□ H19年12月期 A-19  Code:[HH0802] : 実効長or実効高、電界強度、周波数からアンテナ誘起電圧等を計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H1912A19 Counter
無線工学 > 1アマ > H19年12月期 > A-19
A-19 周波数が10.1 [MHz]、電界強度が30 [mV/m]の電波を半波長ダイポールアンテナで受信したとき、受信機の入力端子電圧の最大値として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、アンテナと受信機入力回路は整合しているものとする。
 30 [mV]
 51 [mV]
 71 [mV]
142 [mV]
284 [mV]

 この問題を解くには、アンテナの実効長・実効高という概念を理解しておかなければなりません。概念といってもさほど難しいものでもありません。

[1]アンテナの実効長・実効高とは何か

 まず、Fig.HH0802_aを見て下さい。アンテナにはその動作状態で、垂直系のアンテナと、水平系のアンテナがありますが、普通、水平系には「実効長」、垂直系には「実効高」という用語を用います。
 水平系のアンテナを例に取ると、アンテナに給電すると、そのアンテナの特性で決まる電流分布が生じます。これは、通常一様に分布することはなく、場所によって電流が変化しています。例えば、λ/2ダイポールに中央部から給電すれば、電流は給電部で最も強く、末端に行くに従って正弦的に減少します。
 これを、全長に渡って一様な電流が流れている分布、つまりどこを取っても同じ電流が流れている分布だと仮定すると、素子の長さはいくらになるか、という問題です。
Fig.HH0802_a 実効長・実効高の考え方
Fig.HH0802_a
実効長・実効高の考え方
 Fig.HH0802_a左の図に描いたように、エレメント長の全域にわたってある電流分布をしているアンテナが、全く一定な分布を持っている仮想的なアンテナと同じとすれば、この仮想的なアンテナの全長はいくらになるか、ということです。
 垂直系のアンテナに関しても、全く考え方は同じです。アンテナの実際の高さと、電波を送受信するのに、実質的に必要な高さが異なることを言っています。

[2]電界強度と実効長(高)、誘起電圧の関係

 実効長や実効高を求めて、何の役に立つんだ、と思われるかもしれませんが、実は、ある電界強度の中にこのアンテナを置いた時、アンテナに誘起する電圧が微分も積分も要らず、掛け算だけで出るのです。電界強度の単位は[V/m]なので、実効長[m]または実効高[m]を掛けると、アンテナの誘起電圧 [V]になります。それに、長い(高い)アンテナなのに、実効長/実効高が短い/低いということは、そのアンテナは実際には電波が出ている部分(高周波電流が流れている部分)があまりない、ということが分かります。
 λ/2ダイポールやλ/4垂直接地といったアンテナの実効長・実効高は、電流分布が単純なので、紙と鉛筆で計算できます(電流分布の導出と微積分が必要なので、証明は行ないません)。λ/2ダイポールの実効長がλ/π [m]で、λ/4垂直接地の実効高がその半分のλ/2π [m]です。
 電界強度E [V/m]と、アンテナの誘起電圧V [V]、それにこの実効長L [m]の関係は、
 V=EL …(1)
という、非常に単純な関係です。λ/2ダイポールの場合はL=λ/π、λ/4垂直接地の場合はλ/2πを代入すればよいだけです。

 実効長・実効高と似た概念に、アンテナの「実効面積」という考え方があります。これは、空間を流れている受信電波のエネルギーをどれだけ受信機に伝達できるかを面積で表したものです。アンテナと受信機のインピーダンス整合までを考慮に入れた、エネルギー伝達の効率とも呼べるものですが、アマチュアでは出題されたのを見たことがありません。

それでは、解答に移ります。
 この問題のアンテナは半波長ダイポールアンテナですから、L=λ/πです。E=30 [mV/m], L=300/(10.1×π)≒9.45 [m]を(1)式に代入すれば、誘起電圧V=283.5[mV]となります。ところが、ここで5を選んではいけません。何故かというと、この値はアンテナの「起電力」であって、通常、受信機に接続する時は受信機の入力インピーダンスに整合させるため、入力端の電圧は起電力の半分になるからです。従って、283.5 [mV]/2=141.7 [mV]に最も近いが正解と分かります。