□ H19年08月期 A-11  Code:[HE0304] : 電信のキーダウン時電力とAMの尖頭電力を同じにした時のAMの搬送波電力
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1908A11 Counter
無線工学 > 1アマ > H19年08月期 > A-11
A-11 AM電信電話送信機において、電信(A1A)及び電話(A3E)の送信せん頭電力が同一のとき、電話(A3E)送信に用いる場合の無変調時の出力電力(搬送波電力)PAと、電信(A1A)送信に用いるときの連続信号送信時の出力電力PBとの比(PA/PB)として、正しいものを下の番号から選べ。
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 この問題は悩みました。要するに、電信送信機でキーダウンした時と、AM送信機で100%変調を掛けた時で、ピークパワーを同じにしたら、AMの無変調の電力と電信のキーダウンで、何倍出力が違うか、という問題です。

[1]AM波の電力を求める公式を使っては解けない

 まず、この問題を解く前に、重要なことに注意しておきます。それは、搬送波の電力がPcで、変調度mのAM変調波の全電力PTを表す式
 PT=Pc(1+m2/2) …(1)
は、この問題には使えません(使えるかもしれませんが、もっと簡単に考えられます)。何故ならば、この式で言うPTは十分長い時間にわたって平均した電力であって、この問題で問われているのは「尖頭電力」だからです。
Fig.HE0304_a 電信波とAM変調波の実波形
Fig.HE0304_a
電信波とAM変調波の実波形
 今、(1) 電信送信機のキーダウン状態、(2) AMの搬送波のみの状態、(3) AMの100%変調を掛けた状態を、オシロスコープで観測した時に現れる波形をFig.HE0304_aに示しました。
 この問題では、「電信の送信時(キーダウン)の電力と、AMの送信尖頭電力が同じとき…」と言っているので、Fig.HE0304_aの振幅でa=cである、と言っているわけです。cは「尖頭(ピーク)」時の振幅です。
 AM送信機から、変調の掛かった(無変調以外の)出力が出ている場合、その瞬時の電力は信号波の信号に合わせて、常に変化しています
 「尖頭電力」というのは、その最も値の大きなピークの瞬間における、高周波の1周期の平均電力、と電波法施行規則に定義されているので、値としてはcでの電力を取らなければなりません。法律には明確に規定されているのを見たことがないのですが、「もっとも大きなピーク」という定義に素直に従えば、(1)式においてm=1(すなわち、変調率=100 [%])です。
 一方、aやbは時間的に変化しないので、どの時間での値をとってもかまいません。また、AMの変調度の定義から、100%変調が掛かっている時は、
 b=c/2 …(2)
であることを忘れてはいけません。

[2]キーダウン時の電力とAM搬送波電力の比

 それでは、各々の電力を考えてみます。今、a,b,cをそれぞれそのまま送信機の出力電圧[V]であるとします。アンテナでもダミーロードでもかまいませんが、出力インピーダンスZ [Ω]として、整合が取れた負荷を繋いでa,b,cを測定すれば、それがそのまま出力が求められます。
まず、キーダウン時の出力電力PB [W]は、
 PB=a2/Z …(3)
となることは簡単に分かります。また、AMの搬送波のみの出力PA [W]は、
 PA=b2/Z …(4)
も簡単です。ここで、(2)式よりbを(4)式に代入し、c=aを代入すれば、
 PA=(c/2)2/Z=c2/(4Z)
   =a2/(4Z) …(5)
となります。この問題で問われているのは、AMの搬送波電力/CWのキーダウン電力なので、(5)/(3)を計算すればよいので、
 PA/PB=1/4 …(6)
となります。つまり、電信のキーダウンで出ている出力が100 [W]だとすると、搬送波が25 [W]のAMの100%変調時の「尖頭電力」と同じ、ということです。ちなみに、この時のAM波の「平均電力」は(1)の公式に当てはめれば、37.5 [W]ということになります。
 これは考えてみれば非常に大きな差です。特に大出力で問題となる、出力段の半導体素子の許容損失、伝送ケーブルの耐圧などは、ピーク(尖頭)を基準に決めなければなりませんから、平均で37.5 [W]しか(がんばっても)出せない変調方式と、100 [W]フルに出せる変調方式では、送信出力だけの議論ならば、後者の方が有利でしょう。(実際には、伝送速度が低い電信では、伝えられる情報量に限界があるので、あくまで出力で比較しての議論です。)

それでは、解答に移ります。
 求める比は、(6)式の答えそのものなので、正解はと分かります。