□ H14年12月期 A-24  Code:[HJ0302] : 整流器と可動コイル形計器で交流電圧を測定する場合の倍率器の抵抗値計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1412A24 Counter
無線工学 > 1アマ > H14年12月期 > A-24
A-24 最大指示値2.5 [mA]の可動コイル形直流電流計を用いて、整流器と倍率器を接続し、図に示すような最大指示値が250 [V]の交流電圧計を作るため、倍率器として用いられる抵抗の値として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、整流器における損失及び直流電流計の内部抵抗は無視するものとする。
 90 [kΩ]
100 [kΩ]
111 [kΩ]
135 [kΩ]
225 [kΩ]
問題図 H1412A24a
Fig.H1412A24a

 この問題のキーは、可動コイル形電流形に(全波)整流器を通して正弦波交流を通すと、平均値を表示する、ということです。通常、交流電圧計は実効値で目盛るので値を変換しなくてはなりません。

[1]交流の電圧の表し方

 交流は時間的に電圧が変化するので、その電圧は、いろいろな表現の方法があります。ここではFig.HJ0302_aを見ながら、「最大値」「平均値」「実効値」を見て行きます。
Fig.HJ0302_a 交流電圧の意味 平均値と実効値
Fig.HJ0302_a
交流電圧の意味 平均値と実効値
 一つ目は、最大値です。これは、「ある瞬間の電圧」で表現する方法で、最も分かりやすい「山の頂上(又は谷底)」の電圧(Fig.HJ0302_a左上)で示すやり方です。最大値は「振幅」ともいいます。
 二つ目は、平均値です。これは「時間的に積分(面積を求める)して平らに均した電圧」で表現する方法(Fig.HJ0302_a右上)です。一周期分計算してしまうと、負側もあってゼロになってしまうので、半周期だけで計算します。図のピンク色の長方形の高さがその値に相当しますが、最大値をE [V]とすると、正弦波交流の平均値は0.63662E [V]となります(この係数0.6366…は2/πです)。
 三つ目が、最も良く使う実効値です。最大値がE [V]の交流電源があるとして、ここから抵抗負荷に電力を食わせてP [W]の消費があったとします。同じ抵抗負荷に直流電源を繋いで、同じ電力を消費する時、直流電圧は何[V]を示すか、という問題(Fig.HJ0302_a下)の答えが、実効値です。
 つまり、実効値100 [V]の交流と、直流100 [V]を同じニクロム線に繋ぐと、同じ電力を消費する、ということです。正弦波交流では実効値は0.707E [V]となります(この係数0.707…は1/√2です)。
 十分ご存知かとは思いますが、商用電源の100 [V](最近は200 [V]もあるが)は、実効値の表記です。
 以上の中で、注意しておくべきなのは、平均値、実効値、ともに最大値にある係数を掛けるだけで換算可能である、という点と、この係数で換算ができるのは正弦波交流だけ、という点です。正弦波でない交流は、平均値、実効値を求める時の積分結果(=面積)が違ってくるからです。
 正弦波以外の交流で、どの程度違うのかを示す量に、波形率波高率というものがあります。実効値をVe、平均値をVa、最大値をVmとすれば、波高率Kpは、次式で定義されます。
 Kp=Vm/Ve …(1)
すなわち、波高率とは、最大値と実効値の比のことです。上で見てきたように、正弦波交流では波高率は1.41…(=√2)ということになります。波高率が高いということは、実効値に比べて最大値が大きいということですから、ピークが尖った形の波、ということになります。波高率は別名、「クレストファクタ」とも言います。
 次に、波形率についてです。波形率Kfは、次式で定義されます。
 Kf=Ve/Va …(2)
すなわち、波形率とは、実効値と平均値の比のことです。これも正弦波で考えると、上で述べたように、
 Ve/Va=π/2√2=1.11
となるので、正弦波の波形率は1.11と覚えておいて損はないでしょう(というより、この問題のように知らなければ解けない問題が出ます)。

[2]平均値から実効値への変換

 上で見たように、一つの正弦波交流を3種類の電圧で表現する時、どれも、ある係数(波形率・波高率)で変換できることが分かりました。可動コイル形電流計に(全波)整流回路を接続して交流を流すと、指示値は平均値を示します。
 つまり、最大目盛値の電流(直流)がIDCmaxの可動コイル形電流計に、平均値がIACamax=IDCmaxとなる電流を流すと、最大値まで振れる、ということです。
 平均値がIACamaxの交流電流の実効値IACemaxは、波形率(2)を用い(波形率は電圧で定義していますが、電流で定義しても同じです)て、
 Kf=IACemax/IACamax
 ∴ IACemax=KfACamax …(3)
先に見たように、正弦波交流ではKf=1.11ですから、例えばIACamaxが1 [mA]だったとすると、その時のIACemaxは1.11 [mA]だということです。つまり、直流で1 [mA]フルスケールの電流計は、正弦波交流の実効値で1.11 [mA]流さないとフルスケールにならないということです。
 ならば、倍率器の抵抗値を調整して、実効値1 [mA]フルスケールの電流計にするにはどうしたらいいか、というのがこの問題です。
 直流の時に倍率器RDC [Ω]を接続すると、フルスケール電圧VFSDCが、
 VFSDC=IDCmaxDC …(4)
となります。一方、交流の実効値に対して、倍率器をRAC [Ω]とすると、フルスケール電圧VFSACは、  VFSAC=IACemaxAC …(5)
となります。ここで、IACamax=IDCmaxであることを(4)式に代入すると、
 VFSDC=IACamaxDC …(6)
となり、また、(3)式を(5)式に代入すると、
 VFSAC=KfACamaxAC …(7)
となります。両者のフルスケールが等しいのですから、(6)=(7)とおいて
 IACamaxDC=KfACamaxAC
 ∴ RAC=RDC/Kf …(8)
ガチャガチャと計算しましたが、要するに実効値は平均値(=直流計器の指示値)より大きい(Kf>1)ので、実効値を指示値にするためには、倍率器の抵抗値は、直流の時の抵抗値を波形率で割って(電流を多く流して)やればいい、ということです。

それでは、解答に移ります。
 問題文から、まずRDCを求めます。VFSDC=250 [V]で、IDCmax=2.5 [mA]ですから、
 RDC=VFSDC/IDCmax=250 [V]/2.5 [mA]=100 [kΩ]
となります。Kf=1.11と上記のRDCの値を(8)式に代入して、
 RAC=RDC/Kf=100/1.11=90 [kΩ]
となります。従って、正解はと分かります。