□ H19年12月期 A-07  Code:[HC0204] : サーミスタの構造・特徴
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1912A07 Counter
無線工学 > 1アマ > H19年12月期 > A-07
A-07 次の記述は、サーミスタについて述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
(1) サーミスタは、マンガン、ニッケル、コバルト、チタン酸バリウムなどの酸化物を混合して焼結した[A]素子で、素子の温度が変化すると[B]が変化し、その変化率は金属に比べて非常に大きい。
(2) サーミスタには、その特性によりPTCサーミスタやNTCサーミスタなどがある。そのうち、PTCサーミスタの温度係数は[C]であり、この性質を利用して温度センサーや電流制限素子などに用いられている。

誘電体 抵抗値
誘電体 誘電率
半導体 抵抗値
半導体 誘電率
半導体 抵抗値

 サーミスタは温度で抵抗が変わるので、温度センサとしてはもちろん、突入電流に際して急激に抵抗値が上がる突入電流防止素子に用いられているものもあります。

[1]サーミスタは温度で抵抗が大きく変わる素子

 問題文にあるように、金属酸化物などの半導体を焼結して電極を付けたもので、PN接合ダイオードのような整流作用はありません。電流はどちらにも流れます。普通の抵抗は、温度で抵抗値が変わってもらっては困りますが、サーミスタは逆に「温度で抵抗値が大きく変わる素子」です。温度の上昇とともに抵抗値が下がるものをNTCサーミスタ、抵抗値が大きくなるものをPTCサーミスタと呼びます(Fig.HC0101_f左)。
 ところで、サーミスタやバリスタのような、流れやすい電流に方向性がない素子も「半導体」と呼ぶのか、という疑問があります。実は、半導体の定義にはダイオードやトランジスタのように、電流の流れやすさが電流の方向によって異なる素子を「狭義の」半導体とし、バリスタやサーミスタ、高純度のシリコン単結晶のように、元々抵抗率が高く、温度や不純物等の条件で、大きく抵抗率が変化するものも半導体とする「広義の」定義があります。
 前者が半導体と呼ばれることに異論はないと思いますが、後者は、物理で語らなければなりません。物理用語で言えば、「電流が流れること」=「自由電子が存在すること」で、普段は原子核に束縛されて動けない電子(価電子という)が、外から何らかのエネルギー(熱等)をもらったり、不純物が混じるなどして、束縛から外れた「動ける」電子(=自由電子)が増加すれば、電流が流れます。エネルギーをもらうことで、電子自体が束縛を脱するか、不純物が混じって束縛自体が緩くなるかのどちらかです。
 物理では、そのままの状態では自由電子が少なく、電流がほとんど流れないものの、その物質自身の、あるいは外界の何らかの変化で自由電子が増加し、電流が流れるようになる物質を「半導体」と称しているのです。

[2]用途は温度補償(NTC)・突入電流防止(PTC)

 次に、サーミスタの用途を調べます。日常、温度と電子回路が関係する場所で、何らかの制御が必要なもの(PCのCPU・GPUの冷却等)には、多くの場合サーミスタが使われています。
Fig.HC0204_a サーミスタの特性と用途例
Fig.HC0204_a
サーミスタの特性と用途例
 例えば、バイポーラトランジスタの回路で、固定バイアスで使っていると、温度が上がるとバイアス電流が増えるので、熱暴走に至ります。これを防ぐには、トランジスタの温度を監視して、温度上昇とともにバイアス電流を減らす必要があります。
 一般に用いられているのは、温度係数が負のNTCサーミスタで、回路特性の温度補償や、精度の良いものは温度センサとして用いられます。
 温度係数が正のPTCサーミスタは、商品名でポジスタなどと呼ばれ、温度が上がると急激に抵抗が増加します。高精度のものは作られておらず、電源ON時の突入電流防止に用いられることが多い素子です。
 これは、急激に突入電流が流れようとすると温度が上がって抵抗値が大きくなり、電流を制限するように作られたものです。元々(常温で)持っている抵抗値と温度係数との組合せで、様々な定格のものが製造されています。

それでは、解答に移ります。
 …サーミスタでは金属の酸化物は半導体として使用します
 …サーミスタは、温度が変化すると抵抗値が変化する素子です
 …PTCサーミスタは、係数がで突入電流防止等に用いられます
となりますから、正解はと分かります。