□ H19年08月期 A-14  Code:[HF0101] : 受信機のLC同調回路。Cの可変範囲と最高周波数からLのインダクタンスを計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1908A14 Counter
無線工学 > 1アマ > H19年08月期 > A-14
A-14 図に示す高周波増幅部の同調回路において、可変コンデンサCvの最大静電容量が250 [pF]、最小静電容量が30 [pF]であった。このとき受信できる最低受信周波数を1.9 [MHz]とするための同調コイルL2のインダクタンスの値として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、同調回路全体の漂遊(浮遊)容量は30 [pF]とする。また、コイルL1の影響は無視するものとする。
 2.5 [μH]
 6.3 [μH]
10   [μH]
25   [μH]
40   [μH]
問題図 H1908A14a
Fig.H1908A14a

 漂遊(ひょうゆう)容量(浮遊容量とかストレーともいう)が出てきますが、基本的には共振回路の共振周波数を求めることができれば、問題は解けます。

[1]共振回路の共振周波数を求めることが本質

 まず、この問題が、同調回路を構成している共振回路の共振周波数を求めるのが問題の本質であることを見抜きましょう。後段にFETで構成された高周波増幅回路がありますが、今求めたいのは増幅度等ではなく最低又は最高周波数なので、(ほとんど)周波数に影響を与えないこちらの回路は無視して構いません。
 L2とCからなる同調回路は、並列共振回路です。並列共振回路ですから、この回路の両端には共振周波数の信号のみが最も大きく現れ、その他の周波数の電圧は小さくなります。即ち、周波数選択作用があります。
 また、受信周波数を可変にするため、Cを可変コンデンサ(バリコン)としています。これは、昔のAMラジオに使われていました(現在でも使われているものもあります)。共振回路の共振周波数の公式を思い出して下さい。インダクタンスがL [H]、静電容量がC [F]なら、その共振周波数f [Hz]は、
 f=1/{2π√(LC)} …(1)
でした。Cがバリコンなわけですから、その容量が最大のCmaxの時はfが最低になり、最小のCminの時にfが最高になります。
 問題では、「最低受信周波数」又は「最高受信周波数」を求めろ、と言っているので、問題が最低周波数の時はCがCmaxの時、最高周波数の時はCがCminの時の共振周波数を求めればよいことが分かります。ですが、入力側にはL1というコイルが結合しています。これはどう考えればいいでしょうか?

[2]L1の影響は考えなくていいが漂遊容量を考慮する

 問題文の最後に、「1の影響は無視するものとする」とあるので、問題がぐっと簡単になります。(ない場合は、無視してもよい、と判断してよいでしょう)
 なぜかといえば、L2はL1から影響を受けないのですから、周波数の計算においては、考慮する必要がないからです。
 しかし、一方で、「同調回路全体の漂遊静電容量は…」という記述があり、余計な静電容量を考慮しなくてはならないことが分かります。漂遊容量、又は浮遊容量というのは、回路において、意図しないところに発生する静電容量のことです。
 例えば、プリント基板に2本の配線が平行に走っている部分に発生する静電容量、コイルの巻線間に発生する静電容量、(空中に浮いた)配線と周囲のシャーシなどとの間に発生する静電容量です。要するに、コンデンサ以外のところにできた、意図せざる静電容量というわけです。
Fig.HF0101_a 回路図と実際…漂遊容量の考慮
Fig.HF0101_a
回路図と実際…漂遊容量の考慮
 能書きはこのくらいにして計算に入りましょう。
 Fig.HF0101_a左のような回路に漂遊容量を考慮すると、同図右のように、Cに並列に漂遊容量CSが入った形となります。CがCminからCmaxまで変化しますが、同調回路全体の静電容量としては、Cmin+CSからCmax+CSまで変化する、ということになります。
 なぜ「並列に入るのか」というのは結構実際の回路をいじった感覚でないと分からないかもしれません。
 コンデンサですから、「電位の異なるノードの間」にしか見かけ上存在しません。つまり、あるノード(言い換えると回路図上の「線」)に直列に入ることはありえません。
 従って、共振周波数の最高値をfrmax、最低値をfrminとすると、(1)式より、
 frmax=1/[2π√{L2(Cmin+CS)}] …(2)
 frmin=1/[2π√{L2(Cmax+CS)}] …(3)
となります。

それでは、解答に移ります。
 この問題で求められているのは「最低周波数のときのL2」ですから、frminでの(3)式から、L2を求めればいいことになります。(2)をL2について解いて、
 L2=1/{(2πfrmin)2(Cmax+CS)}
上の式に、frmin=1.9 [MHz]、Cmax=250 [pF]、CS=30 [pF]を代入すると、
 L2=25×10-6=25 [μH]
となるので、が正解と分かります。
 ちなみに、問題文中にはCの最小容量が示されていますが、求めたいのは最低周波数なので、最大容量のみが必要です。