□ H14年12月期 A-02  Code:[HA0702] : バーコア上の2つの巻線の各インダクタンスと結合係数から合成インダクタンスの計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1412A02 Counter
無線工学 > 1アマ > H14年12月期 > A-02
A-02 図に示す回路において、コイルAの自己インダクタンスが64 [mH]及びコイルBの自己インダクタンスが16 [mH]であるとき、端子ab間の合成インダクタンスの値として、正しいものを下の番号から選べ。ただし、直列に接続されているコイルA及びコイルBの間の結合係数を0.5とする。
 72 [mH]
 90 [mH]
 96 [mH]
112 [mH]
120 [mH]
問題図 H1412A02a
Fig.H1412A02a

 2つのコイルが磁気的に結合して巻かれている時、合成インダクタンスを求める公式は、覚えなくてはなりません。暗記が苦手でも、オームの法則や、LCの共振周波数を求める公式と同様、こればかりは仕方ありません。

[1]磁気的に結合した2つのコイルのインダクタンス

 自己インダクタンスがLAのコイルAとLBのコイルBの合成インダクタンスLは、次の式で与えられます。
 L=LA+LB±2M …(1)
 ここで、Mは「相互インダクタンス」といわれるものです(Mの係数2を忘れないように)。ちなみに、巻き方の形態はトロイダルコアに巻かれたような形状になっていても、棒状のコアに巻かれたようになっていても、(1)式は同じです。
 注意したいのはその複号で、コイルAとコイルBに同じ向きの電流を流した時、両者が作る
 ・磁力線の向きが同じなら
 ・磁力線の向きがなら
となります。問題の図のコイルの巻き方向が違っていたりするので、注意して図を良く見て下さい。この問題の図では、Fig.HA0702_aのように2つのコイルに同じ電流を流したとすると、コアに沿っての磁力線の向きは同じなので、式(1)の複号は+を取ります。
 ところで、この「相互インダクタンス」とやらをもう少し詳しく見てみましょう。
Fig.HA0702_a 結合した2つのコイル
Fig.HA0702_a
結合した2つのコイル

[2]相互インダクタンスとは何か

 相互インダクタンスというのは、2つのコイルが磁気的に結合することによって生じるインダクタンスと考えていいでしょう。ではもう少し突っ込んで、「磁気的に結合することによって生じるインダクタンス」とは何でしょうか? そもそも、コイルが「磁気的に結合する」とは、AとBの2つのコイルがあるとすると、これらのコイルに電流(交流)を流すと、Aで生じた磁力線がBに誘導し(起電力を生じる)、また、Bで生じた磁力線もAに誘導する、ということです。
 このため、コイルは結合がゼロでない限り、抵抗やコンデンサの直列・並列合成のように、合成インダクタンスが単純には計算できないのです。
 相互インダクタンスは、複数のコイル間の結合なので、結合の度合いが強いか弱いかによって、その値が変わってきます。では、「結合が強い(結合が密)」とか「結合が弱い(結合が疎)」というのは、何によって決まるのでしょうか?
 それは、一方に流れる電流によって生じた磁力線が、他方のコイルにどれだけ鎖交したか、で決まります。つまり、お互いに相手の発生させた磁力線がすべて自分と鎖交するなら結合は最も強く、全く鎖交しないなら結合は0ということになります。
 そこで、この結合の強さという概念を「結合係数」という定数k(0≦k≦1)で表します。結合係数が1、ということは相手の発生させた磁力線がすべて自分と鎖交すること、結合係数が0、ということは、相手の磁力線が全く自分に鎖交しないことを意味します。
 ここで、相互インダクタンスMと結合係数の関係は、
 M=k√(LA・LB) …(2)
となります。Mがこのようになる理由について、数式での導出は行いませんが、次のように考えます。
 コイルAに変化する電流が流れて、自らに発生させる起電力とコイルBに発生させる起電力の比と、その逆、及びコイルA・B各々の巻き数比×結合係数kの関係から、巻き数比を消去すると(2)が得られます。
 さて、問題を解くには、各コイルの自己インダクタンスと結合係数が与えられていますから、(2)を(1)式に代入すれば、
 L=LA+LB±2k√(LA・LB) …(3)
となり、合成インダクタンスが求められます。

それでは、解答に移ります。
(3)式に、LA=64 [mH],LB=16 [mH],k=0.5を代入(複号は+)すれば、
 L=64+16+2×0.5×√(64×16)=112 [mH]
となりますから、が正解と分かります。

ここからは余談です。
 コイルの性質に、「自己インダクタンスは巻数の2乗に比例する」というのがありましたね。それなら、N回巻のコイルがNA回巻のコイルとNB回巻の2つのコイル(つまり、N=NA+NB)からなり、結合係数が1だと考えると、(3)式は正しいのでしょうか?
 LA=αNA2 ,LB=αNB2 …(4)
 L=α(NA+NB2 …(5)
と表せます(αは比例定数)。ここで、(4)を(3)に代入すれば、
 L=αNA2+αNB2+2√(αNA2×αNB2
  =α(NA2+NB2+2NAB
  =α(NA+NB2
となって、これはまさに(5)式ですから、(3)式は1つのコイルを2つの部分に分けたものについても成り立つのが分かります。
 逆に言うと、(3)の公式を忘れたら、自己インダクタンスと巻数の関係を思い出せばよいということになります。その際、結合係数や複号のどちらを取るかは問題文に合わせて考えなければなりません。