□ H20年04月期 A-12  Code:[HD0803] : PLL周波数シンセサイザで、基準発振周波数と分周比から出力周波数を計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2004A12 Counter
無線工学 > 1アマ > H20年04月期 > A-12
A-12 図に示す位相同期ループ(PLL)回路を用いた周波数シンセサイザ発振器において、可変分周器の分周比(N)が16のときの出力周波数foの値として、正しいものを下の番号から選べ。ただし、基準発振器の出力周波数は1.5 [MHz]及び固定分周器の分周比(M)は20とする。
問題図(横長) H2004A12a
Fig.H2004A12a
  60 [kHz]
 300 [kHz]
 600 [kHz]
 1.2 [MHz]
12.0 [MHz]

 PLLを使った周波数シンセサイザの問題です。PLLについては、それ自体に関する問題が出ているので、そちらを参照して下さい。

[1]周波数シンセサイザの構成

 水晶発振器では、周波数は安定ですが、ほぼ固定された周波数しか発振できません。しかし、世の中には周波数を自由に、しかも高い安定度で操りたい用途は広く存在します。アマチュアの無線機も、昔はLC発振を使ったVFOでしたが、今ではこのPLLを応用した、安定な可変周波数発振器が使われています。
 その可変周波数発振器を周波数シンセサイザ、というのですが、ここではその構成と動作を見てゆきましょう。
Fig.HD0803_a 周波数シンセサイザの構成と動作原理
Fig.HD0803_a 周波数シンセサイザの構成と動作原理
 Fig.HD0803_aがその概略構成です。簡単に言えば、PLLに安定な発振器分周比を可変にできる分周器を付加したものです。それぞれの働きについて説明します。
 まず、安定な発振器があります。簡単なものは水晶発振器や、安定度を重視したものでは発振周波数を温度補償可能なTCXO、はたまた特殊なものでは標準電波の搬送波等を用います。ここでの発振周波数をfRとします。
 次に、この発振器の入力は、分周比が可変な分周器に入ります。分周比は外部から設定可能で、手動(スイッチなど)やマイコン(マイクロコントローラ)など電気的な方法で変えられるようになっています。昔はよくサムホイールで周波数を変えるハンディ機等がありましたが、周波数シンセサイザを使ったものであれば、分周比の設定に使われたものでしょう。ここで設定される分周比をMとします。
 R/Mの周波数が、上に説明してきたPLLの基準入力として入ります。電圧制御発振器(VCO)の出力(周波数fo)が取り出されると同時に、位相比較器に戻るのですが、その途中で第2の可変分周器で分周されます。この分周比も第1の可変分周器と同様、手動やマイコンで変えられるようになっています。ここで設定される分周比をNとします。
 位相比較器の入力は2つですが、このPLLがロックしている状態では、その2つの入力が等しくなっていなくてはなりません。つまり、
 R/M=fo/N …(1)
である、ということです。(1)を出力周波数foについて解けば、
 fo=(N/M)fR …(2)
となります。つまり、Mで周波数のきざみ(ステップ)を可変することができ、そのN倍の周波数が出力できる、という仕組みです。例えば、SSBとCWが送受できるトランシーバでは、SSBとCWで周波数ステップ(Mの設定)を変えたり、ダイヤルを回せばNが増減したりするようにできれば、周波数のコントロールが自由に行なえます。
 このように、PLLや周波数シンセサイザの応用は非常に幅広く、上に挙げた無線機の他にも、モーターで回転数を変えたりする必要がある場合や、パソコンのCPUなどでクロック周波数を内部で上げたり下げたりする場合などに用いられます。

それでは、解答に移ります。
 上記の内容から、fR=1.5 [MHz]、M=20、N=16を(2)に代入して、fo=1.2 [MHz]ですから、正解はと分かります。