□ H17年12月期 B-03  Code:[HF0104] : フェージング軽減。受信機の対策、発生原因とダイバーシティの対応
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1712B03 Counter
無線工学 > 1アマ > H17年12月期 > B-03
B-03 次の記述は、フェージングの軽減方法について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句を下の番号から選べ。
(1) 受信電界強度の変動分を補償するために無線電話(A3E)受信機に[ア]回路を設けたり、無線電信(A1A)受信機の検波回路の次に[イ]を設けて、検波出力の振幅をそろえる、などの方法がある。
(2) 同一送信点から二つ以上の周波数で同時送信し、受信信号を合成又は切り換える[ウ]ダイバーシチや受信アンテナを数波長以上離れた場所に設置して、その信号出力を合成、又は切り換える[エ]ダイバーシチという方法がある。
(3) 受信アンテナに垂直アンテナと水平アンテナの二つを設け、それぞれの出力を合成、又は切り換えて使用する[オ]ダイバーシチという方法がある。
 同期  スケルチ回路  干渉  LPF  偏波
 空間  スキップ  リミタ  周波数 10 AGC

 フェージングの影響を軽減するには、大きく分けて2つの方法があります。一つは、受信機にアンテナからの入力のレベル変動を打ち消すような「しくみ」を設けること、もう一つはフェージングの原因となっている伝搬路上の変動要因を取り除くような空中線系を準備することです。この問題では、その両方が問われています。

[1]受信機でフェージングを抑える方法

 フェージングは、受信機に取ってみれば、入力信号の変動なので、この変動を打ち消すしくみを組み込めば、軽減できるものもあるはず、という発想で考えられたものがこの方法です。
Fig.HF0104_a AGC回路の構成と動作
Fig.HF0104_a
AGC回路の構成と動作
 Fig.HF0104_aは(CWを含む)振幅変調系で用いられるAGC(Auto Gain Controll)回路の構成例です。
 利得を、外部からの電圧で変化させられる中間周波増幅器と、検波後の出力から(比較的)ゆっくりとした電界強度の変化の大きさを電圧にして取出す部分(積分器)がミソです。普通、フェージングの速さは数10秒から数分の一秒程度でしか変化しませんが、音声は数100Hz以上の成分がメインですから、ゆっくりした変化分だけを取り出して、中間周波増幅器に加えます。
 この利得制御電圧が、電界が強い時は中間周波増幅器の利得を下げる方向に、電界が弱い時は利得を上げる方向に作用して、検波出力が常に一定になる方向に制御されます。
 また、問題文にあるように、電信(CW)の場合は、元々がデジタル信号のようなものですから、検波出力があるレベルを超えたか否かで、コンパレータに掛けて波形を整形し、超えた時だけトーンが出るようにしてやれば、フェージングの影響が軽減できます。(実際の設計では、コンパレートレベルを信号に応じて変化させてやらないと、ドットとダッシュの比が1:3にならなくなったり、短点が欠けたりしそうです。)
 問題では「リミッタ(リミタ)」(正解の選択肢)となっていますが、要するにゲインを上げて増幅して、一定以上のレベルで頭を切ってしまうようにすれば、フェージングの影響が軽減されます。

[2]アンテナでフェージングを軽減する方法

 ここまで見たのは、受信機での軽減法ですが、もっと根本に立ち返って、アンテナの段階でフェージングを軽減してしまおう、という試みです。
 この問題は、受信機の問題としていますが、このように電波伝搬の問題も混じっているので、ここでフェージングの復習をしておきましょう。

(1) 選択性フェージング

 電波が電離層を通過、反射する時、周波数によって透過率(減衰率)や反射率が異なるため、受信側で周波数によって電界強度が異なるフェージングです。両側帯波のAMで例えると、下側波帯はそのまま伝搬してくるのに、上側波帯は減衰している、というフェージングです。電離層という自然現象ですから、時間と共に減衰・反射の様子が変化しますから、それに応じて対策を取らなければなりません。
 周波数によって電界強度が異なってくるのですから、Fig.HF0104_b上のように、複数の周波数で送信しておいて、受信側でどちらか変動の少ない方を選択するか、両者の検波出力を合成するなどすれば、変動が抑えられる、という発想です。この方法を周波数ダイバーシティーといいます。

(2) 干渉性フェージング

 伝搬経路が2以上あるとき、受信側でその2つ以上の経路からの電波が干渉して起こるフェージングです。
 受信アンテナが1つしかないと、干渉の影響をもろに受けるので、複数あれば、それらの信号を合成したり選択したりすることでフェージングが軽減できるだろう、という発想でFig.HF0104_b中のような、空間ダイバーシティが用いられます。
 これは、電波の干渉が数波長以上離れた位置では相関が弱いことを利用して、複数の離れたアンテナの出力を選択・合成して受信機に入力するものです。

(3) 偏波性フェージング

Fig.HF0104_b 様々なダイバーシティ
Fig.HF0104_b
様々なダイバーシティ
 偏波性フェージングは、送信側では直線偏波で発射された電波が、電離層内を通過・反射する時に、電離層を構成するプラズマと相互作用して、一般には楕円偏波になって地上に届くために起こるものです。これを直線偏波で受信すると、電離層内の変化に伴って楕円が回転するため、受信電界強度が変動します。
 これを防ぐには、受信側で垂直と水平の両偏波のアンテナを並べてその出力を合成する偏波ダイバーシティ(Fig.HF0104_b下)が用いられます。

それでは、解答に移ります。
 …AM受信機でフェージングを軽減するには、10AGC回路を用います
 …CW受信機でフェージングを軽減するには、8リミタ回路を用います
 …複数周波数の送信で選択性フェージングを軽減するのは9周波数ダイバーシティです
 …受信アンテナを離して設置し、干渉性フェージングを軽減するのは、6空間ダイバーシティです
 …水平垂直の受信アンテナで、偏波性フェージングを軽減するのは5偏波ダイバーシティです
となります。