□ H19年04月期 A-11  Code:[HE0602] : D-STARの通信方式の説明
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1904A11 Counter
無線工学 > 1アマ > H19年04月期 > A-11
A-11 次の記述はアマチュアのデジタル通信について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。ただし、同じ記号の[ ]内には、同じ字句が入るものとする。
(1) アマチュア無線のデジタル通信システム(*D-STAR)は、個々のユーザーが利用する無線送受信機相互間での音声通信、[A]のほかに、インターネットを活用したアマチュア無線のデジタル通信ネットワークを提供するものである。
(2) このシステムは、無線送受信機、[B]、アシスト局、リモコン局、ネットワーク関連装置などで構成され、[B]間を10 [GHz]帯又は5.6 [GHz]帯のアマチュア局用周波数帯を用いたアシスト局の無線設備によって最大転送速度[C]以下の無線回線で結び、TCP/IPによるネットワークを構成する。

*D-STAR:アマチュア無線用のデジタル通信システム(Digital Smart Technologies for Amateur Radio)の通称名。


データ通信 レピータ局 10 [Mbps]
データ通信 基地局 64 [Mbps]
画像通信 レピータ局 64 [Mbps]
画像通信 基地局 10 [Mbps]

 D-STARが出題されました。正直、意外でした。今後は既出問題だけでなく、アマチュア界で採用された新技術については、自分がその技術を使って電波を出す/受けるかどうかに関わらず、興味を持って見ておきなさい、ということでしょうか。

[1]D-STARシステムの構成と機能の概要

 正式なシステムの記述は、JARLのサイトなどで公開されていますから、私がそれをざっと読んで理解した範囲で書きます。間違いがあるかもしれません。

 D-STARは一般の「交信」を行なう端末局と、端末局の通信を中継するレピータ局、レピータ局に接続されて、レピータ局同士の通信を中継するアシスト局からなります。これらのほか、アシスト局はインターネットと接続され、アシスト局とインターネットの間にはゲートウェイという接続用PCとルータからなる装置などが設けられます
 通信モードはデータ(DD:Digital Data)と音声(DV:Digital Voice)です。音声は字の通り、携帯電話等と同じようにデジタル化されて伝送されます。データよりも音声の方が即時性が要求されますので、優先度は音声通信の方が高く設定されています。データでは文字データの他、画像やファイルなども送れます。このあたりはパケット通信と同様です。
 通常はレピータ局を介した通信がメインと思われますが、DVモードではレピータを介さず端末局同士で直接やり取りすることも可能です。
Fig.HE0602_a D-STARシステムの構成
Fig.HE0602_a
D-STARシステムの構成
 ここまでの内容をざっと図にすると、Fig.HE0602_aのようになります。以下に、それぞれの構成要素の内容を見て行きます。

[2]各構成要素の機能と仕様

(1) 端末局
 データと音声を扱える端末で、音声の場合の伝送速度の仕様は、4.8 [kbps]以下となっています。データでは、128 [kbps]以です。
Fig.HE0602_b D-STARの通信速度仕様
Fig.HE0602_b
D-STARの通信速度仕様
 使用周波数帯は、変調方式が許可になる周波数ならどこでも良いことになっていますが、特性を考えると、VUHF帯以上でしょう。

(2) レピータ局
 レピータ局は、端末局からの通信内容を受け、自らの電波が届くエリア(ゾーンといいます)の中にいる局に対するものであればその内容を送信し、他のゾーンにいる局宛のものであれば、そのレピータに転送するよう、アシスト局に依頼します。
 この判断は、パケットの中に書かれているヘッダの内容によって行ないます。使用周波数帯と通信速度は(当然ですが)端末局と同じです。
 なお、アシスト局を持たないレピータ局も存在していいことになっています。

(3) アシスト局
 アシスト局は、レピータ局から他のレピータ局への通信(パケット)を転送します。転送はUHF/SHF帯の電波による方法と、インターネットを介した方法の両方があります。
 電波を介した方法では、伝送速度が最大10 [Mbps]5.6 [GHz]又は10 [GHz]帯を使用します。電波を介しない方法では、以下に述べるゲートウェイを通してインターネットに接続してデータを転送します。

(4) ゲートウェイ
 ゲートウェイとは、インターネットとD-STARのネットワークを繋ぐ「関門」です。アシスト局から、インターネットを介して転送するとして受け取ったデータが、どのアシスト局向けなのか、局のコールサインとIPアドレスのテーブル(管理サーバにある)を参照して送り先を決めます。

(5) 通信プロトコル
 インターネットとの親和性を保つため、端末局同士、あるいは端末とレピータ間、インターネットへの接続のプロトコルはTCP/IPが用いられています。但し、アシスト局間のプロトコルはハードウェアの実装が容易で高速だ(多重化に向いている)という理由かと思われますが、ATMプロトコルが用いられています。

それでは、解答に移ります。
 問題文中に「リモコン局」という名称が出てきますが、JARLで公開されている「アマチュア無線のデジタル化技術の標準化方式 4.3C版」にはそのような用語は出ていませんでした。解答には影響ありませんので、無視してよいでしょう。
 …D-STARで可能なのは、音声通信とデータ通信です
 …システムを構成する局の一つはレピータ局です
 …アシスト局間は最大10 [Mbps]で通信します
となりますから、正解はと分かります。