□ H16年08月期 A-22  Code:[HI0101] : 電離層の電子密度(日変化・季節変化・太陽活動との関係)と名前の対応
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05/14 04月期問題頁掲載
01/11 12月期問題頁掲載
2021年
10/17 09月期問題頁掲載
H1608A22 Counter
無線工学 > 1アマ > H16年08月期 > A-22
A-22 次の記述は、電離層の状態について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。
E層は地上約100 [km]の高さに現れ、F層は地上約200 [km]から400 [km]の高さに現れる。
F層の電子密度は、E層の電子密度に比較して大きい。
電離層の電子密度は、昼間は大きく夜間は小さい。
F層の高さは、季節及び時刻によって変化する。
太陽フレアによってデリンジャー現象が発生するが、F層の電子密度は太陽フレアよって変化しない。

 無線をやっていて、この電離層というものには自然の不可思議さを感じずにはいられません。電離層の本質は「電離した気体」ですが、太陽活動や地磁気といった自然現象に左右されて変化する、実に面白いものだと思います。ここではそんな電離層の性質を学びながら問題にかかります。

[1]電離層って何?

 HFに出られる方はもちろん、そうでない方もこの「電離層」というものが何であるのか、基本的知識として持っておくと実際の運用でも役に立つことがあると思います。
 地球には、太陽から紫外線やそれより波長の短い(=エネルギーの大きな)光が降り注いでいます。この光が、大気を構成する酸素や窒素に当たると、電子(多くの場合は最外殻電子)をたたき出します。つまり、これらの原子が紫外線等に当たってイオンに変化(電離)し、自由電子とイオンからなる「プラズマ」状態となります。
 気体が電離すると、電離がない時には素通りできたものが、電波は反射、屈折、散乱、減衰と、波動としてのいろいろな現象を示すようになります。しかも、それが周波数特性を持つので、HFの電波は反射されて、地球の裏側とも通信できるのに、VHFでは突き抜けてしまうため(通常)近距離としか通信できない、という現象になるわけです。
 さらに、反射や透過の性質は周波数に依存するだけでなく、電離の度合い、つまり電子の密度にも依存するので、日の当たらない(=電離がほとんど起こらない)夜間と昼間日差しの強い夏と弱い冬では、その性質が全く異なります。
 電離層は、その言葉通り、層状の構造をしていて、層によって電子密度が異なります。また、季節や昼夜で生成したり消滅したり、常に変化しています。地表に近い層からD層E層12となりますが、冬季や夜間はF1層とF2層はハッキリした境界がなくなり、一体化したようになります。
 文章で簡単にまとめるとこのような解説になってしまいますが、具体的な問題を解くことで、定性的・定量的に理解が深まることと思います。以下、昼と夜の電子密度に着目して、電離層を見て行きます。

[2]電離層の構造…その1 (冬季を除く)昼間

 冬季を除く昼間は太陽光が強いため、電離が盛んに起こります。各層内での電子密度も夜間や冬季に比べて高く、夏季にはF層は明確にF1層とF2とに分かれています(春秋は区別が付かないこともある)。では、地表に近い層からその性質を見て行きます。
Fig.HI0101_a 昼間の電離層の構造
Fig.HI0101_a
昼間の電離層の構造
D層地上60〜90 [km]の高さにあって、電子密度は他の層に比べて最も低いものです。地表に近いので、空気の密度は高いのですが、太陽からの高エネルギーな光線がそれより上層で吸収されているので、電離が弱いためと考えられます。
E層…D層のすぐ上の地上100 [km]前後にあり電子密度はD層よりも少し高い程度です。臨界周波数(他の解説を参照)は3〜4 [MHz]前後で、HFでも低い周波数帯の伝搬はこれによります。
 夏至の前後に、この層と同じ高さに、局地的非常に電子密度の高いスポラディックE層(Es層)が頻繁に出現します。
1…この層は200 [km]前後の高さに出現し、夏には明確にその電子密度の極大値がありますが、春秋には分かりにくいこともあります。電子密度はD,E層に比べてはるかに高くなります。
2…この層はF1層のすぐ上の300〜400 [km]の高さに出現します。春秋にはF1層との区別が分かりにくいこともあります。電子密度は電離層の中で最大で、太陽からの高エネルギー(波長の短い)の光線は、ほとんどこの層とF1層で吸収されます。

 ちなみに、冬季にはF1層とF2層の区別が付かなくなり、高さも下がります。次に述べる、夜間の分布に近くなります。

[3]電離層の構造…その2 冬季と夜間

 太陽光のない夜間や、日差しの弱い冬季の昼間は、電離があまり起こりません。電離層の構造も夏季の昼間とは大きな違いが出てきます。
D層夜間には消滅してしまいます。中波(AM)放送が夜になると、遠くの局がよく入感するのは、昼間には電子密度が高く減衰の大きかったD層が、夜間には消滅してしまうため(中波はE層で反射され伝搬する)です。
E層昼間に比べて大きく電子密度が下がります。この変化率はF層よりも大きいもので、生成・消滅のメカニズムが異なっていることを示しています。
 また、50 [MHz]に出られている方は経験があるかもしれませんが、この高さには夜間でもEs層が出ることがあります。
Fig.HI0101_b 冬季と夜間の電離層の構造
Fig.HI0101_b
冬季と夜間の電離層の構造
F層昼間は分かれていたF1層とF2層が融合して300 [km]付近にひとつのF層となります。電子密度も下がりますが、E層の昼夜の差ほど大きな変化ではありません。

[4]電離層の異常現象

 この問題に問われているのは電離層の日変化や季節変化ですが、電離層の異常現象が選択肢に出てきますので、簡単に見ておきます。
  • スポラディックE層(通称Eスポ)
     E層の欄にも書きましたが、夏至の前後に、数分から数時間にわたり、E層と同程度の高さに、周囲より非常に電子密度の高い局所的な部分が生じる現象を言います。私は理由がわかりませんが、夜間でも発生します。VHFの周波数でも反射するため、夏至の前後にテレビに「異常伝搬現象のため一部の地域で画像が乱れています」と出るのは、大概このEスポです。
  • デリンジャ現象
     太陽からの放射線(X線や荷電粒子)が突然増加して、各層の電子密度が急に上昇し、この層での短波の減衰が増大して伝搬が不能になる現象です。太陽からの放射線と直接関わるため、昼間に発生します。日照のない夜間には発生しません。継続時間は比較的短く、10分〜数10分程度です。電離層透過時の減衰は周波数が高い程少ないので、高い周波数で通信すると軽減されることがあります。
  • 磁気嵐(電離層擾乱)
     磁気嵐は、太陽表面の爆発=フレアから放出されるプラズマとそれに伴う磁力線が地球の地磁気に作用して、磁場を乱すために起こる現象です。これが起こると、電離層(主に高緯度のF層)の乱れにより減衰の増加最高使用可能周波数(MUF)の低下などが起こるため、昼夜に無関係に短波通信が不能になります。原因となるフレアが数日続くことから、回復にも数時間〜数日かかります。

それでは、解答に移ります。
 …E層及びF層の高さについての正しい記述です
 …電子密度は、D層<E層<F1層<F2層なので正しい記述です
 …どの層も電子密度は 夜間<昼間 なので、正しい記述です
 …F層の高さは季節や時刻で変化するので正しい記述です
 …デリンジャ現象は各層の電子密度が上昇するので誤った記述です
となりますから、正解(誤った記述)はと分かります。