□ H19年08月期 A-20  Code:[HH0510] : ホーンアンテナの構造と動作原理、特徴
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1908A20 Counter
無線工学 > 1アマ > H19年08月期 > A-20
A-20 次の記述は、ホーンアンテナ(電磁ラッパ)の特徴について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。
ホーンの開き角を変えても、ホーン開口面の面積が一定の場合には利得が変わらない。
反射鏡付きアンテナの一次放射器として用いられることが多い。
主にマイクロ波以上の周波数で使用されている。
導波管の先端を円すい形、角すい形等の形状で開口したアンテナである。
構造が簡単であり調整もほとんど不要である。

 この問題は、マイクロ波帯以上で用いられる、ホーンアンテナ(「電磁ラッパ」とはまた古めかしい…)の問題です。ホーンの開き角や長さと利得の関係、用途が良く問われます。

[1]ホーンアンテナとパラボラ系アンテナ

 まずは、この問題で出されているホーンアンテナについて調べてから、パラボラ系アンテナを調べます。この2種類のアンテナは密接な関係があって、パラボラ系のアンテナには、ほとんど放射器としてホーンアンテナが使われているためです。
 また、ここでパラボラ「系」と書いたのは、「大きなお皿を持つアンテナ」という括りでまとめたためです。正確な意味でのパラボラアンテナと、カセグレンアンテナについて書きます。
Fig.HH0510_a ホーンアンテナの構造と特性
Fig.HH0510_a
ホーンアンテナの構造と特性
Fig.HH0510_b パラボラ系アンテナの構造と特性
Fig.HH0510_b
パラボラアンテナ系の構造と特性

ホーンアンテナ(電磁ラッパ)(Fig.HH0510_a)
項 目 特  性
構造・動作原理 導波管に直結し、H面又はE面又はその両方の方向に徐々に開いた開口を持つアンテナ。材質は金属で作る。導波管内での電磁界分布が、そのまま縦横方向に拡大されて、開口面からは(理想的には)平面波が発射される
指向性・偏波面 指向性:導波管の伝搬方向に単一指向性。ホーン長Lが長いほど鋭い指向性となる。構造上、後方や側面からの混信に強い
偏波面:導波管内のE(電界)方向と同じ
利得・実効長(高) 最大20 [dBi]程度 開き角θやホーン長Lに依存する
ホーン長と開き角の組合せに対して最適値が存在。開き角が一定ならホーン長が長い(=開口面積が大)程利得は大。開口面積が一定なら開き角に利得最大の最適値がある
周波数帯域 共振を用いないので、広帯域
特徴・用途等 GHz帯以上の周波数で使われるアンテナ。単体で使われることはあまりなく、パラボラ系アンテナの放射器として、反射鏡と組み合わせて用いられることが多い(なお、導波管から直接給電するので、電流・電界分布やインピーダンスは基本的に導波管と同じになる)

パラボラアンテナ・カセグレンアンテナ(Fig.HH0510_b)
項 目 特  性
構造・動作原理 パラボラアンテナ:回転放物面の焦点に放射器(大概はホーンアンテナ)を置くと、焦点から発射された電波はパラボラ反射鏡の開口面までの距離が、経路に関わらず同一になることを利用して平面波を得る構造
カセグレンアンテナ:主反射鏡は回転放物面でパラボラと同じだが、回転双曲面の副反射鏡に放射器(これも大概ホーンアンテナ)からの放射を当てるよう構成する。また、主反射鏡(回転放物面)の焦点と副反射鏡(回転双曲面)の焦点は一致するように配置する。副反射鏡のもう一つの焦点は、放射器の放射点に一致させる
指向性・偏波面 指向性:開口面の法線ベクトル方向 
偏波面:放射器から発せられる電波の偏波面に同じ(特殊な方法を用いれば、円・楕円偏波も可能)
利得・実効長(高) 波長λと反射鏡の実効開口面積Aeによる。開口径が波長より十分大きければ、
 利得G=4πAe/λ2で計算できる
周波数帯域 共振を用いないので、広帯域
特徴・用途等 衛星通信・電波天文(受信)等
両者とも波長が短くなるほど、ビームパターンが反射鏡の表面精度が理想曲面からのずれに対してシビアになる。パラボラアンテナは、焦点まで導波管(又はケーブル)を引かなくてはならないが、大型になると距離が長く損失が大きくなるので、反射鏡の中心近くに放射器が置けるカセグレンアンテナが有利。また、宇宙通信の場合、放射器が地面を向くパラボラよりも、上空を向く形になるカセグレンアンテナの方が、地表の熱ノイズを拾わず有利となる
 

[2]ホーンアンテナ(とパラボラ系アンテナ)の特徴を要約すると

 上の表では、問題で問われていることがよくまとまっていないので(←自分で作ったくせにすみません)、ホーンアンテナの特徴をかいつまんでまとめました。

・周波数帯域…共振を用いないアンテナなので、広い
・形状と利得…開き角一定なら長い方が利得大。開口一定なら開き角に最適値あり
・用途…単独の他、パラボラ系アンテナの放射器
・基準アンテナ…利得が形状から計算で求められる基準アンテナとして有用
・調整…不要(ホーンアンテナに面倒な調整が必要、と聞いたことがない)

 ついでに、関係のあるパラボラ形アンテナについて、軽くまとめておきます。

・形状…波長に比べて十分大きい回転放物面反射鏡放射器からなる
・利得…一般に非常に大きい
・用途…衛星やEMEなどの宇宙通信電波天文(受信)

それでは、解答に移ります。
 …開口面積一定なら、開き角には最適値があるので誤り
 …パラボラアンテナ等の放射器によく使われるので正しい
 …ホーンアンテナは主にマイクロ波以上のアンテナなので、正しい
 …角型の他に円形導波管もあり、各々角錐・円錐ホーンを使うので正しい
 …ホーンアンテナにはほとんど調整は要らないので正しい
となりますので、正解(誤った記述)はと分かります。

 もし、ホーンアンテナの事をあまり知らなくても、1が「怪しい」ことは、考えると分かります。例えば、ホーンアンテナの形状を考える時、もし、開口面積一定でゲインが変わらないのなら、アンテナ自体をコンパクトに作りたいから、と言って、開き角を180度にしたらどうでしょうか? これならホーン長はゼロにできますね。
 でも、こんなアンテナ、どう考えても電波を受けるのは、導波管が開いている口の部分しかなさそうですし、送信時は、導波管内のインピーダンスが開口部分でいきなり変化するので、反射も大きそうです。
 是非、実物のアンテナをイメージして、考えてみて下さい。