□ H18年12月期 A-17  Code:[HG0204] : 整流回路+平滑回路の出力電圧から入力交流の実効値を計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1812A17 Counter
無線工学 > 1アマ > H18年12月期 > A-17
A-17 図に示す半波整流回路及びコンデンサ入力形平滑回路において、端子ab間に交流電圧Viを加えたとき、端子cd間に現れる無負荷電圧の値が140 [V]であった。Viの実効値として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、ダイオードD及び変成器Tは理想的に動作するものとし、Tの1次側と2次側の巻線比は1:1とする。
 70 [V]
100 [V]
140 [V]
200 [V]
問題図 H1812A17a
Fig.H1812A17a

 トランスのある半波整流回路の問題です。小学生の頃、トランスには12 [V]と書いてあるタップから取っているのに、整流・平滑後にテスターで測ると17 [V]近くあるのが不思議でなりませんでした。

[1]交流電圧の表示の仕方

 まずはじめに、交流電圧の表記の仕方を復習します。電源を扱っている問題は、特に断りがない限り、一時側の入力波形は正弦波です。
Fig.HG0204_a 半波整流回路と平滑回路の出力
Fig.HG0204_a
半波整流回路と平滑回路の出力
 まずは半波整流回路で考えます。Fig.HG0204_aの左下を見て下さい。
最大値…これは単純に正弦波の(片側の)「山の高さ」の電圧を示します。つまり、基準電位(通常GND)からピークまでの電圧です。
実効値…これは、「その値の直流電圧を抵抗負荷に接続した場合と、消費する電力が同じ交流電圧」です。分かりにくいですが、直流100 [V]と交流(実効値)100 [V]の電源を持ってきて、同じ抵抗に接続すると、発生する熱量が同じ、という意味です。
 この他にも、交流の電圧を表す値として、平均値がありますが、この問題では使わないので省略します。
 正弦波交流では、普通その値を実効値で表記します。また、最大値Vpと実効値Vrには次の関係があります。
 Vr=Vp/√2 (又はVp=√2Vr) …(1)
つまり、正弦波では、実効値の√2倍が最大値、というわけです。この関係は電源や交流回路の問題のみならず、AMの変調度と電力、給電線に通せる最大電力の問題などにも出てきますので、覚えておきましょう。
 早い話が、我々が普段使っている100 [V]の交流と単純に言っても、山と谷では280 [V]近い差がある、ということなのです。

[2]平滑後の無負荷電圧はほぼ最大値

 それでは次に、この交流を半波整流回路で整流した後、平滑回路に通して現れる電圧は何 [V]になるのでしょう?
 まずはじめに、平滑回路(ここではコンデンサC)が無いとした時の動作はどうなるでしょうか? この時の出力波形は、Fig.HG0204_aの右上のように、交流電圧の正の半分を切り取ったようなものになります。
 今度は、Cがある時の波形がどうなるか、ですが、これは電圧がかかっている時にCが充電され、無負荷で各素子は理想的に動作すると仮定すれば、コンデンサに充電された電圧が次の周期まで出続けます。つまり、Fig.HG0204_a右下のような波形になります。出力電圧は(ほぼ)交流電圧の「最大値」ということになります。
 実際の整流・平滑回路では、負荷が繋がっていますし、ダイオードやコンデンサも理想の素子ではありません。従って、出力波形は脈流になりますが、その脈流のピーク電圧はほぼ交流の最大値(=実効値の√2倍)です。
 最後にに全波整流回路で考えます。
 整流回路が全波になってもこれまで述べてきた考え方は全く同じです。特に、無負荷であれば、平滑後の出力に殆ど差はなく、Fig.HG0204_bのようなブリッジ整流回路であれば、直流出力電圧はトランスの2次側の電圧(実効値)の√2倍で最大値と等しいことになります。
 トランスの昇降圧比が定められているのであれば、その比率を掛けたものが、無負荷時の出力電圧ということです。
 例えば、トランスの巻き数比が10:1で1次側にAC100 [V]を掛けて全波整流し、平滑後の出力を無負荷で測定すれば、約14 [V]になります。
Fig.HG0204_b 全波整流回路と平滑回路の出力
Fig.HG0204_b
全波整流回路と平滑回路の出力
 なお、倍電圧整流など、電圧が倍以上になる整流+平滑回路では、その分だけ電圧も上がりますので、問題文に「図に示す回路」とだけしか書かれていなかったら、電圧が変化するような整流回路でないか、注意する必要があります。

それでは、解答に移ります。
 トランスの巻き数比が1:1なので、2次側に出てくる交流電圧(実効値)も同じになります。問題は出力電圧が140 [V]だったといっていますが、これはトランスの入力交流の最大値が140 [V]だ、ということと同じです。
 あとは「最大値が140 [V]の交流の実効値は何 [V]か」という問題と同じですから、(1)式を使って、140/√2≒100 [V]となります。
 従って、正解は最も値が近いと分かります。