□ H19年04月期 A-09  Code:[HD0107] : FET増幅回路の等価回路。gm、ゲート抵抗、負荷抵抗から増幅度を計算
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2022年
05/14 04月期問題頁掲載
01/11 12月期問題頁掲載
2021年
10/17 09月期問題頁掲載
H1904A09 Counter
無線工学 > 1アマ > H19年04月期 > A-09
A-09 図に示す電界効果トランジスタ(FET)増幅器の等価回路において、相互コンダクタンスgmが8 [mS]、ドレイン抵抗rdが20 [kΩ]、負荷抵抗RLが5 [kΩ]のとき、この回路の電圧増幅度Vds/Vgsの大きさの値として、正しいものを下の番号から選べ。ただし、コンデンサC1及びC2のリアクタンスは、増幅する周波数において十分小さいものとする。
問題図 H1904A09a
Fig.H1904A09a
40
32
16
12
 8

 (バイポーラ)トランジスタのエミッタ接地等価回路と、FETのソース接地の等価回路が良く出題されています。等価回路には見なれない記号があって難しそうですが、ポイントを押さえれば、オームの法則の問題なので比較的容易です。

[1]FETの動作を復習しよう

 まず簡単に、FETの動作を復習します。分かりやすいソース接地回路の直流特性で考えます。
 FETは(接合形もMOS形も)「電圧で電流を制御する素子」ということでした(この内容の詳しい説明は、別の出題の解答で行なっています)。Fig.HD0107_aはその様子を示したグラフで、ソース接地回路において、ドレイン−ソース間電圧VDS対ドレイン電流のグラフを、ゲート電圧VGをパラメータにして描いたものです。
 このグラフからまず読み取れるのは、ゲート電圧VGを一定にしておいて、ドレイン−ソース間電圧VDSを変化させても、あまりドレイン電流IDが変化しない領域があることです。
Fig.HD0107_a ソース接地回路と直流(静)特性
Fig.HD0107_a
ソース接地回路と直流(静)特性
 その領域で今度はVGSを一定にしてVGを変化させると、どうなるでしょうか?

[2]相互コンダクタンスとは

 その様子をグラフにしたのが、Fig.HD0107_bです。このグラフは接合形FETを想定していますので、特性はデプレッション形(VGがゼロでもIDが流れる)となっています。この等価回路に出てくる相互コンダクタンスというものについて考えます。
Fig.HD0107_b 相互コンダクタンスとは
Fig.HD0107_b
相互コンダクタンスとは
 ゲート電圧VGを変化させると、それに伴ってドレイン電流IDが変化します。この特性は半導体内部の物理現象を反映しているので、残念ながら直線的な変化にはならず、少し湾曲しています。NチャネルもPチャネルも極性が逆になるだけで、振る舞いは同じです。
 相互コンダクタンスgmというのは、ゲート電圧の変化量ΔVGに対するドレイン電流の変化量ΔIDの比です。即ち、このグラフでいうと、ある点における曲線の傾きΔID/ΔVGをいいます。
 電気回路上の意味は、「ゲート電圧の変化でどれだけのドレイン電流の変化を起こせるか」ということです。
 お気づきかもしれませんが、相互コンダクタンスgmは(バイポーラ)トランジスタでいうところの電流増幅率hfeに相当します。トランジスタの場合は「ベース電流でそのhfe倍のコレクタ電流を制御する」素子でしたから、hfeは無次元量です。上に書いたように、相互コンダクタンgmはΔID/ΔVGで、電流/電圧の次元を持ちますから、「コンダクタンス」という名前がついているのです。

[3]等価回路のツボ…丸の中に矢印が入った記号は「電流源」

 それでは、等価回路の分析に入りましょう。等価回路によく出てくる記号で、電流源というのがあります。
Fig.HD0107_c 電流源の記号と動作の意味
Fig.HD0107_c
電流源の記号と動作の意味
 丸の中に矢印が入った回路図記号は、回路関係(なかでもアナログ回路)の方でないとあまり馴染みがないかもしれませんので、少し説明をしておきます。この記号は「電流源」といって、常に指定された電流を流し出す電源の理想的なモデルを示しています。
 もう少し詳しく説明しましょう。「指定された電流を流し出す電源」とは、例えば、1 [mA]流し出すような「電流源」があったとします。この電流源の両端に1 [kΩ]を繋げば、1 [mA]×1 [kΩ]で1 [V]が生じる、ということです。一定の電流を出力するわけですから、繋ぐ抵抗を変えてやれば、それに比例した電圧が抵抗の両端に生じます。
 「理想的な」とは、上の例(Fig.HD0107_c)で、抵抗を1 [MΩ]に変えてみると、1 [mA]×1 [MΩ]で1 [kV]が両端に生じるはずです。実際には電源電圧を超える電圧は発生しないわけですが、ここで解くべき問題は「モデル=理想的な回路」であって、実際の回路ではないことに注意して下さい。逆に抵抗を小さくして、0Ω(ショート)にしても1 [mA]が流れるのは変わりありません。このように、理想的な動作をするため、この問題がオームの法則だけで解けるのです。
 この問題では、電流源の横にgmgsと書いてありますが、これは「この電流源はgmgsの大きさのドレイン電流を発生するもの」という意味です。

それでは、解答に移ります。
 このモデルを見ると、電流源が流し出すgmgsの電流は、ドレイン抵抗rdと負荷抵抗RLの並列接続に入ります。従って、出力電圧Voutは、ドレイン電流をIdとすると、
 Vout=Id{rdL/(rd+RL)} …(a)
ここで、Idは、
 Id=gmgs …(b)
だから、(b)を(a)に代入して、
 Vout=gmgs{rdL/(rd+RL)} …(c)
となります。求める電圧利得Gは、G=Vout/Vgsなので、(c)をVgsで割ればよく、
 G=gm{rdL/(rd+RL)} …(d)
となります。これに、問題の数値、gm=8 [mS], rd=20 [kΩ], RL=5 [kΩ]を代入すれば、G=32となるので、正解はと分かります。