□ H18年12月期 A-25  Code:[HJ0402] : スーパーヘテロダイン方式スペクトルアナライザの動作原理・特徴
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1812A25 Counter
無線工学 > 1アマ > H18年12月期 > A-25
A-25 次の記述は、スーパヘテロダイン方式スペクトルアナライザについて述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。
分解能帯域幅を変えて測定することができる。
表示器の横軸は振幅を、また、縦軸は周波数を表す。
入力信号の周波数成分ごとの振幅を観測できる。
オシロスコープと比べて感度が高いので、より弱いレベルの信号が測定できる。

 スペクトルアナライザ(以下、「スペアナ」と呼びます)は、オシロスコープと違い、時間変化する信号の周波数成分をグラフィカルに測定する測定器です。

[1]スペクトルアナライザの構成と動作

 スペアナは、横軸が周波数で縦軸が振幅の「周波数スペクトル」を観測する測定器です。これを扱うには、少し予備知識が必要です。
 それは、「任意の(周期)信号は周波数と振幅の異なる正弦波の合成として表される」という法則です。例えば、HFの送信機が動作した時に、TVIが出るような現象は、送信出力がきれいな正弦波ではなく歪んでいて、基本波の整数倍の正弦波(高調波)成分が含まれているからです。また、デジタル信号などの矩形波や弦楽器の音などは、基本波の数10倍程度までの非常に広い範囲の高調波成分を持っています。
 このように、スペアナは、ある信号がどのような周波数と振幅を持った成分でできているのかを表示してくれる測定器です。
Fig.HJ0402_a スペクトルアナライザの構成
Fig.HJ0402_a
スペクトルアナライザの構成
 では、そのスペアナの構成を見て行きましょう。スーパーヘテロダイン方式と呼ばれているスペアナの構成をFig.HJ0402_aに示します。スーパーヘテロダインという名前といい、構成の中にVCOや周波数混合器、帯域フィルタ等があって、まるで受信機のブロック図のようです。実は、まさにこの動作は狭帯域フィルタを実装した受信機の動作とほとんど同じなのです。
 では、入力から順を追ってその動作を見て行きましょう。
 まず、入力端子に入った被測定信号は、LPF(低域フィルタ)で不必要な高周波成分をカットします。
 これは、高周波成分があると、エリアジング(エイリアシング・折返しノイズ)と呼ばれる偽信号が帯域内に入ってきて観測されてしまうためです。入力が大き過ぎる場合は、LPFの前段に可変減衰器(アッテネータ)が入ることもあります。
 掃引発振器は、常にノコギリ波を発振しています。この発振器は一般に、オシロの場合と違い、トリガ入力は必要なく、入力信号とは独立に動作しています。このノコギリ波は、次段のVCO(電圧制御発振器)に入ります。VCOは入力電圧に応じた周波数の正弦波を発振する発振器です。これにノコギリ波を入れる、ということは時間とともに周波数が直線的に高く(又は低く)なって行き、ある周波数まで至ると、また元の周波数に戻って変化し始める、という動作を繰り返すことになります。VCOの出力は、歪みのない(きれいな)正弦波である必要があります。
 入力と、時間的に変化する正弦波を周波数混合器に入力すると、両者の周波数の和と差の成分が出力に現れます。このうち、どちらかを次段の帯域フィルタで選別します。この帯域フィルタは通過帯域幅が可変になっていて、この帯域幅を変えることによって、測定するスペクトルの周波数分解能が決まります。
 スペアナのキーとなる本質的な動作はFig.HJ0401_bのピンクのブロックでほとんど全てが完了します。この部分では、入力の信号から、VCOの発振周波数と一定の差の周波数を持った成分のみを抜き出しているのです。これは、まさに相手局の信号のみを選び出す受信機の動作と同じです。
 さらにその後もほとんど受信機と同じ動作が続きます。帯域フィルタの出力は、フィルタの中心周波数を中央に持つ中間周波数ですから、これを一旦増幅した(中間周波数増幅器)あと、検波して表示に必要な電圧まで増幅すればよい、ということです。
 一方、横軸は周波数ですが、掃引発振器の出力を水平軸アンプで増幅してやれば、これで表示に必要な出力は揃いました。あとは、CRTにこれらをそれぞれ垂直軸と水平軸の入力に加えてやれば、横軸に周波数、縦軸にその成分の強度、すなわち周波数スペクトルが表示される、という仕組みです。
 その昔、リグのVFOダイヤルを一定速でモーターで回し、CWフィルタの思い切り狭い帯域のを入れて、バンドの下から掃引させてAF出力の振幅をペンレコに描かせれば、それが立派なスペアナだ、と言った先輩がいましたが、当時、スペアナの動作が分からなかった私には目からうろこでした。

[2]スペアナの特徴

 スペアナの特徴としては、まず、振幅の感度がオシロよりも格段に高いことが挙げられます。オシロでは、輝線を目で確認しますが、縦軸フルスケール=1に対して波形の輝線はどんなに頑張っても1/100(=40 [dB])以上に細いのを見たことがありません。つまり、弱い信号は線の太さの中に埋もれてしまいます。
 これに対して、スペアナは相当ダイナミックレンジの悪いものでも60 [dB]は取れますし、普通のものは80〜100 [dB]は取れます。つまり、最大信号がレンジいっぱいの0 [dB]だったとして、-60 [dB](1/1000)以下の振幅の周波数成分でも検出できる、ということです。
 また、帯域(IF)フィルタの周波数幅は一般に可変になっており、この幅で周波数方向の分解能が決まります。例えば、近接する2周波のピークを分離するためには、フィルタ幅は狭い方が良いわけですが、狭くし過ぎると、掃引時間を延ばさなければならなくなり、測定に時間が掛かります。
 付加機能としては、周波数マーカーで画面上の波形の横軸方向の位置をマーカー表示させて周波数を読めるようにしたり、レベルマーカーで、周波数の異なる2山のピークのレベル差を読めるようにしたりできるものがあります。
 一方、できないこととしては、周波数成分ごとの位相差は測定できないことが挙げられます。位相情報は、検波した時に失われてしまうため、測定できません。得られるのは周波数毎の振幅情報のみです。
 また、上記の動作の記述から分かるように、ある周波数成分が時間的に高速にレベル変化している場合、画面に表示されるのは帯域フィルタの周波数が「たまたま」その問題となる信号の周波数を「通りがかった時に得られたレベル」であるため、それ以外の時間でレベルがどうなっていたか、平均値はどうか、を知るすべがありません。つまり、高速に変化する成分は、その時間変化の情報を得ることができません
 このような周波数があることが分かっていれば、その周波数に固定して(スイープせず)、平均値を求めたりする機能を持っているものもあります。

[3]デジタルなスペクトルアナライザ…(余談)

 余談になりますが、オシロがアナログからいろいろな機能を持ったデジタルオシロに置き換わっているのと同様、上記[2]のようなアナログなスペクトルアナライザも減っています。代わりに台頭してきたのが、デジタルなスペアナ、とも言うべきFFT(高速フーリエ変換)を応用したスペアナです。
 中間周波数以降でA/D変換して、そのデータ列にFFTという処理をすると、アラ不思議、出てきたデータがそのままスペクトルデータなのです。フーリエ変換というのは、実時間波形から周波数成分への変換ですが、デジタルの実時間データに対して「ある処理」をして計算量を減らし、高速に実時間→周波数変換を行なうものです。
 フーリエ変換では、アナログ的な検波はしませんから、出力される結果が振幅だけでなく、位相も得られます。これを応用したものが、ベクトルアナライザといわれ、携帯電話等のデータ通信で用いられている位相変調波の解析等に用いられます。

それでは、解答に移ります。
 …普通のスペアナでは、分解能帯域幅は可変なので正しい記述です
 …逆です。縦軸が振幅で、横軸が周波数なので誤った記述です
 …これが周波数解析というスペアナの基本機能なので、正しい記述です
 …スペアナの感度はオシロに比べて高いので、正しい記述です
となりますから、正解(誤った記述)はと分かります。