□ H19年12月期 A-03  Code:[HB0101] : 複数の電圧源と抵抗からなる回路網の計算(キルヒホッフの法則)
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更新履歴
2014年
12/14 12月期問題頁掲載
08/31 08月期問題頁掲載
04/15 04月期問題頁掲載
H1912A03 Counter
A-03 図に示す直流回路において、直流電流I1=2 [A]及びI2=4 [A]がそれぞれ矢印の方向に流れているとき、抵抗R3 [Ω]に流れる電流I3及び端子ab間の電圧Vabの大きさの値の組合せとして、正しいものを下の番号から選べ。

3 ab
6 [A] 2 [V]
6 [A] 4 [V]
2 [A] 2 [V]
2 [A] 3 [V]
2 [A] 4 [V]
問題図 H1912A03a
Fig.H1912A03a

 電圧源が複数あって、簡単な計算では電流値が出てきそうにないので、ここは「キルヒホッフの法則」にお出ましいただくしかなさそうです。

[1]キルヒホッフの法則とは何か

 キルヒホッフの法則は、第1法則と第2法則の2つからなっていて、「言われてみれば、当然か」の内容で、どっちが第1でどっちが第2だったか、なんてあまり関係ありません。が、ここでは一応区別するために「第1」「第2」と分けて書きます。
  • キルヒホッフの第1法則
     回路網の任意の1点に流入する電流の代数和はゼロである…こんな書き方されたら、普通理解できませんよね。でも大学ではこうやって教えてたんです。
     要するに、どういうことか…Fig.HB0101_cで言うと、ノードAに流れ込んでいる電流(I1とI2の合計)と流れ出している電流I3が等しい、ということです。考えてみれば当たり前な話で、電流は電子の流れなので、電子が勝手に消えて無くなったり、銅線の中から湧いて出てきたりせず、「入ってきたものは必ず出て行く」のですから。
  • キルヒホッフの第2法則
     回路網の任意の閉回路において、各部分の電圧降下の代数和はその回路に含まれる起電力の代数和に等しい…とこれもそのままでは何だかよく分かりませんね。
     「回路」というからにはひとつ以上のループ部分があるわけですが、そのループの経路に沿って一周する時、抵抗分(交流回路ではインピーダンスでも成り立つ)によって降下する電圧をすべて足し合わせたものと、電源による起電力をすべて足し合わせたものが等しい、と言っているのです。

[2]キルヒホッフの法則を使った実際の計算

 第1法則は、流れ込む電流の呼び名と向きを決めて方程式を作るだけでよいので、割と式は立てやすいのですが、問題は第2法則です。
 ここでは、第2法則をもう少し図で具体的に説明します。再びFig.HB0101_cのループ1の部分に着目して下さい。ループの方向を緑の矢印の方向に取ります。電圧降下の和は、電流がループの方向と同じ時は+を、逆向きの時は−を取って計算します。すなわち、ループ1について、
 電圧降下の総計=I11+(−I22)
となります。起電力の総計はよく間違えますが、ループの向きに進むと電位が上がるものは+、下がるものは−で計算します。すなわち、
 起電力の総計=(+E1)+(−E2)
Fig.HB0101_c ノードとループの取り方
Fig.HB0101_c
ノードとループの取り方
となります。これももう一段踏み込んで、どういうことなのか考えてみると、
 電圧降下の総計=起電力の総計
なので、「電圧降下の総計」を右辺に移項すれば、
 起電力の総計−電圧降下の総計=0
となります。(再び)要するに、ループをぐるっと廻って一回戻って来ると、電位差は零、すなわち元の電位に戻る、ということです。
 重ねて注意しなければならないのは、ループの向きと電流(電圧降下)の向きや起電力の向きです。これらの取り方によって、符号が反対になりますから、計算が合わなくなります。
 なお、問題によっては、あらかじめ電流の向きが与えられていますが、そうでない時は自分で電流の向きを「適当に」決めてやります。もし、方程式を解いた結果、電流の値がマイナスになった場合は、最初に決めた電流の方向と、物理で決まる電流の方向が逆だった、ということになります。
 また、

[3]テブナンの定理も使える

 ここで、少し高級(でも簡単)な解き方を追加します。キルヒホッフだけでも問題は解けますが、電圧源や抵抗の数が少ない場合など、別の方法で解いた方が簡単な場合もあるので、それを紹介します。
 この解き方のベースになっている回路定理を、テブナンの定理、と言います(テブナンとは独立に、交流回路にも成立すること示した、東京帝大の鳳(ほう)秀太郎博士にちなんで「鳳−テブナンの定理」とも言う)。ここでは定理の証明などは行ないません。
 この方法は、理想電圧源を複数含む回路網の場合についてのもので、実際に計算する場合の手順は、
 (1) 電圧源を一つ残して、残りの電圧源は全て「短絡」として回路を解き、
 (2) これを順に残りの電圧源について行い、
 (3) 最後に各枝の電流を全て加算する
という方法です。これではどう計算していいのか全く分かりませんので、上のFig.HB0101_cで考えてみます。
 まずこの回路は電圧源(電池の記号)が3つですから、(1)の手順を3回繰り返します。まず、E1を残して、E2とE3を両方ともショートしたと考えて、I11、I12、I13(各々Fig.HB0101_c中のI1、I2、I3に相当)を求めます。
 次に、E2を残して、E1とE3をショートしたと考えて、I21、I22、I23を求めます。最後に、E3を残して、E1とE2をショートしたと考えて、I31、I32、I33を求めます。
 あとは、
 I1=I11+I21+I31 …(1)
 I2=I12+I22+I32 …(2)
 I3=I13+I23+I33 …(3)
で、各部の電流が求められます。電圧源やノードがこれより多い回路でも、方法は同じです。
 一見、手数が多くてキルヒホッフより面倒な気もしますが、一つを残して電圧源をショートしてしまえば、ほとんどの場合は合成抵抗の問題に帰着できますので、電圧と電流の両方の向きと符号の対応を間違えないように、方程式を立てなければならないキルヒホッフよりは楽です。
 ただ、この方法でも、電流の向きと符号は間違いのないように注意して下さい。また、ダイオード等の「非線形素子」(電流と電圧が比例しない)が入っていると、テブナンの定理は成立しません。

[4]電源の向きに注意

 起電力は電池の記号になっていますが、本当はこれは「電圧源」と考えます。方程式を解いていくと、電池に電流が流れ込むことになるケースがあります(1アマでは出ないようですが)。現実にある電池に(起電力とは逆方向の)電流が流れ込むと「充電」になってしまい、答えが合っているのか悩んでしまいますが、「電圧源」であれば、起電力の向きだけがあって内部抵抗がゼロという「物理モデル」であって、逆方向の電流も流せるからです。

それでは、解答に移ります。
 分かっているのは、V1、R1、I1、それにI2だけで、後はまったく分からない、こんなので解けるのかと思いますが…実はこの問題、長々とキルヒホッフの法則を説明してきましたが、ほとんどオームの法則だけで解けてしまいます(一応、キルヒホッフの法則は使います)。
 まず最初に着目するのは、R1とV1のかたまりです。ノードb(電源V1の負側)を基準に考えると、V1だけ上昇した電位から流れ出た電流で、R11の電圧降下が起こるので、ノードaの電位Va(=Vab)は、
 Va=V1−R11=10−4×2=2 [V] …(a)
次に着目するのは、ノードaの電流の収支です。問題には親切に矢印が付いていますので、電流の方向が分かります。キルヒホッフの第2法則をこのノードに適用すれば、流れ込む方向を正として、次のような方程式が立ちます。(I3は未知数ですので、正になるか負になるか分かりませんが、正なら流れ込む方向、負なら流れ出す方向、ということになります。)
 I1−I2+I3=4−2+I3=0 …(b)
 ∴ I3=-2 [A] →2 [A]の流れ出し
となります。従って、|I3|=2 [A]、Vab=2 [V]で、正解はであることが分かります。