□ H18年04月期 B-04  Code:[HB0204] : 単相全波整流を用いた計器の名称と可動コイル形指示計器の値から波形率を計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1804B04 Counter
無線工学 > 1アマ > H18年04月期 > B-04
B-04 次の記述は、図に示す整流回路について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句を下の番号から選べ。ただし、ダイオードの順方向抵抗の値は零、逆方向抵抗の値は無限大とする。
(1) この整流回路は、交流を4個のダイオードで整流する単相[ア]整流回路である。
(2) 交流電源を流れる電流について、その振幅(電流の最大値)をImとすると、平均値は[イ]、実効値は[ウ]であり、波形率は約[エ]となる。
(3) 図中の直流電流計Mは可動コイル形電流計であり、その指示値が1 [mA]であるとき、Imの値は約[オ][mA]である。
 全波  2Im
 Im  Im/√2
 Im/2  倍電圧
 1.11  1.41
 1.57 10  3.14
問題図 H1804B04a
Fig.H1804B04a

 この問題を「計測」のジャンルに入れようか、「回路」に入れようか迷いましたが、知っていなければならないのは交流の性質である、として「電気回路」の問題としました。

[1]可動コイル形指示計器の指示値は平均値

 まず、可動コイル形計器に交流を加えた場合、その指示は「平均値」に比例します。厳密には正負に対称な波形の交流を加えても、平均値はゼロなので針は振れませんのでこの問題のように整流器と組み合わせて使用します。一方、通常交流を測定する場合、電圧として振られている目盛りは「実効値」です。
 この差を「補正」しなければなりませんが、波形が同じなら実効値と平均値は比例関係なので、ある係数をかけるだけで目盛りを振ることができます。ところが、波形が異なると、その係数が異なるため、同じ目盛りでは誤差を生じます。このため、通常の計器は正弦波交流を基準に目盛りが振られています。
 ここでは、正弦波についての「最大値」「平均値」「実効値」の関係を調べてから、目盛りの振り方について考えてみましょう。

[2]波形に着目した振幅の表現…最大値と平均値

 まずは、波形をオシロスコープ等で観測した時に、その形から分かる振幅を調べます。目で見て直感的に理解できるので、難しくないと思います。
Fig.HB0204_a 交流電圧の表現形式
Fig.HB0204_a
交流電圧の表現形式
1) 最大値
 まず、最大値Vmについてですが、これは波形を観測して最も分かりやすいもので、波形の振幅が最も大きくなる点の電圧です。

2) 平均値
 これも割と理解しやすいです。正弦波交流の半周期を波形で描くと、Fig.HB0204_aの左上のようになりますが、この「山形」と面積が同じで、時間軸の長さが同じ長方形の高さを、平均値と言います。要するに、波形の山を均して平たくしたら、高さはいくつになるかということです。
 最大値がVm [V]の正弦波は、周波数をf [Hz]、として、ある時刻t [s]の電圧を、
 V(t)=Vmsin(2πft) …(1)
と表すことができます。三角波など直線で囲まれた波形と異なり、正弦波の関数を積分しなければ得られませんが、積分の計算は数学の解説に譲り、ここでは結果だけを書きます。V(t)の平均値VAは、
 VA=2Vm/π …(2)
となります。2/π=0.637ですから、平均値は最大値の6割強、ということになります。これは正弦波での値ですから、他の歪んだ波形では値が異なります

[3]電気エネルギーに着目した振幅表現…実効値

 ここまでは、交流波形から求められる振幅でしたが、電気をエネルギーの流れと捉えて表す振幅もあります。正弦波交流以外でも使えるので、汎用性があり、我々の周囲にはこの値で表現されたものが多いです。
3) 実効値
 実効値は、ある最大電圧の交流(ここでは正弦波交流)の電圧を抵抗にかけた時に消費される電力と、同じ電力を消費させる直流電圧は何Vか、という意味になります。例えば、家庭に来ているAC100 [V]は、実効値で表示されています。ということは、直流でも動作する500 [W]の電熱器を家庭のコンセントに接続した時と、DC100 [V]の電源につないだ時では、同じ500 [W]の電力を消費する、ということです(Fig.HB0204_a下半分)。
 細かい計算は、平均値と同様に、より専門的な書に譲りますが、(1)式の「2乗平均」というものを取ります。2乗を取るのは、電力は電圧(又は電流)の2乗に比例するからです。その結果だけ記すと、実効値VEは、
 VE=Vm/√2 …(3)
となります。1/√2=0.707ですから、実効値は最大値の7割強、ということになります。これも平均値と同様、正弦波での値ですから、他の歪んだ波形では値が異なります。

[4]波の形状に着目したパラメータ…波高率・波形率

 これまで定義してきた値から、新たなパラメータが2つ定義されます。名前が似ているので混同しがちですが、内容とともに記憶してしまうことをお勧めします(私も時々分からなくなりますが)。

4) 波高率
 まずは波高率です。波高率Kpは、次式で定義されます。
 Kp=Vm/VE …(4)
すなわち、波高率とは最大値と実効値の比、ということです。上で見てきたように、正弦波交流では(3)式が成り立ちますから、正弦波の波高率は1.41…(√2)ということになります。波高率が高いということは(実効値に比べて最大値が大きいということですから)ピークが尖った形の波ということになります。

5) 波形率
 波形率Kfも、これまで計算してきた値から次式のように定義されます。
 Kf=VE/VA …(5)
すなわち、波形率とは実効値と平均値の比、ということです。これも正弦波で考えると、(2)と(3)より、
 VE/VA=π/(2√2)=1.11 …(6)
正弦波の波形率は1.11と覚えておいて損はないでしょう。この問題のように、可動コイル形計器は平均値で指示するので、計測の問題としてよく出題されています。

それでは、解答に移ります。
 この問題は負荷が抵抗ですから、電圧はそのまま電流に読み替えられます。
 この計器単体は交流用ではないため、目盛りは直流で振ってありますが、これに交流を通せば指示されるのは平均値であることはすでに上で述べました。また、単相全波整流ですから、交流が負の間に振れている間を考慮して、値を半分にする必要もありません。
 Mの指示値(平均値IA)が1 [mA]だというのですから、最大値Imは、(2)と同様に、
 Im=πIA/2=1.57 [mA] …(a)
と計算できます。

ここまでの内容と問題を照らし合わせながら順に解答を見てゆくと、
 …問題図の回路は、単相1全波整流回路(ブリッジ整流)です
 …Imの平均値はその2/πですから、2 2Imです
 …Imの実効値はその1/√2ですから、4 Im/√2です
 …正弦波交流の波形率は7 1.11です
 …上記(a)式より、Imは、9 1.57 [mA]です
となります。