□ H20年04月期 A-06  Code:[HC0101] : 各種ダイオード・半導体素子の名称と動作原理や特徴
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A-06 負性抵抗を利用しているダイオードの名称を下の番号から選べ。
ホトダイオード
発光ダイオード
ガンダイオード
ツェナーダイオード
バラクタダイオード

 このジャンルでは、様々なダイオードや半導体を用いた2端子素子についての動作原理・性質と素子の名称を問う問題が出ます。ここでは、そのような2本足の素子について、見て行きましょう。

[1]接合ダイオード

(1) PN接合は半導体の基本形

 トランジスタにも接合型があるように、PN接合は半導体の動作を理解する基本です。あまり専門的なことは教科書に譲りますが、復習も兼ねてPN接合ダイオードを見てみます。
 PN接合ダイオードは、Fig.HC0101_a左上のように、順方向に電圧を掛けてゆくと、接合面付近でホール(正孔)と電子の再結合が起こり、電流が流れ続けます。この時、「ある電圧Vf」まではその増加は少ないのですが、そこを超えると急に大きな電流が流れ始めます(Fig.HC0101_a右)。この順方向電圧は一般的なSiのPN接合では約0.7 [V]です。
 一方、逆方向に電圧を掛けると、Fig.HC0101_a左下のようにP形のホールもN形の電子も、接合面から離れてしまうため、再結合は起こらず、電流は流れません(実際にはわずかに流れます)。
 これがダイオードの整流作用の復習です。

Fig.HC0101_a 接合ダイオードの構造と動作
Fig.HC0101_a
接合ダイオードの構造と動作

(2) 接合ダイオードの周波数特性・用途

 実際には、大電流を流す整流回路などでは、電流I [A]とVf [V]の積がそのまま電力損失(=熱)になるので、Vfは小さい方がよいのですが、不純物濃度とSiの物性で決まってしまう値なので、そうそう変えられません。
 周波数の観点から見ると、接合ダイオードは、可変容量ダイオードの所でも述べていますが、逆バイアス時は接合がコンデンサとして働くので、接合面が広いほど容量が大きくなり、高周波動作には向きません。一方、大きな逆耐圧や大電流のものが製作可能ですので、用途としては電源整流(スイッチング電源を含む)など、比較的周波数が低く、大きな電流の領域での動作に向いています。

[2]ショットキーダイオード

(1) ショットキー効果は金属と半導体の接合での効果

 ショットキーダイオードは、金属と半導体を接合した面で起こる、ショットキー効果という物理現象を利用したものです。半導体と金属の組合せを適切に選ぶと、接合ダイオードの時のVfのような、「ある値を超えないと電流が流れない」障壁ができます。これもまた、順バイアスと逆バイアスで電流の流れやすさが異なるため、ダイオードとして働くのです。

(2) ショットキーダイオードは高速動作

Fig.HC0101_b 点接触・ショットキーダイオード
Fig.HC0101_b
点接触・ショットキーダイオード
 ショットキーダイオードとPN接合ダイオードの大きな違いは、その動作スピードです。ショットキーは多数キャリアのみで動作するため、少数キャリアによる逆回復時間が原理的にはゼロで、キャリアの移動度も高速です。このため、携帯電話等身近な機器の中にも高周波回路のスイッチング用として、多く用いられています。
 但し、金属と半導体の接合面では、逆方向の電圧に対してPN接合ほどは強くないので、数100Vまでの接合型に対して、数10Vまでの逆耐圧しか実現できていません。
 また、逆方向電圧を加えた際の漏れ電流も、PN接合ダイオードよりは大きくなります。微小な信号を扱う用途には注意が必要になります。実際問題として、高周波信号をそんな高電圧で漏れもゼロに、という厳密な条件でスイッチすることはありませんので、十分実用になっています。

[3]点接触ダイオード

(1) これぞ「元祖」ダイオード

 点接触ダイオードは、Fig.HC0101_b下のように、SiやGeの小片に金属針を突き当てた構造をしています。大昔の鉱石ラジオは、金属鉱石に針を当てながら良く聞こえる場所を探って聞いた、という話がありますが、まさにそれこそが点接触ダイオードの始まりです。通常、針の側から半導体の小片に向かう方向が順方向です。
 昔、私が子供の頃(もう30年も前です)SD-46というゲルマニウムダイオードがあって、ガラスの管の中に入ったこの構造でした。金属と半導体の接触面がショットキー効果で整流作用を有していると考えられています。

(2) 用途は主に検波用

 点接触ダイオードは、接合容量が小さいので高周波向きですが、振動で接触の状態が変わるなど、安定性に欠けるため、今ではほとんど用いられていません。稀に、非常用懐中電灯に組み込まれた、安価なAMラジオなどで見かける程度です。

[4] 可変容量ダイオード(バリキャップ、バラクタ)

 可変容量ダイオードは、良くその動作原理が出題されます。無線機の中では、バリコンを用いずに発振周波数を変化させたりするのに良く使われるからでしょう。日本では「バリキャップ」=バリアブルキャパシタと呼ばれることが多いようですが、英語の世界では「バラクタ」=バリアブルリアクタと呼ばれることが多いようです。

(1) 逆方向電圧で静電容量を制御する

 PN接合ダイオードでは、逆電圧を掛けると電流は流れません。これは、ホールと電子が各々接合面から離れる方向に寄ってしまい、再結合が起こらないからですが、では、接合面付近はどんな様子になっているのでしょうか?
 接合面付近はホールも電子(両者をまとめてキャリアと言います)もない、領域ができています。このキャリアのない領域のことを「空乏層」といい、絶縁体と同じ働きをします。つまり、キャリアのある「導体」の領域で空乏層という「誘電体」を挟む構造になっている、いわばコンデンサができているわけです。
Fig.HC0101_c 可変容量ダイオードの動作
Fig.HC0101_c
可変容量ダイオードの動作
 さらに、空乏層の厚みは、掛ける逆電圧に応じて変化します(Fig.HC0101_c)。逆電圧が大きいほど、空乏層の厚みは厚くなり、静電容量は減少し、逆電圧が小さいと空乏層は薄く静電容量は増加します。このように、可変容量ダイオードに掛ける逆(直流)電圧で、静電容量を制御できるのです。ただ、Fig.HC0101_c右のグラフはわざと曲げて(非直線的に)描いてありますが、通常、掛ける逆電圧と容量の間には、単純な反比例関係は成立しません。

(2) 用途は発振周波数の制御・周波数逓倍

 上のことから、このダイオードを逆バイアスがかかる状態で、共振回路のコンデンサとして使うと、この共振回路の共振周波数が、逆バイアスを変化させることで制御できるので、発振回路に使えば、発振周波数が直流電圧でコントロールできることになります。
 これはまさに、PLL回路(電子回路のところで勉強します)などに使われる、VCO(電圧制御発振器)に他なりません。
 この他、マイクロ波領域では、周波数逓倍にも使われるようですが、その動作原理は私ははっきりと説明できません。ですが、この加わる電圧により容量が変化する現象は、マイクロ波領域まで応答性があることと、非線形現象(コンデンサやコイルは両端にかかる電圧で定数が変わらないのが「線形」)であることから、可変容量ダイオードにマイクロ波を加えると波形が歪み、高調波が出るので、逓倍作用があるのだと考えています。この用途に使われる可変容量ダイオードを、特に「バラクタ」と呼び、大出力を得るための大型のものもあるようです。

[5]定電圧ダイオード

 定電圧ダイオードは、電源回路のところでも出てきますが、そのダイオードとしての基本的な性質はここで押さえてしまいましょう。

(1) ダイオードに加える逆電圧を上げて行くと起こる現象は2種類ある

 ダイオードに逆電圧を加え、徐々に電圧を上げて行くと、最初はわずかしか流れなかった逆方向電流が、ある電圧を超えると急に大きくなる現象が起こります。これを「降伏現象」またこの現象が起こる逆方向電圧の大きさを「降伏電圧」といいます。教科書などにはこの電圧を「ツェナー電圧」という、と書かれていますが、実は2つの同じような現象が交じり合って起こっていることが、後になって分かりました。
 その2つの現象とは、「アバランシェ(電子雪崩)現象」と「ツェナー現象」です。

(2) 電子の雪崩現象 アバランシェ現象

 まず、アバランシェ現象とは、半導体などの内部に非常に強い電界がかかった場合、最初はわずかに存在した電子やホールが、その電界で急激に加速され、他の半導体原子に衝突しながら複数の電子やホールをたたき出し、たたき出された電子がまた加速され…という風にネズミ算的にキャリアが激増する(実際には制限されますが)現象を言います。電圧を上げようとしても、電流がどんどん増加するので、ダイオード両端に生じる電圧はほとんど一定になります。
 ダイオードの場合は、逆バイアスを掛けた時に、電流が流れないとはいえ少数はキャリアが存在しています。これが最初のトリガーになって、アバランシェ現象が起こるわけです。

(3) 不純物濃度が高いと起こるツェナー現象

 第2はツェナー現象です。ダイオードに逆電圧を掛けると、空乏層(可変容量ダイオード参照)ができます。不純物濃度が高い半導体を用いると、空乏層が薄くなり、ここに高電界がかかると、トンネル効果でキャリアが空乏層を突き抜けて電流が流れます。これがツェナー効果です。ダイオードの電圧と電流を観測していると、アバランシェと同様に電流が急激に増えても電圧が上昇しないので、両者を厳密に区別することができなかったわけです。これらは、実際、同時に起こっています。

(4) 実際の(商品化されている)ツェナーダイオード

 Fig.HC0101_dのグラフを横にして見れば、流れる電流が変化しても、両端の電圧が変化しない、ということです。ですから、定電圧電源の基準電圧として使える、というわけです。
Fig.HC0101_d 定電圧とトンネルダイオード
Fig.HC0101_d
定電圧とトンネルダイオード
 ツェナー現象は、不純物濃度が高いほど、印加する逆電圧が低いところで起こります。つまり、不純物濃度を制御すれば、ツェナー電圧をコントロールすることができるので、様々な電圧のツェナーダイオードが商品化されています。
 ツェナーダイオードと抵抗1本でできる定電圧電源は、(電源のところで学びますが)ツェナーダイオードに流せる電流と同じ電流までしか取り出せません。大きな定電圧電源を作るには大きな電流が流せるツェナーダイオードが必要になるため、放熱器取り付けを前提とした、電力容量の大きなものもあります。
 それから、これは設計ノウハウに属する話ですが、アバランシェ効果は温度が高い方がVzが大きく、つまり温度係数が正です。逆に、ツェナー効果は、温度が高い方がVzが小さく、温度係数が負です。これらの現象が同時に起こっているとすると、どこかで合成した温度係数がゼロになるVzが存在するはずで、実際には5 [V]ちょっとのところにあります。
 例えばルネサステクノロジのHZシリーズなどのデータシートを見ると、ほぼ5 [V]より低いと温度係数が負で、高いと正になります。
 ですから、もし、10 [V]の安定した定電圧電源を作りたければ、5 [V]のツェナーダイオードを使い、フィードバック制御の電圧ゲインを2倍として構成した方が、10 [V]のツェナーを使うより温度に対する安定度は有利になります。

[6]トンネルダイオード(エサキダイオード)

 ノーベル物理学賞の江崎玲於奈博士の名前のついたダイオードです。桁違いにおかしな事をしてみたら(というか、意図せずしてしまったら、が正しい)、新しい発見が潜んでいた、という典型例です。

(1) トンネルダイオードは不純物濃度が極端に高い

 通常、電圧を掛けない時でも、ダイオードには薄い空乏層が存在します。普通のPN接合ダイオードの、不純物濃度を極端に上げると、この空乏層に作られるポテンシャル障壁(キャリアが通れない電位の「壁」)が非常に薄くなり、通り抜けられないはずの電子やホールが、電位障壁を通り抜けてしまうという、トンネル効果というものが起こります。
 これが起こると、通常のPN接合ダイオードであれば、印加電圧が(逆バイアス時も含め)VFまでは少しの電流しか流れないダイオードに、大きな電流が流れるようになります(Fig.HC0101_d右)。

(2) トンネル効果が減少する電圧範囲で「負性抵抗」を示す

 しかし、このトンネル効果も順方向電圧を上げて行くと効果が減少し、「普通のダイオード」の特性が顔を出してきます。この「順方向電圧を上げて行くとトンネル効果が減少し、電流が減少する」領域は、Fig.HC0101_dの水色で囲った部分です。ここでは、このダイオードは「かかる電圧を上げると電流が減少する」という奇妙な振舞いを示します。この振舞いを「負性抵抗」といい、マイクロ波の周波数域まで応答性があることから、マイクロ波発振回路に用いられます。
 なぜ負性抵抗で発振が起こるかということを理解するために、トンネルダイオードと抵抗を直列にしたものを定電圧電源を接続した回路を考えて下さい。抵抗を調整して、トンネルダイオードの両端に、負性抵抗を持つ領域の電圧がかかるように設定したとします。すると、電流が多く流れようとするとダイオード両端の電圧が下がって抵抗で電流が制限され、電流が減ろうとするとダイオード両端の電圧が上がってこれで電流が制限され…という風に、ダイオード両端の電圧が振動するわけです。トンネルダイオードではこれが極めて高速に行なえるので、この振動電圧のみを取り出して、マイクロ波発振として利用できるわけです。

[7]その他マイクロ波用ダイオード(ガンダイオード・インパットダイオード)

 トンネルダイオードのほかに、マイクロ波を直接発振できるダイオードを2種類挙げておきます。いずれも、マイクロ波の周波数の交流電圧に対して、負性抵抗を持つため、発振素子として使用されます。

(1) ガン(Gunn)効果を利用して、マイクロ波を直接発振

 ガン効果、とはN形のGaAs(ガリウム砒素)に高電界を掛けると、結晶の厚みに応じた電流の振動が生じる、というものです。キャリアである電子の走行と、外部からかかる電界の位相関係によって、厚みで決まる周波数の交流に対して負性抵抗特性を持つため、この周波数では正のフィードバックがかかり、発振する、というのが定性的説明です。厚さが数10 [μm]では数GHzとなるため、この電流の振動をそのまま発振源として利用します。
 応用としては、スピード検問や野球の球速測定用のマイクロ波レーダー等で、構造が簡単なため、広く用いられています。
 なお、ガン効果のGunnとは、この効果を発見した人の名前で、拳銃のガンではありません。ところで、この素子は、「ダイオード」ですがPN接合がありません。

(2) 大出力が得られるインパットダイオード

 PN接合に逆電圧を掛けてアバランシェ現象(電子なだれ現象)を起こしておき、その逆電圧に重畳してマイクロ波周波数の交流を加えると、ある周波数で、加えた電圧と同位相のキャリアの粗密が生じ、これまた動的な負性抵抗となる周波数が存在します。
 ここでは、印加した交流に対して、負性抵抗で正帰還がかかるため発振回路となり、出力が持続します。
 インパットダイオードの特徴は、何といっても大出力が得られることです。ガンダイオードでは数100 [mW]が限界でしたが、インパットダイオードでは数 [W]から10 [W]オーダーの出力が得られます。冷却も大変なので、放熱器付きの素子が多いようです。

[8]発光ダイオード(LED)

(1) 再結合の際に発光

 PN接合に順方向バイアスを掛けると電流が流れますが、接合面付近では電子とホールが再結合しています(Fig.HC0101_e上)。この際、エネルギーが放出されますが、LEDはその再結合エネルギーが光に変換されるようにP形とN形の組合せを選んであります。
 発光波長は赤外から紫外まで様々で、最近の話題では、今まで長らく不可能とされてきた青紫色の波長の短いLEDが実現したことが挙げられます。

(2) 応用は広範囲。最近では照明用も

 交流特性(高速で発光をON/OFFできる特性)はかなり良く、レーザーを使わない簡易な光通信にも用いられています。他にもケータイのIrDA(赤外線通信)やテレビ・エアコンのリモコン等の通信用途光源としては大出力の白色のものが、電車のヘッドライトにも用いられています。
 なお、光通信やDVDなどのディスクドライブに用いられるレーザダイオード(LD)は、LEDと似ていますが、発光部分に(光の)「共振器」を構成し、内部で反転分布といわれるレーザ発振条件を満たすように作られたものです。電流→光、という点では同じですが、出てくる光の性質が全く違います。光る原理自体はLEDと同じで、再結合時のエネルギー放出です。

Fig.HC0101_e 発光ダイオード・フォトダイオード
Fig.HC0101_e
発光ダイオード・フォトダイオード

[9]ホトダイオード

(エレキの世界では、「フォト」ダイオードと記述するケースが多いですが、ここでは国家試験の記述に従い、「ホト」ダイオードとします。)

(1) 動作原理はLEDの逆

 ホトダイオードとは、電流を光に変換する発光ダイオードとは逆に、光を電流に変換する素子です。PN接合面に光を照射すると、再結合とは逆のプロセスで電子とホールの対ができ(Fig.HC0101_e下)て、外側に電流の経路があればここを流れてゆきます。通常、発生した電子−正孔対を外部に電流として引き出すため、通常は逆バイアスをかけて使用しますが、ゼロバイアスで使用することもあります。
 半導体の組合せで、発光波長が決まるLEDと同様に、ホトダイオードも入射する光の波長によって、感度が異なります。

(2) 光あるところにホトダイオードあり、というほど応用は広い

 応用としては、単純に紫外光から赤外までの光の強さを信号に変えるセンサーとしての役割があります。光通信の受光部や、無人の時には照明が切れる人体の検知センサ、物が遮ったことを検知するセンサなどもあります。変り種では、デジカメやハンディビデオカメラ、またデジタルコピー機などに搭載されているCCDやCMOSセンサは、このホトダイオードを2次元又は1次元にたくさん並べた構造で、画像が取り込めるようにしたものです。

[10]サーミスタ

(1) 温度で抵抗が大きく変わる素子

 金属酸化物などの半導体を焼結して電極を付けたもので、PN接合ダイオードのような整流作用はありません。電流はどちらにも流れます。普通の抵抗は、温度で抵抗値が変わってもらっては困りますが、サーミスタは逆に「温度で抵抗値が大きく変わる素子」です。温度の上昇とともに抵抗値が下がるものをNTCサーミスタ、抵抗値が大きくなるものをPTCサーミスタと呼びます(Fig.HC0101_f左)。

(2) 用途は温度補償(NTC)・突入電流防止(PTC)

Fig.HC0101_f サーミスタとバリスタの特性
Fig.HC0101_f
サーミスタとバリスタの特性
 一般に用いられているのは、温度係数が負のNTCサーミスタで、回路特性の温度補償や、精度の良いものは温度センサとして用いられます。
 温度係数が正のPTCサーミスタは、商品名でポジスタなどと呼ばれ、温度が上がると急激に抵抗が増加します。高精度のものは作られておらず、電源ON時の突入電流防止(急激に突入電流が流れようとすると温度が上がって電流を制限する)に用いられることが多い素子です。
 元々(常温で)持っている抵抗値と温度係数との組合せで、様々な定格のものが製造されています。

[11]バリスタ

(1) 電圧で抵抗が大きく変わる素子

 バリスタは、シリコンカーバイド(炭化シリコンSiC)などを原料に焼結して端子を付けた半導体素子で、整流作用はありません。
 両端にかかる電圧で、抵抗が変化します。その特性はFig.HC0101_f右のようであり、加わる電圧が上昇すると、あるところで急激に抵抗が減少します。

(2) 用途は過渡的に発生する高電圧からの保護

 「高圧がかかるとショート状態になる」特性は、アンテナや電話線の避雷器として有用です。また、リレーやトランジスタで誘導負荷をドライブする際に生じる、過渡的な高電圧に対する保護素子としても使われます。
 例えば、同軸ケーブルの外部導体と芯線間にバリスタを入れると、通常時は受信に影響がないほどの高い抵抗値を持っているため、感度が落ちたりすることはありません。雷電圧の誘導などで、アンテナに高電圧が誘起すると、ほぼショート状態になり、誘導電流がほとんどバリスタ内を流れて、受信回路を保護します。
 ただ、流せる電流と時間(この電流以下なら繰り返し使える)の関係が定格で決まっており、大き過ぎると焼損してしまいますから、雷保護だと言っても直撃されたら壊れてしまいます。
 抵抗が低下し始める電圧と電流容量との組合せで、様々な定格のものが製造されています。

以下に、2端子の半導体の代表例をまとめます。

名称 動作・特徴 バイアス 用途
PN接合
ダイオード
順方向には正孔と電子の再結合で電流が流れる。逆方向は再結合が起こらず流れない。接合容量大で、高周波特性悪い。
順・逆
電源整流
逆電圧保護
スイッチ
ショットキー
ダイオード
半導体と金属接合の整流作用を利用。多数キャリアのみで動作するので高速。逆耐圧は高くできない。
順・逆
高周波SW
高速SW
点接触
ダイオード
半導体結晶と金属針の接触(ショットキー効果)を利用。高周波特性良好だが安定性低い。
順・逆
高周波検波
可変容量
ダイオード
逆バイアス時の空乏層を誘電体とするコンデンサを構成。空乏層の厚さ(=静電容量)を逆電圧で制御できる。

電圧制御発振器(VCO)
逓倍
定電圧
ダイオード
逆バイアス時の降伏現象の定電圧性を利用。ツェナー現象とアバランシェ現象が同時に起こる。

定電圧電源
電圧クランプ
トンネル
ダイオード
極めて高濃度の不純物半導体の接合で起こるトンネル現象を利用。負性抵抗でマイクロ波発振。

マイクロ波発振
マイクロ波用
ダイオード
ガンダイオード、インパットダイオード。両者とも負性抵抗を利用し、マイクロ波を直接発振。
Gunn:順
IMPATT:逆
マイクロ波発振
発光ダイオード 電子−正孔対の再結合時に発生するエネルギーを光として取り出す。赤外から紫外までの波長あり。

通信
表示器
照明
ホトダイオード PN接合面に照射された光で、光の強さに比例した数の電子−正孔対を生成。感度は波長に依存する。
通常は

通信
センサ
撮像
サーミスタ 温度により抵抗値が大きく変化する。正の温度係数をPTC、負のものをNTC。NTCは比較的線形に変化。
無極性
温度補償
突入電流防止
バリスタ 素子の両端にかかる電圧により、抵抗値が大きく変化する。電圧が上昇すると急激に抵抗が小さくなる。
無極性
避雷器
スパイク防止
 

それでは、解答に移ります。
 問題文は「負性抵抗を利用しているもの」はどれか、ということなので、正解はのガンダイオードになります。負性抵抗を利用するダイオードは、マイクロ波発生に使うものが多いですが、同じマイクロ波逓倍に使うバラクタダイオード(可変容量ダイオード)と間違えないようにしなければいけません。