□ H15年04月期 A-19  Code:[HH0401] : 水平面内が無指向性のアンテナ
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1504A19 Counter
無線工学 > 1アマ > H15年04月期 > A-19
A-19 次に挙げるアンテナのうち、主に水平面内における無指向特性が利用されるアンテナを下の番号から選べ。
ターンスタイルアンテナ
HB9CVアンテナ
キュビカルクワッドアンテナ
八木アンテナ
ロンビックアンテナ

 この問題で聞かれているのは指向性です。いろいろなアンテナが選択肢に登場します。中にはあまりアマチュアには馴染みのないものもありますが、一通り構造と性質を復習しておきましょう。選択肢に出てくるアンテナの一般論の解説ですが、その指向性について着目して下さい。
(なお、利得、実効高等の用語については、それらについての問題の解説を参考にして下さい。また、利得などは一般に市販されているものを参考にしているので、絶対的なものではありません。)

[1]基本的なアンテナ…λ/2ダイポール・λ/4垂直接地

 まさに基本的なアンテナです。多くのアンテナのベースになっています。
Fig.HH0401_a 半波長ダイポールの構造と特性
Fig.HH0401_a
半波長ダイポールの構造と特性
Fig.HH0401_b グランドプレーンの構造と特性
Fig.HH0401_b
グランドプレーンの構造と特性

半波長ダイポールアンテナ(Fig.HH0401_a)
項 目 特  性
構造・動作原理 片側約λ/4のエレメントを直線状に展開し、平衡給電する。共振させて用いる
指向性・偏波面 指向性:水平面内=8の字 垂直面内=無指向性
偏波面:銅線の展帳方向に同じ(一般に水平)
インピーダンス 73+j43 [Ω]だが、普通両側を短縮してλ/2より短くし、リアクタンス分(虚数部:j43)をゼロにして使う
利得・実効長(高) 利得2.15 [dBi] 実効長λ/π [m]
電流分布 給電部が電流最大で末端に行くほど正弦的に減少する分布。先端では原理的にゼロ
周波数帯域 共振周波数を中心とする、狭い帯域。
(エレメント径を波長に対して太くすると多少広がる)
特徴・用途等  アマチュアでHFのワイヤー系といえばダイポール。長波長側のバンドではコイルを入れて短縮
 この変形に、インバーテッドV(逆V)アンテナがある。これは、給電点を頂点として逆V形に張ったもの。敷地の狭い所でも張れる。開き角が小さくなるほどインピーダンスは低下、帯域は狭帯域に。他の特性は、ほぼ半波長ダイポールと同様

1/4波長垂直接地アンテナ(Fig.HH0401_b)
項 目 特  性
構造・動作原理 給電線(不平衡)にλ/4のエレメントを接続、片側は接地。接地側が電気影像として動作するので、λ/2ダイポールの半分の長さ(高さ)で済む
指向性・偏波面 指向性:水平面内=無指向性 垂直面内=半円形
偏波面:垂直
インピーダンス 36 [Ω] (λ/2ダイポールの半分)
利得・実効長(高) 利得:λ/2ダイポールとほぼ同じ 実効高λ/2π [m]
電流分布 給電部が電流最大で末端に行くほど正弦的に減少する分布。先端では原理的にゼロ
周波数帯域 共振周波数を中心とする、狭い帯域
特徴・用途等  モービルホイップ等のホイップアンテナもこのλ/4垂直接地アンテナの仲間。自動車の場合は車体が大地とのカウンターポイズ(容量接地)となる。中波放送局などで巨大な鉄塔としっかりした接地で給電しているのもこれ。厳密には容量環(キャパシティハット)が付いていたり、フェージング防止のためにエレメントの長さを変えたりで、正確にλ/4ではないことが多い。アマチュアでは、「バーチカルアンテナ」としても使用

グラウンドプレーン(GP)アンテナ(Fig.HH0401_b)
項 目 特  性
構造・動作原理 ブラウンアンテナともいう。給電線(不平衡)にλ/4のエレメントを接続、片側はラジアル。動作はλ/4垂直接地(バーチカル)とほぼ同じ。ラジアルが平衡電流を阻止するので、不平衡給電が可能
指向性・偏波面 指向性:水平面内=無指向性 垂直面内=半円形
偏波面:垂直
インピーダンス 20+j4 [Ω] (同軸で給電するには低いので、ラジアルに角度をつけたりして調整する)
利得・実効長(高) 利得1.5 [dBi] 実効高λ/2π [m]
電流分布 給電部が電流最大(1/4波長垂直接地アンテナとほぼ同じ)
周波数帯域 共振周波数を中心とする、狭い帯域
特徴・用途等  GPはアマチュアでもHF・VHFあたりで良く使う。業務用でもタクシー無線など、移動する局を相手にするなどの理由で、水平面内の無指向性が必要とされる場合に用いる。HFではラジアルが長くなるので、ラジアルに短縮コイルが入っていることも
 

[2]ダイポールアンテナの変形

 ダイポールアンテナは、基本的なアンテナなので、そのバリエーションがいろいろあります。折り返したもの(フォールデッドダイポール)、十字に交差させたもの(ターンスタイルアンテナ)などが出題されています。
Fig.HH0401_c 折り返しダイポールの構造と特性
Fig.HH0401_c
折り返しダイポールの構造と特性
Fig.HH0401_d ターンスタイルの構造と特性
Fig.HH0401_d
ターンスタイルの構造と特性

折り返しダイポールアンテナ(Fig.HH0401_c)
項 目 特  性
構造・動作原理 片側λ/2のダイポールを折り返してループにした構造。前後のエレメントの径r1、r2やエレメント間隔dでアンテナの特性が変化する。
指向性・偏波面 (水平設置の場合)
指向性:水平面内=8の字 垂直面内=無指向性
偏波面:水平
インピーダンス 半波長で太さがどこも同じの単純な折り返しなら、理論上292+j168 [Ω](半波長ダイポールの4倍)
実用はリアクタンス分を打ち消して200〜300 [Ω]
利得・実効長(高) 利得:約2.15 [dBi] ダイポールと同じ
電流分布 λ/2ダイポールとほぼ同じ
周波数帯域 λ/2ダイポールよりも広帯域
特徴・用途等  広帯域を必要とする、TV受信機のアンテナ(八木アンテナ)の放射器として用いられることが多い。アマチュアでも、周波数の割に帯域が広い430 [MHz]の八木アンテナの放射器として用いられる。
 折り返さないダイポールと異なり、平衡電流が流れないので、同軸ケーブルで給電可能

ターンスタイルアンテナ(Fig.HH0401_d)
項 目 特  性
構造・動作原理 λ/2ダイポールを直交させて配置し、他方をπ/2だけ位相をずらして給電する
指向性・偏波面 指向性:水平面内=ほぼ無指向性 垂直面内=ほぼ無指向性
偏波面:水平(上から見ると、回転偏波)
インピーダンス 73 [Ω] λ/2ダイポールと同じ
利得・実効長(高) -0.85 [dBi] 2本のダイポールに半分ずつ分配するため
電流分布 一本のアンテナについては、λ/2ダイポールと同じ
周波数帯域 λ/2ダイポールと同程度
特徴・用途等  アマチュアではほとんど使われないが、FMやTV放送の送信アンテナとして一般的。放送に必要な無指向性が得られるが、単独ではゲインが低いのと帯域が狭いので、送信鉄塔にFig.HH0401_d右のスーパーターンスタイルアンテナを四方向に配置し、垂直方向に何段も重ねて使う
 

[3]指向性アンテナ(ロンビック・八木)

 ここに挙げる、ロンビックアンテナや八木・宇田アンテナは、強い指向性を持たせることができるアンテナです。
Fig.HH0401_e ロンビックの構造と特性
Fig.HH0401_e
ロンビックの構造と特性
Fig.HH0401_f 八木・宇田の構造と特性
Fig.HH0401_f
八木・宇田の構造と特性

ロンビックアンテナ(Fig.HH0401_e)
項 目 特  性
構造・動作原理 平衡給電された、一辺が数λ以上のひし形をなす2本の導線の終端に、この伝送線路の特性インピーダンスと同じ終端抵抗を付けたもの。進行波が乗り、給電点から終端方向に強い指向性を持つ
指向性・偏波面 指向性
水平面内=給電点から終端の方向の単一指向性(但し、サイドローブの数が多く大きさも大)
垂直面内=打上角は低い
偏波面:水平
インピーダンス 2〜300 [Ω]程度 θや導線間隔に依存
利得・実効長(高) 10〜15 [dBi]程度 これもθや導線の長さ・間隔に依存
電流分布 給電点が最大で、終端に近づくにつれ減衰する分布。減衰した分が空間に放射されている
周波数帯域 進行波アンテナなので、広帯域
特徴・用途等  短波帯で、固定局同士で交信する業務局などが使用。地上高は低くてもよいが、長さ方向のスケールが波長の数倍必要なので、短波で建てようとすると非常に大きな敷地を要する。利得が大きいがサイドローブも大きい。ひし形の一辺の長さと、開き角θの間には、利得に対して最適条件が存在する

八木・宇田アンテナ(Fig.HH0401_f)
項 目 特  性
構造・動作原理 ほぼλ/2の長さを持つ放射器(ラジエーター)に、λ/2よりわずかに長い反射器(リフレクター)、λ/2よりわずかに短い導波器(ディレクター)を前後に配置する。各エレメントの間隔はλ/4程度
指向性・偏波面 指向性:導波器の方向に単一指向性を持つ 導波器を増すと鋭くなる
偏波面:アンテナの設置方向で水平・垂直どちらも可
インピーダンス 特に整合を取らなければ20〜30 [Ω]
導波器・反射器の位置・構成に大きく依存
利得・実効長(高) 10〜16 [dBi]程度 導波器の数を増すと利得が上昇する
電流分布 導波器はλ/2ダイポールと同様。他のエレメントは導波器からの誘導電流が流れる
周波数帯域 共振形なので、ダイポールと同程度。エレメント間隔の最適化や放射器を折返しダイポールにしたりして広帯域化する
特徴・用途等  FMやTVの受信アンテナから、アマチュア・軍用まで、よく使われる。名称は、東北大の八木博士から取ったものだが、実用化研究は宇田博士が行なったため、正式には八木・宇田アンテナと呼ばれる。導波器の本数がある程度以上になると、大型になる割に利得の増加が大きくないので、同じアンテナを複数スタックにする方法で、ゲインを稼ぐ。アマチュアでは、交信相手が固定していないので、ローテーターが必要
 

[4]八木アンテナのバリエーション

 八木アンテナのバリエーションには、様々な物がありますが、ここでは位相差給電のHB9CVと広帯域のログペリオディックアンテナを取り上げます。
Fig.HH0401_g HB9CVの構造と特性
Fig.HH0401_g
HB9CVの構造と特性
Fig.HH0401_h ログペリオディックの構造と特性
Fig.HH0401_h
ログペリオディックの構造と特性

HB9CVアンテナ(Fig.HH0401_g)
項 目 特  性
構造・動作原理 ほぼλ/2の放射器とそれよりわずかに長い反射器に180度反転の位相差給電をする。エレメントの間隔はλ/8〜λ/9と、八木アンテナよりコンパクトにできる
指向性・偏波面 指向性:反射器と反対方向に単一指向性
偏波面:アンテナの設置方向で水平・垂直どちらも可
インピーダンス 位相反転線路部分の構成により大きく変化する
利得・実効長(高) 6〜8 [dBi]程度 (2エレ)
電流分布 λ/2ダイポールと同様だが、放射器と反射器では位相が逆
周波数帯域 共振形なので、λ/2ダイポールと同程度
特徴・用途等  このアンテナは、エレメントの長さと位相反転ラインの調整が難しい(と言われている。実際やったことがないので、分からない)。エレメント間隔が八木よりもコンパクトにできることから、移動用などに多く用いられる。指向性は、2エレではさほどシャープではない

対数周期アンテナ(ログペリオディックアンテナ)(Fig.HH0401_h)
項 目 特  性
構造・動作原理 エレメント長と「頂点」からの距離の比が一定になるようにエレメント長と間隔を決めたもの。各エレメントには180度位相をずらして給電。すべてのエレメントに給電されているが、電波放射に関わるエレメントは1本で、他からはほとんど電波は出ない。
指向性・偏波面 (水平設置した場合)
指向性:短いエレメント方向に単一指向性
偏波面:水平偏波
 八木アンテナと同様、垂直に設置すれば垂直偏波も可能
インピーダンス 八木より高く、ダイポールより低い
利得・実効長(高) 10数 [dBi]程度 (エレメント構成による)
電流分布 電波の出るエレメントの電流分布は、ほぼλ/2ダイポールと同様
周波数帯域 非常に広い。最短のエレメントと最長のエレメントの共振周波数で決まる(多数あるどれかのエレメントが共振するため)
特徴・用途等  単一指向性だが、エレメント数が多い(受風面積が大きい)割に、放射に寄与するエレメントが少ないので利得が低く、アマチュアではあまり見ることがない。50〜1200 [MHz]まで使える物が市販されている。軍用などで、広い範囲の周波数で送受信する必要のある用途に向く
 

[5]ループアンテナ

 今まで見てきたものは、基本的に先端が開放になっているアンテナでした。ここで見て行くものは、導線がループ状になっているもので、波長に対するループの大きさで、2種類に分けてみました。
Fig.HH0401_i 垂直(水平)ループの構造と特性
Fig.HH0401_i
垂直(水平)ループの構造と特性
Fig.HH0401_j キュビカルクワッドの構造と特性
Fig.HH0401_j
キュビカルクワッドの構造と特性

垂直(水平)ループアンテナ(Fig.HH0401_i)
項 目 特  性
構造・動作原理 導線を、波長より十分小さなループに巻いたもの。円形ループ・方形ループなど巻く形は様々
指向性・偏波面 (ループ面を地面に垂直にした場合)
指向性:ループ面に垂直方向が最大になる8の字
偏波面:垂直
インピーダンス 半径r [m]、巻き数nのループの場合、インピーダンスはr/λの4乗に、nの2乗に比例
利得・実効長(高) 実効高h [m]は、ループ面積A [m2]と巻き数nから、
 h=2πnA/λ [m] と計算で求められる
電流分布 ループが波長に対して小さいものは一様
周波数帯域 広い(帯域の概念がない)
特徴・用途等  波長に対してループ(サイズ)が小さいループアンテナは、アンテナとしての効率は低く、送信用アンテナとしてはあまり用いられない。中波や短波では、指向性があるため雑音電界から逃れる目的や、実効高が計算で求められるため、電界強度を計測する目的で使用される

キュビカルクワッドアンテナ(Fig.HH0401_j)
項 目 特  性
構造・動作原理 ループアンテナの中でも1波長分の導線を方形にし、下辺の中心部に給電して放射器とし、ループ長が放射器よりわずかに長い反射器や、短い導波器と組み合わせて指向性を持たせたもの
指向性・偏波面 指向性:導波器方向又は反射器と反対方向に単一指向性
偏波面:給電部分が水平の辺なら水平
インピーダンス ループ単体で100 [Ω]程度
(導波器、反射器を付けると数10 [Ω]に下がる)
利得・実効長(高) 2エレで7 [dBi]程度
電流分布 給電する辺とそれに平行な辺では給電部分(真中)が最大で、両端に行くほど減少する分布。他の辺は、互いに逆位相の分布になるので、放射には寄与せず
周波数帯域 ダイポールよりは広い
特徴・用途等  キュビカルクワッドはループアンテナの一種と考えられるが、ループサイズが波長オーダーと大きいので、小さいループアンテナとは性質が違う。アマチュアでは主にHF〜VHFで主に用いられ、F/B比が大きい、同エレメント数なら八木より利得が大きい等の利点があるが、受風面積が大きく、エレメントを支持する構造が必要
 
 上記の11種類のアンテナのうち、水平面内の指向性が無指向性なのは、λ/4垂直接地(ホイップ)、グラウンドプレーン、ターンスタイルです。

それでは、解答に移ります。
 …ターンスタイルアンテナは水平面内がほぼ無指向性です
 …HB9CVアンテナは水平面内は単一指向性です
 …キュビカルクワッドアンテナは水平面内は単一指向性です
 …八木アンテナは水平面内は単一指向性です
 …ロンビックアンテナは水平面内は単一指向性です
となりますから、正解はと分かります。