□ H16年12月期 B-01  Code:[HA0801] : ヒステリシス曲線のX切片、Y切片の意味と、永久磁石、鉄芯に向く磁性材料の違い
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1612B01 Counter
無線工学 > 1アマ > H16年12月期 > B-01
B-01 次の記述は、図に示す磁性材料のヒステリシス曲線について述べたものである。このうち正しいものを1、誤っているものを2として解答せよ。
aは残留磁気を示す。
bは保磁力を示す。
ヒステリシス曲線は磁化曲線ともいう。
横軸は磁束密度、縦軸は磁界を示す。
ヒステリシス曲線の面積が小さい材料ほどヒステリシス損が大きい。
問題図 H1612B01a
Fig.H1612B01a

 この手の知識のみを問う問題は、それだけを覚えようとすると(特に暗記の苦手な私のような者には)なかなか覚えられないので、何とかその他の項目と連想して覚えるようにしています。

[1]磁化曲線(ヒステリシス曲線)とは何か

 まず、この紡錘形をひん曲げて斜めに伸ばしたようなグラフ(ヒステリシス曲線、あるいは磁化曲線、B-Hカーブといいます)Fig.HA0801_aは何を意味するのでしょうか?
 その前に、基本的な知識として、磁性体(鉄、コバルト、フェライト等)を磁界の中に置くと、それ自体が磁気を帯びる(磁化する)、ということを知っておきましょう。また、外部の磁界をゼロにしても、磁気を保持しつづける(永久磁石)性質もあります。
 このグラフは横軸が加えた磁場の強さ(磁界)で、縦軸が磁性体自身が「磁化」された強さ(磁束密度)です。このことだけは頭に入れてFig.HA0801_aを見てみてください。
Fig.HA0801_a 磁化曲線の行程
Fig.HA0801_a
磁化曲線の行程
  • O→Pの経路
     まず、最初に磁性体が磁化しておらず、加えられている磁界もゼロ(すなわち原点Oの位置)とします。磁性体は次第に磁化して、もうこれ以上外部から磁界を加えても磁化の強さが増加しない点Pに青色のカーブのように近づいて行きます。この点の高さを(問題では問われていませんが)飽和磁束密度といいます。

  • P→Qの経路
     今度は、外部磁界を減少させて0にして行きます。この過程が曲線PQです。ここで注意するのは、外部からの磁界がゼロになっても、磁性体自身がまだ磁化されているという点です。グラフで言うと、Q点の高さ(y切片)aがその磁化の強さを表しています。これを残留磁気(又は残留磁束密度)といいます。ここが高ければ高いほど、永久磁石としては強い磁石になるわけです。

  • Q→Rの経路
     さらに今までとは逆向きの磁界を、磁性体自身の磁化がゼロになるまで加えて行きます。この過程が曲線QRです。磁性体の磁化がゼロになったときの外部磁界の強さbを、保磁力といいます。

  • R→Sの経路
     さらに逆向きの磁界を強くして行くと、もうこれ以上外部から磁界を加えても磁化の強さが増加しない点Sに近づいて行きます。

  • S→T→U→Pの経路
     再び外部磁界を元の方向に強くして行くと、これまで見てきたP→Q→R→Sの逆の経路をたどります。理想的な磁性体では、「行き」と「帰り」でy切片であるaの値や、x切片であるbの値は同じです。

[2]磁化曲線の特徴と磁性体の性質

 詳しい理由は、磁性体の専門書に譲りますが、ある磁性体をコイルやトランスの鉄心として使った時、このヒステリシス曲線で囲まれた面積に比例してエネルギーの損失が起こります。これをヒステリシス損といいます。
 ヒステリシス曲線がやせ細っている磁性体を使う方が、コイルやトランスとしての性能はいいのです。コイルに交流を流した時、磁界がゼロ(コイルに流れる電流の瞬時値がゼロ)になっても磁力が残っているような鉄心は、逆向きの電流が相当流れないとインダクタンスを持たないということですから、「効率が悪そう」な気がします。
 逆に、(上にも書いた通り)永久磁石としては、外部の磁界がゼロになっても磁力が強く残っていて欲しいわけで、このグラフのように太った曲線の材料が好まれる、というわけです。

それでは、解答に移ります。
 …aは残留磁気を示しますから、1正しい記述です
 …bは保磁力を示しますから1正しい記述です
 …ヒステリシス曲線は別名磁化曲線とも呼ぶので、1正しい記述です
 …横軸は加える磁界で縦軸は磁束密度なので、2誤った記述です
 …ヒステリシス曲線の面積が大きいほど損失も大なので2誤った記述です
となります。