□ H18年12月期 A-18  Code:[HG0406] : ツェナーDiを用いた定電圧回路の電圧変動に対する動作
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1812A18 Counter
無線工学 > 1アマ > H18年12月期 > A-18
A-18 次の記述は、図に示す電源回路において、電源電圧又は負荷の値が変動した場合について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
(1) 交流電源の電圧が増加したとき、ツェナーダイオードDZに流れる電流が[A]して、負荷電圧は一定に保たれる。
(2) 交流電源の電圧が一定で負荷電流が増加したとき、ツェナーダイオードDZに流れる電流が[B]して、負荷電圧が一定に保たれる。
(3) 負荷電流が最大のとき、ツェナーダイオードDZの消費電力は[C]となる。


増加 減少 最大
増加 減少 最小
増加 増加 最小
減少 減少 最小
減少 増加 最大
問題図 H1812A18a
Fig.H1812A18a

 安定化した電圧を作り出す、最もシンプルな回路はツェナーダイオードを使うことです。この問題にあるように、ツェナーダイオード一本と抵抗一本とで作れてしまいます。この問題はそんなシンプルな電源の動作の中にも、いろいろと考察すべきことがあることを教えてくれます。

[1]ツェナーダイオードを用いた定電圧化の動作

 まず、ツェナーダイオードを使った定電圧電源のことについて調べておきます。あまり難しいことはなく、オームの法則だけで解析できます。
Fig.HG0406_a ツェナーを用いた定電圧動作の原理
Fig.HG0406_a
ツェナーを用いた定電圧動作の原理
 まず、Fig.HG0406_aの左を見て下さい。電源電圧がVin、電源電流をIin、ツェナー電流をIZ、負荷電流をILとします。また、安定化抵抗Rの両端に発生する電圧をVR、負荷の両端に発生する電圧をVLとします。ツェナーダイオードのツェナー電圧はVZとします。
 これらの関係を式にしてみると、Fig.HG0406_aの左下のような単純なものになります。すなわち、電圧で見れば電源電圧はVRと負荷にかかる電圧VLの和ですし、電流で見れば、電源電流はツェナー電流と負荷電流の和です。
 この式は単純ですが、ツェナーダイオードを使っていることで、ある、「特殊な状況」が生じます。その「特殊な状況」とは、ツェナーダイオードの両端が、ツェナー電圧に保たれている条件では、電源電圧が変動しなければ、電圧の式、
 Vin=VR+VL …(1)
となります。また、抵抗Rに流れる電流Iinは、
 Iin=VR/R …(2)
となります。このIinは別の表現では、
 Iin=IZ+IL …(3)
と表され、これはツェナーダイオードと負荷に流れる電流の和は一定という意味です。
 数式ばかりで話がややこしくなってきたので、グラフで整理してみます。Fig.HG0406_a右のグラフを見て下さい。横軸に1/RLを取っています。これはいわば「負荷の重さ」を示したもので、これがゼロならRLは開放(つまり無負荷)、無限大なら短絡を意味します。
 今、無負荷から徐々に抵抗を小さくして行き、負荷を重くして行くことを考えます。

(1) 無負荷の時
 無負荷の時は、電源から流れ込む電流は、全てツェナーダイオードを流れます。その電流の大きさIin0は、
 Iin0=(Vin−VZ)/R …(4)
となります。これだけの電流がツェナーダイオードを流れ、その両端にはVZの電圧が生じているので、ツェナーダイオードは、
 P0=Iin0Z …(5)
なる電力P0を消費しています。

(2) 軽負荷の時
 負荷を徐々に重くしてゆくと、ツェナーダイオードの電流IZは減少し、その分負荷電流ILが増加します。両者の和は一定(Iin0=VR/R)に保たれます。この範囲では、負荷にかかる電圧VLはツェナー電圧そのもので一定であり、この回路が定電圧電源として動作します。
 ではどこまでの重さの負荷RL1に対してこの条件が成り立つかというと、
 RL1=RVZ/(Vin−VZ) …(6)
までです。Lがちょうどこの抵抗値の時に、ツェナーダイオードを流れる電流IZがゼロになります。これより重い負荷(=小さい抵抗R)ではこの回路はhfe電源として機能しなくなります(理由は以下に)。

(3) 重負荷の時
 RLが 更に負荷を重く(RLが(6)より小さく)なり、流す電流を増やそうとすると、抵抗Rでの電圧降下が大きくなって、
 Vin−VR<VZ …(7)
となってしまい、既にツェナーダイオードの電流はゼロになっていますから、これはないのと同じです。つまり、電源にRとRLが直列に繋がっているだけの回路と同じなので、もはや負荷RLの変動に対して、その両端の電圧は定電圧ではなくなってしまいます。更に負荷を重くした極限として、短絡した時のことを考えてみましょう。電源電流はRでのみ制限されますから、
 Iin=Vin/R …(8)
となり、Fig.HG0406_a右のグラフでいうと、負荷をどんどん重くする極限(1/RL→∞)では、電流は(4)の値に漸近することになります。

(4) 電源電圧が変動する時
 上記では、負荷が変動するとして考えてみましたが、電源電圧が変動する場合は、以下のように考えます。
 まず、ツェナー電圧が変動しないので、これに並列に繋がっている負荷の電圧も変動しないことから、定電圧性は保たれます。この時、(1)式を見ると、電源電圧が変動した分は、VRつまり安定化抵抗の両端の電圧の変動となって吸収されることが分かります。
 一定値の抵抗Rの両端の電圧が変動するので、電源からの電流Iinは変動しますが、負荷の両端の電流ILは不変です。変動分はツェナー電流IZが変動することで吸収します。

[2]流し得る電流とツェナーダイオードの定格

 上で見たように、定電圧電源としてこの回路が動作するためには、制約条件があります。負荷が重過ぎると定電圧にならないからです。その条件は、(5)式でした。
 この時に負荷に流れる電流はいくらになるかというと、無負荷の時からRL=RL1になる時まで、電源から流れ出る電流はIin0で一定でしたから、負荷に流し得る最大電流は、(4)式で決まるIin0と等しい、ということになります。
 ここで、なるべく大きな電力を負荷に与えたい、という観点で(4)式を見ると、入力電圧とツェナー電圧の差Vin−VZは大きい方が良く、また、安定化抵抗の値Rは小さい方が大きな電流が負荷に流せることが分かります。一方で、(5)式から、無負荷の時にツェナーダイオードでは最大P0の電力を消費するので、あまり大きなIin0とすると、小さなツェナーダイオードでは破損してしまいます。つまり、ツェナーダイオードの定格によって、流せる電流が制限されるのです。
 今、ツェナーダイオードの最大電力定格をPmとして、流せる電流をImaxとすると、(5)式から、
 Imax=Pm/VZ …(9)
と求められます。これは、ツェナーダイオードに流せる最大電流であるとともに、負荷に流せる最大電流でもあります。上で見たように、これより多くの電流を流そうとして負荷抵抗値を下げれば、電圧が安定化されなくなってしまうからです。
 ここまで見てきたように、ツェナーダイオードを用いた問題のような安定化電源は、負荷に電流が流れていない時も、ツェナーダイオードに電流が流れ、発熱していますから、効率が悪い電源です。また、ツェナー電圧は温度係数を持ちますので、温度に対する安定度もあまり良くありません。さらに、上で見たようにダイオードや抵抗の定格で決まる最大電力が存在して、大電力が取り出すのが容易でないため、小容量であまり精度の要求されない定電圧電源として用いられます。
 この電源回路は、負荷の短絡に対して、ツェナーダイオードに流れる電流はゼロになるので、これに対する保護は不要ですが、安定化抵抗に電源電圧がモロにかかる(=Vin2/Rの熱が出る)ので、この耐電力を十分に取るか、ヒューズを入れるなどの保護が必要になります。

それでは、解答に移ります。
 …入力電圧が上昇すると、ツェナーに流れる電流は増加します
 …負荷電流が増加すると、ツェナーに流れる電流は減少します
 …負荷電流が最大の時、ツェナー電流はほぼゼロで消費電力は最小です
となりますから、が正解と分かります。