□ H19年08月期 A-23  Code:[HI0601] : フェージングの特徴。短波帯・電離層伝搬で生じるフェージングの名前
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05/14 04月期問題頁掲載
01/11 12月期問題頁掲載
2021年
10/17 09月期問題頁掲載
H1908A23 Counter
無線工学 > 1アマ > H19年08月期 > A-23
A-23 次の記述は、短波(HF)帯の電波伝搬におけるフェージング現象について述べたものである。このフェージング現象の名称として、正しいものを下の番号から選べ。
 電離層の高さや電子密度、使用周波数の関係により、受信点において、送信点からの電離層反射波が受信できたり、電離層の電子密度の変動により、送信電波が電離層を突き抜けるため受信不能になる現象で、主としてHF帯で生じる。
吸収フェージング
K形フェージング
偏波フェージング
干渉フェージング
跳躍フェージング

 フェージングの現象と発生原因の問題は良く出ます。原因はいろいろですが、忘れがちなのがフェージングは「変化する何かがある」から起こるのであって、電離層にしろ山岳反射や回折のマルチパスにせよ、何かが変化しなければ、フェージングは起こらない、ということです。この問題では、短波で起こるフェージングが問われています。V,UHFで起こるフェージングは別の問題で問われています。

[1]干渉性・偏波性・跳躍性フェージングの起こる理由

 ではここから、フェージングの起こり方別に説明します。
  • 干渉性フェージング
     干渉性フェージングは、送信点から受信点に至る伝搬経路が複数あり、その経路の間で、経路長の差が変動する時に起こります。
     経路が2本の例(Fig.HI0601_a上)で説明すると、両者の経路差が波長λの整数倍である場合、位相が合いますので、信号は強く受信されますが、λ/2の奇数倍の時は位相が逆になるので、弱く受信されることになります。移動体でどちらかor両方が動きながら通信する場合、あるいは固定局同士でも反射体等が動いている場合、経路長の差は常に変動するので、このフェージングを受けます。
Fig.HI0601_a フェージング 干渉性・偏波性・跳躍性
Fig.HI0601_a
フェージング 干渉性・偏波性・跳躍性
  • 偏波性フェージング
     送信側から受信側に至る経路の中で、偏波面を回転させたり円(又は楕円)偏波に変換してしまう働きがあって、その作用効果が変動する場合に生じるフェージングです。電離層にはこの働きがあり、垂直偏波で送信しても、水平偏波で受信が可能です。
     例えば、送信側・受信側ともに水平偏波の空中線を使用していて、受信側で楕円偏波の電離層波を受信する場合、その楕円の長軸が時間と共に回転(Fig.HI0601_a中)すると、アンテナに発生する起電力が変動するので、フェージングとなります。
  • 跳躍性フェージング
     電離層波を利用している場合(特に最高利用可能周波数MUF近くの周波数を用いている場合)、跳躍距離付近では、電離層の電子密度が変動してMUFが低下(電子密度が低下)すると、突き抜けが起こって第二種減衰が増加します。
     電離層の電子密度は時間と共に密度自体が変動しますし、場所が移動したりもするので、受信局ではフェージングを受けることになります(Fig.HI0601_a下)。これが跳躍性フェージングです。

[2]吸収性・選択性・K形フェージングの起こる理由

  • 吸収性フェージング
     電波が電離層を突き抜ける場合、その強度は減衰(第一種減衰)を受けますが、電離層の電子密度は揺らいでいるため、減衰量も変化します(Fig.HI0601_b上)。これを受信側で受けると、フェージングとなります。これが吸収性フェージングです。
     我々が良く使うHF帯の周波数では、3.5 [MHz]や7 [MHz]といった低いバンドがD,E層の第一種減衰を受けやすく、吸収性フェージングも受けやすいと言えます。同じ電子密度の電離層を通過する場合、周波数が低い方が第一種減衰量が大きいからです。
Fig.HI0601_b フェージング 吸収性・選択性・K形
Fig.HI0601_b
フェージング 吸収性・選択性・K形
  • 選択性フェージング
     伝搬経路に、周波数選択性を持った媒質がある場合、必要な周波数帯幅のうち減衰してしまう帯域や減衰量が時間と共に変動するために起こるフェージングです。
     例えば、AM(A3E)で通信している場合、上側波帯の一部が選択的に減衰を受けたとします(Fig.HI0601_b中)。こういう信号を受信すると、電界強度の変動はもちろんですが、音声なら歪が増加し、明瞭度が下がります。
  • K形フェージング
     電波は、水平より上向きに発射すると、空気の屈折率分布により、地面の方向に曲げられて、見通し距離よりも遠くまで届きます。経路が曲がっていると見積もりにくいので、地球の等価半径係数Kというものを導入して、経路が直線と考えるのに地球の半径が(実際の)K倍だと考えます。
     ところが、このK(「標準大気」で4/3)は大気の地上方向の屈折率分布が一定の仮定の下に近似された値ですが、実際には気象条件などでKは変動します。すると、電波の経路の曲がり具合(曲率)が変動する(Fig.0601_b下)ので、受信電界強度が変動して、フェージングとして受信されます。これがK形フェージングです。

[3]フェージングの軽減策

 上記はフェージングが「なぜ起こるか」という点に着目していますが、以下は「どうしたら軽減できるか」を考えます。いくつかのフェージングは、アンテナで対策を取ることにより、軽減できます。
(AGC等、受信機側での対策はあまりこの問題の問うている内容に沿わないので、アンテナでの対策を記します。)
  • 周波数ダイバーシティ
     選択性フェージングの軽減策です。周波数によって電界強度が異なってくるのですから、Fig.HI0601_c上のように、複数の周波数で送信しておいて、受信側でどちらか変動の少ない方を選択するか、両者の検波出力を合成するなどすれば、変動が抑えられる、という発想です。周波数帯域が2倍以上になるので、周波数利用効率はよくありません。
  • 空間ダイバーシティ
     干渉性フェージングの軽減策です。受信アンテナが1つしかないと、干渉の影響をもろに受けるので、距離を相当離し複数設け、それらの検波出力を合成したり選択したりすることでフェージングの確率が下がるだろう、という発想でFig.HI0601_c中のような構成が用いられます。
     これは、数波長以上離れた位置では、電波の位相の相関が弱いことを利用して、複数の離れたアンテナの出力を選択・合成して受信機に入力するものです。
Fig.HI0601_c ダイバーシティでフェージング軽減
Fig.HI0601_c
ダイバーシティでフェージング軽減
  • 偏波ダイバーシティ
     偏波性フェージングの軽減策です。受信する電波の偏波面が回転するので、これを防ぐには、受信側で垂直と水平の両偏波のアンテナや円偏波アンテナで受信すればよいという発想です。垂直と水平のアンテナ並べてその出力を合成したり(Fig.HI0601_c下)、円偏波のアンテナを用いたりします。
     ちなみに、水平・垂直のアンテナで受信した出力を合成するのと、円偏波のアンテナを用いるのは、実質的に同じことです。

それでは、解答に移ります。
 …吸収性フェージングは第一種減衰の変動が原因で、誤った記述です
 …K形フェージングは等価地球半径係数の変動が原因で、誤った記述です
 …偏波性フェージングは偏波面の回転が原因で、誤った記述です
 …干渉性フェージングは経路間の干渉が原因で、誤った記述です
 …跳躍性フェージングは、正しい記述です
となりますから、正解はと分かります。