□ H17年12月期 A-14  Code:[HF0704] : 雑音指数と受信機の雑音の関係、信号対雑音比の向上方法
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1712A14 Counter
無線工学 > 1アマ > H17年12月期 > A-14
A-14 次の記述は、受信機における信号対雑音比(S/N)の改善について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。
雑音電波の到来方向と受信信号電波の到来方向とが異なる場合、一般に受信アンテナの指向性を利用して、受信機入力における信号対雑音比(S/N)を改善することができる。
受信機の雑音指数が大きいほど、受信機出力における信号対雑音比(S/N)の劣化度が小さい。
受信機の総合利得を大きくしても、受信機内部で発生する雑音が大きくなると、受信機出力の信号対雑音比(S/N)は改善されない。
受信機の通過帯域幅を受信信号電波の占有周波数帯幅と同程度にすると、受信機の通過帯域幅がそれより広い場合に比べて、受信機出力の信号対雑音比(S/N)は改善される。

 受信機の信号対雑音比(S/N)の改善方法についての問題です。受信機は、目的の信号だけでスピーカーを鳴らすのが理想ですが、実際には信号と一緒に飛びこんでくるノイズや、回路素子自体が発するノイズがありますので、そうはいきません。ですから、それらをどのように減らすか、という問題です。

[1]ノイズが高周波増幅段でほとんど決まるのはなぜか

 まず、予備知識として、基本的なことを確認します。NFとは、入力のS/N比より出力のS/Nの方が(素子自体が発するノイズのため悪くなりますが)何dB悪くなるかを示したものです。値が小さいほど、素子自身の発するノイズが小さいことを示しています。例えば、NF=3 [dB]の素子にS/Nが20 [dB]の信号を入れてやると、出力のS/Nは17 [dB]になってしまいますが、NF=1 [dB]なら19 [dB]までしか悪化しない、ということです。
 また、この例で分かるように、増幅の段数が多くなればなるほど、途中の素子で付加されるノイズが増えるので、信号自体は強くなりますが、ノイズとの比率、すなわちS/Nは悪化することはあっても良くなることはないのです。
Fig.HF0704_a 高周波増幅段のNFとトータルのS/N
Fig.HF0704_a
高周波増幅段のNFとトータルのS/N
 Fig.HF0704_aは、高周波増幅段からスピーカまで、トータル電圧利得は40 [dB]と中間周波増幅器と低周波増幅器の雑音指数は同じにして、高周波増幅器の利得と雑音指数のみを変えて、低周波出力のS/Nがどう変わるかを検討したものです。
 これを見ると、初段、つまり受信機の場合は高周波増幅段で利得を大きくして、かつNFの小さい素子を使うことが重要であることが分かります。トランジション周波数が高く、NFの小さいトランジスタやFETは高価ですが、受信機全体の価値を決めるほど重要なので、コスト高でもGaAs(ガリウム砒素)FETなどの素子が用いられます。
 分かりやすく言えば、初段の素子で発生したノイズは、後段の増幅回路の全てで増幅されてしまうので、
  • 初段で発生するノイズは極力小さい(NFが小さい)こと
  • 初段で利得を稼ぎ、後段の利得をなるべく抑えること
が重要となります。これは、オーディオアンプで出力レベルの低いMCカートリッジ(レコードですよ)のヘッドアンプにどんな素子を持ってきて、どういう利得配分にするか、というような設計でも全く同じことが言えます。

[2]狭帯域の通信モードがS/N上有利なのはなぜか

 電信のナローフィルタを入れたことのある方は、モードスイッチをナローに切り替えた瞬間、ノイズに埋もれてほとんど聞き取れなかった信号が、浮かび上がってくるように鮮明に聞こえるようになった経験がおありかと思います。このことがどういうことなのか、もう少し突っ込んでみます。
 Fig.HF0704_bは、信号の持っている周波数帯域Bsと受信機の周波数帯域Bfが、Bs≪Bfの(上)とBs≒Bf(下)の場合とをイメージしたものです。
 ある特定の周波数成分を持ったノイズは特殊で、一般にはアンテナに入ってくる外来ノイズも、受信機内の素子で発生するノイズも「ホワイトノイズ」と呼ばれる一様に周波数分布したノイズです。
 このようなノイズと信号を増幅する時、帯域を必要以上に広げると、ノイズ成分が相対的に増えてしまう(Fig.HF0704_上)ので、信号が持っている帯域に制限して、ノイズ分も制限するのが有利です(Fig.HF0704_b下)。
Fig.HF0704_b フィルタ通過帯域幅とS/N比
Fig.HF0704_b
フィルタ通過帯域幅とS/N比
 つまり、ナローフィルタを入れて信号が浮かび上がってきたのは、電信という非常に狭帯域なモードで、帯域内に入ってくるノイズを減少させることができたため、S/Nが上がった、ということなのです。決してフィルタが信号を増幅したわけではありません。むしろ、狭帯域フィルタは減衰が大きいため、信号自体はワイドフィルタの時より弱くなっているはずです。それを補って余りあるS/N比の向上が得られた、ということです。

[3]避けられるノイズはアンテナの指向性で防ぐ

 上記は受信機の工夫でS/Nを改善するものでしたが、アンテナに「飛んでくる」ノイズの場合を考えます。
 ありとあらゆる方向から飛んでくるノイズは避けようがありませんが、特定の方向から伝搬してくるノイズは、指向性アンテナで避けることができます。目的とする信号の伝搬方向に指向性を向けると、指向性の谷に入るようなビームパターンが理想ですが、そううまく行かなくてもノイズを減衰させることができます。
 EMEや流星散乱通信では、高感度な受信機とゲインを稼ぐための鋭いビームアンテナが必須ですが、避けるべき大きなノイズ源は「地球」(地球の熱雑音)です。従って、大きなF/B比が取れるパラボラアンテナなどを使って天頂近くに向けた時に、地球からのノイズが最小になります。逆に、地平線付近の天体や衛星を狙わなければならないときはS/Nが悪くなります。

それでは、解答に移ります。
 …アンテナの指向性を利用してノイズを分離する方法ですから正しい
 …S/Nを改善するには、素子の雑音指数は小さい必要があるので誤り
 …利得を大きくするだけではS/Nが改善しないことは正しい
 …題意のようにすれば、帯域外ノイズが減少し、S/Nは向上するので正しい
となりますから、正解(誤った記述)はと分かります。