□ H15年08月期 A-24  Code:[HB0203] : オシロの波形から周期波形の周期・振幅・平均値・位相差の読取り
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1508A24 Counter
無線工学 > 1アマ > H15年08月期 > A-24
A-24 2現象オシロスコープに二つの交流電圧を加えたとき、図に示すような波形が得られた。二つの交流電圧の位相差として、正しいものを下の番号から選べ。
(原図では波形に着色はありません。)
π/6 [rad]
π/4 [rad]
π/3 [rad]
π/2 [rad]
 π [rad]
問題図 H1508A24a
Fig.H1508A24a

 この問題は、「計測」の問題として出されているのですが、必要とされている知識は周期波形の「周波数」や「位相差」という性質の問題と判断し、「回路」の問題に分類しました。

[1]交流波形の位相とは何か

 まず、交流の性質の中で、最も理解しにくい「位相」について理解しましょう。ご説明はいまさら要しないかもしれませんが、交流、というのは「周期波形」です。同じ形の波が時間とともに何度も繰り返されている、という性質です。
 1秒間に何度繰り返されるか、が「周波数」であり、波の高さが「振幅」(ここでは最大値)です。どれも波の形が一つ描かれていれば、計測できるものです。
 ところが、「位相」というのは、2つの波形の時間差やある基準時間からの差がないと議論できないので、分かりにくいのです。繰り返し波形を一つ持ってきて「この交流の位相は?」という質問は成り立ちません。
Fig.HB0203_a 交流波形の位相差
Fig.HB0203_a
交流波形の位相差
 「位相」は、2つの波形が半周期分ずれたタイミングで存在する時、180度(又はπ [rad])の位相差、1周期分ずれている時は「360度(又は2π [rad])の位相差」といいます。また、一つの波形で議論する時は、波形上の一点を取り、次の周期の同じ点までの位相差を「360度(又は2π [rad])の位相差」と言います。要するに、ある波形と波形の時間差、あるいは同じ波形でも基準からの時間差を周期で割って角度にしたものが「位相差(又は位相)」ということになります。
 但し、一般に位相は周波数(周期)の異なる波形間では定義されません。周波数が異なる、ということは時間スケールが異なっている、ということで、比較できないからです。
 Fig.HB0203_aで説明すると、2つの波形の周期がそれぞれP [s]で、山の「頂上」で比較した場合、その時間差がQ [s]だとすると、位相差φ [rad]は、
 φ=(Q/P)×2π [rad]  (又は(Q/P)×360 [度]) …(1)
となります。普通、電気の世界で位相を表す場合は360 [度]が2π [rad]の弧度法を用いますので、この表現に慣れて下さい。
 なお、ここでは波形の「山の頂上」で比較しましたが、「谷底」でも上昇又は下降方向のゼロクロス点同志で比較しても、全く同じ議論です。

[2]なぜ周波数や周期を用いないのか?

 「周波数」や「周期」は時間軸さえ目盛りが振られていれば、直接読み取ることができますので分かりやすいものです。位相は周期で割るという「正規化」をかけているため、直感的に分かりづらいのです。しかし、位相を用いれば、周波数がどんな値でも絶対値([ms], [μs], [ns], [ps]…)で議論する必要がなく、波の性質を良く表現できるために用いられます。
 例えば、フィルタに交流信号を通す時、位相遅れが生じます。同じ性質を持ったカットオフ周波数が10倍異なる2つのフィルタがあったとして、両者の遅れ時間を絶対時間である、秒で議論すると値が10倍違いますが、位相で議論すれば同じ値になります。同じ性質を持ったものは、周波数が違っても、同じ数値で議論したいですから、位相で表記する方が便利です。

それでは、解答に移ります。
 青の波形と、赤の波形の位相がどれだけずれているか、ですが、まず1周期がどれだけの時間的長さなのかを調べます。
 赤も青も周期が同じ(=周波数が同じ)であることを確認します。これが違っていると位相差を議論できません。そういう目で見ると、両者とも1周期Pが時間軸4目盛り分で、同じです。
 次に、両者の山と山あるいは谷と谷、上り坂のゼロクロス点、下り坂のゼロクロス点、など特徴的な点に目をつけ、それらが何目盛り分ずれているかを調べます。これが位相差の絶対値Qになります。例えば、両者の山の頂上を見ると、1目盛り分ずれています。
 先程、1周期が4目盛り分だと書きました。1周期は角度にすると2π [rad]ですから、1目盛りでは角度に換算して、位相差φ [rad]は、
 φ=(Q/P)×2π=π/2 …(a)
となりますから、正解はと分かります。
 この問題の、オシロの画面のような波形グラフには、時間軸の絶対値が入っていませんが、位相は「比率」なので、絶対時間は必要ありません。