□ H17年12月期 A-03  Code:[HA0703] : コイルの電気的性質(自己インダクタンス、リアクタンスと周波数や位相、コアの有無)
インデックス
検索サイトから来た方は…
無線工学の基礎 トップ

以下をクリックすると、元のページが行き先に飛び、このウインドウは閉じます

 ■ 無線工学を学ぶ
 (1) 無線工学の基礎 
 年度別出題一覧
  H11年 4月期,8月期,12月期
  H12年 4月期,8月期,12月期
  H13年 4月期,8月期,12月期
  H14年 4月期,8月期,12月期
  H15年 4月期,8月期,12月期
  H16年 4月期,8月期,12月期
  H17年 4月期,8月期,12月期
  H18年 4月期,8月期,12月期
  H19年 4月期,8月期,12月期
  H20年 4月期,8月期,12月期
  H21年 4月期,8月期,12月期
  H22年 4月期,8月期,12月期
  H23年 4月期,8月期,12月期
  H24年 4月期,8月期,12月期
  H25年 4月期,8月期,12月期
  H26年 4月期,8月期,12月期
  H27年 4月期,8月期,12月期
  H28年 4月期,8月期,12月期
  H29年 4月期,8月期,12月期
  H30年 4月期,8月期,12月期
  R01年 4月期,8月期,12月期
  R02年 4月期,9月期,12月期
  R03年 4月期,9月期,12月期
  R04年 4月期,8月期,12月期
 分野別出題一覧
  A 電気物理, B 電気回路
  C 能動素子, D 電子回路
  E 送信機, F 受信機
  G 電源, H アンテナ&給電線
  I 電波伝搬, J 計測

 ■ サイトポリシー
 ■ サイトマップ[1ama]
 ■ リンクと資料

 ■ メールは下記まで



更新履歴
2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1712A03 Counter
無線工学 > 1アマ > H17年12月期 > A-03
A-03 次の記述は、コイルの電気的性質について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
(1) コイルの自己インダクタンスは、コイルの[A]に比例する。
(2) コイルのリアクタンスは、コイルを流れる電流の[B]に比例する。
(3) コイルに流れる電流の位相は、加えた電圧の位相に対し90 度[C]。


巻数 周波数 遅れる
巻数 周波数の二乗 進む
巻数 周波数の二乗 遅れる
巻数の二乗 周波数の二乗 進む
巻数の二乗 周波数 遅れる

 下の表に、コイルの性質をまとめてみました。(問題中で「自己インダクタンス」とあるのを以下の表では単に「インダクタンス」と書いています。)

[1]コイルの電気的性質

 まずはコイルの電気的な性質です。コイルはインダクタンスを利用する部品です。インダクタンスとリアクタンス、周波数特性、流れる電流と電圧の位相関係について調べます。
性質
特徴
インダクタンスと
リアクタンス
周波数fの交流に対するインダクタンスLが作用するリアクタンスXは、jωL(ここでω=2πf)ですから、インダクタンスとリアクタンスは比例関係にあります。
余談ですが、高周波をやっていると○○○タンス、×××タンスがいっぱい出てきますが、それぞれの意味を理解して「箪笥アレルギー」をなくしておきましょう。
リアクタンスと
周波数
上記のリアクタンスの式で、
  X=2πjfL
ですから、リアクタンスXは周波数fに対して比例関係にあります。すなわち、周波数が高くなるにつれてそれに比例してリアクタンスが大きくなります。
電流と電圧の
位相
コイルには電圧を上昇させて急に電流を流そうとしてもそれを妨げる電磁気的性質があります。また、電圧を下降させて電流を減らそうとする時にも同様です(レンツの法則)。このため、交流電圧をコイルにかけると、電圧が上昇するのに遅れて電流が増え始め、電圧が下降し始めてもしばらくは電流が増え続ける、という変化を示します。
このことは、電圧と電流の波形を同じオシロスコープで観測してみれば、電流波形が電圧波形を追いかけるような形で表示されます。このような関係を「電流は電圧に比べて(位相が)遅れている」といい、抵抗分・容量分が無視できる理想的なインダクタではその遅れ量が90°(π/4)になります。
 

[2]コイルの外的形状とインダクタンス

 次は、巻数や巻き方などの外的形状とインダクタンスの関係を調べます。
性質
特徴
巻数と
インダクタンス
インダクタンスは、巻き数nの2乗n2に比例します。説明が正確かどうかわかりませんが、2つの同じ形状の1回巻きのコイル(インダクタンスL)があったとします。これら2つを直列に繋ぐと、磁気的に結合していなければ合わせたインダクタンスは2Lにしかなりませんが、100%結合している(一方のコイルで発生した磁力線は全部他方を貫くこと)ならば、「相互インダクタンス」の項2√L2が現れて、
  2L+2√L2=2L+2L=4L
となり、1回巻きのコイルに比べて2回巻きのコイルのインダクタンスは巻き数の2乗倍の4倍になることが分かります。
巻き方と
インダクタンス
(2016-10-30改訂)
円筒形のボビンに巻くとすると、インダクタンスは(コイルの直径が巻き線部分の長さより十分小さい範囲で)、
断面積(この場合は円の面積)に比例
コイルの巻線部分の長さに反比例
します。「巻線部分の長さ」というのは、導線の長さではなくて、ボビン上に磁力線の方向に巻線が存在している部分の距離をいいます。
上記の近似が成り立たない場合、正確には「長岡係数」というものを導入する積分計算を行なわなければなりません。定性的には、コイルの巻き数が同じで長さlが長くなれば、磁力線が空気を含めた磁性体の中を通る長さ(磁路)が長くなって磁束が減るので、インダクタンスは減少します。
コアの性質と
インダクタンス
中空のコイルがあって、そのインダクタンスをL0とします。次にこのコイルに比透磁率μnの磁性体でできたコア(芯)を入れると、インダクタンスはμn0になります。つまり、インダクタンスは芯に入れる物質の透磁率に比例します。
 普通、μn>1ですから、インダクタンスは大きくなります。
μnはコアの物性により決まる定数ですが、周波数が低いうちは大きな値でも高周波になると、一般に、どんどん値が小さくなると同時に、コア内部でエネルギーが熱になってしまって損失が起こります。このため、高周波で用いるコイルは空芯コイルが用いられます。フェライトなど、高周波まで性質が保てるよう研究開発が行なわれています。
 

それでは、解答に移ります。
 A…自己インダクタンスは巻数の2乗に比例します
 B…コイルのリアクタンスは流れる電流の周波数に比例します
 C…コイルに流れる電流は電圧に比べ、90°遅れることになります
となりますから、が正解と分かります。