じます。また、トランスの両側にあるコンデンサからはそれぞれ電流電流Tc1(負荷側)と電流Tc2(送信機側)が流れます。
 ここで、簡単のため、VSWR=1で反射波がない(ImR=0)とすると、進行波のみに着目(紫色の矢印)して、
 VF=R1(Tc1+ImF)…(2)
 VR=R2(Tc2−ImF)…(3)
つまり、Tc2=ImFとなるように部品定数を選べば、(3)式はゼロになるので、負荷側の端子には進行波(電力の平方根)に比例した電圧が出てくるとともに、送信機側の端子には電圧が出ません。
 また、この回路は進行波に対しても反射波に対しても対称の形をしているので、ここまで書いたことは、反射波にも成り立っています。すなわち、進行波(電力の平方根)に比例した電圧が負荷側に反射波(電力の平方根)に比例した電圧が送信機側に、それぞれ出てくることになります。
 これを実際の回路に応用したのがFig.HJ0601_b右の回路で、トロイダルコアに巻いたトランスの両側にそれぞれ進行波の検波回路、反射波の検波回路を設け、電流計につなげば、クロスメータの出来上がり、というわけです。

[2]SSB送信機出力の測定手順

 それでは、SSB送信機の出力測定方法の本題に入ります。送信機は(出力以外の項目は)調整済みであるものとします。
(1) 各測定器等の接続・設定
各装置等を接続・設定します。低周波発振器の周波数は1500 [Hz]に、可変減衰器は減衰量最大にセットしてスタートします。
(2) 入力信号量を増加させる
 可変減衰器の減衰量を徐々に減らし送信機の入力レベルを上昇させます。
(3) レベルの記録
 入力レベルと出力レベルのそれぞれを記録します。出力レベルは、進行波電力から反射波電力の読みを引きます。
(4) 飽和電力の測定
 入力の増加に対して出力があまり増加せず、ある値に近づきます(「飽和」する)。この値を測定して、この送信機の尖頭電力とします
Fig.HJ0701_b SSB送信機出力の測定方法
Fig.HJ0701_b
SSB送信機出力の測定方法
 測定手順自体はシンプルです。
 なお、問題図では、レベル計が低周波発振器の直後に入っていて、低周波発振器の出力を常に一定に保つのに使用しています。送信機への入力は、可変減衰器の設定で「推定」する方法を取っていますが、この方法だと、可変減衰器の誤差が入力に入り込んできてしまいます。
 これよりもFig.HJ0701_bのように、直接送信機への入力をモニターした方が正確だと思いますが、この問題が問うていることの本質にはあまり関わりがありませんので、こだわる必要はないでしょう。

それでは、解答に移ります。
 …CM型電力計でこの方法で読めるのは平均電力です
 …進行波電力から反射電力を引いたものが、正味の出力です
 …増加が頭打ちになる電力は、飽和電力です
 …SSB波の飽和電力が、測定目的の尖頭電力になります
となりますから、正解はと分かります。