□ H18年12月期 A-03  Code:[HB0301] : RLCのそれぞれのリアクタンスから合成回路のインピーダンスを計算
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更新履歴
2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1812A03 Counter
無線工学 > 1アマ > H18年12月期 > A-03
A-03 図に示す回路の合成インピーダンスの大きさの値として、正しいものを下の番号から選べ。ただし、抵抗Rの抵抗値は20 [Ω]、コンデンサCのリアクタンスは10 [Ω]及びコイルLのリアクタンスは20 [Ω]とする。
 5 [Ω]
10 [Ω]
15 [Ω]
20 [Ω]
35 [Ω]
問題図 H1812A03a
Fig.H1812A03a

 容量性(コンデンサ)、誘導性(コイル)、抵抗の3つのインピーダンスが直列、並列に組み合わされた回路の合成インピーダンスの問題で、よく出題されます。インピーダンス計算の基本だからでしょう。

[1]複素数計算にチャレンジしてみよう

 2アマまでは実数の世界で何とか解いていましたが、1アマになったら複素数(=実数+虚数 の形の数)計算にチャレンジしてみて下さい。というのも、こういった直列や並列の回路の合成インピーダンスを求める時、複素数でインピーダンスを計算すると、オームの法則だけで解けてしまうからです。2アマの時のようなベクトル計算や直角三角形の1辺の長さを求める公式も(全然無縁なわけではありませんが)使いません。
 ただ、少しだけ面倒なのは、分数で答えが出た時に分母が複素数になってしまった時、実数部と虚数部を明確に分けるため、「通分」のような「正規化」という作業が必要になることです。でも、慣れてしまえば大して難しくはありません。
 この問題では回路の要素(抵抗・コンデンサ・コイル)は3つですが、上に書いたことは、要素がいくつでも使えます。2個や4個になっても、合成抵抗の計算と同じようにやって行けば良いのです。流れる電流も、遅れ位相なのか、進み位相なのか、電流の虚数部を電圧と比較すればすぐに分かります。こんな便利な複素数を使わない手はありません。

[2]複素数を使って解いてみる

 では、具体的に見て行きましょう。回路の要素が直並列、並直列に3つ繋がるパターンはFig.HB0301_aの2種類です。
Fig.HB0301_a 3つのインピーダンスの接続
Fig.HB0301_a
3つのインピーダンスの接続
 3つとも直列、3つとも並列のパターンもありますが、これは別途問題があるので、そこで解いています。
 この図で、Z1〜Z3はどれが抵抗・コンデンサ・コイルであるかの組合せは全く任意です。どんな組合せでも合成インピーダンスZは各図の下にある式で表されます。合成抵抗を計算する式と全く同じです。
 Z1〜Z3に、抵抗なら抵抗値R [Ω]を、コイルなら誘導性インピーダンスjXLを、コンデンサなら容量性インピーダンス−jXCを代入します。
 例えば、Fig.HB0301_aの左の回路で、Z1=−jXC、Z2=jXL、Z3=Rだとしましょう。この回路の左半分のインピーダンス、つまり、Z12/(Z1+Z2)を計算すると、
 Z12/(Z1+Z2)=XCL/j(XL−XC) …(1)
この式で、分母にjがあるのは気持ちが悪いので、これを分子に移し(分母と分子に−jを掛ける)、
 Z12/(Z1+Z2)=jXCL/(XC−XL) …(2)
となります。Z3=Rなので、全体のインピーダンスZ [Ω]は、
 Z=R+jXCL/(XC−XL) …(3)
 あとはこれに問題の数値を代入し、複素数の計算をガチャガチャとやるだけです。複素数の計算練習はここではやりませんので、慣れていない方は、同様の問題をいろいろ解いてみて下さい。

それでは、解答に移ります。
 問題はFig.HB0301_aの左のパターンです。問題中の以下の値を代入します。問題文は容量性と誘導性のインピーダンスに虚数単位jと符号が付いていませんのでご注意下さい。
 Z1=20 [Ω]  Z2=j20 [Ω]  Z3=−j10 [Ω]
と置きます。はじめに、第1項は、分子と分母に分けて計算します。
 分子=Z12
   =20×j20=j400 …(a)
 分母=Z1+Z2
   =20+j20=20(1+j) …(b)
第1項=(a)/(b)より、
 (3)/(4)=400j/{20(1+j)}=10j(1−j)=10(1+j) …(c)
第2項=Z3=−j10より、
 Z=第1項+第2項=10(1+j)−j10=10 [Ω]
となりますから、正解はと分かります。

 余談ですが、今回は実数のインピーダンスが出ましたが、一般には複素数です。また、(c)の中では分母に複素数が入ってくるので、「正規化」として、分母分子に、分母の共役複素数(ここでは1−j)をかけて分母を実数にしています。こうしないと、実部と虚部がそれぞれいくらか分からないためです。