□ H20年04月期 A-24  Code:[HJ0102] : 階級精度と指示値の幅、真の値の関係を計算で求める
インデックス
検索サイトから来た方は…
無線工学の基礎 トップ

以下をクリックすると、元のページが行き先に飛び、このウインドウは閉じます

 ■ 無線工学を学ぶ
 (1) 無線工学の基礎 
 年度別出題一覧
  H11年 4月期,8月期,12月期
  H12年 4月期,8月期,12月期
  H13年 4月期,8月期,12月期
  H14年 4月期,8月期,12月期
  H15年 4月期,8月期,12月期
  H16年 4月期,8月期,12月期
  H17年 4月期,8月期,12月期
  H18年 4月期,8月期,12月期
  H19年 4月期,8月期,12月期
  H20年 4月期,8月期,12月期
  H21年 4月期,8月期,12月期
  H22年 4月期,8月期,12月期
  H23年 4月期,8月期,12月期
  H24年 4月期,8月期,12月期
  H25年 4月期,8月期,12月期
  H26年 4月期,8月期,12月期
  H27年 4月期,8月期,12月期
  H28年 4月期,8月期,12月期
  H29年 4月期,8月期,12月期
  H30年 4月期,8月期,12月期
  R01年 4月期,8月期,12月期
  R02年 4月期,9月期,12月期
  R03年 4月期,9月期,12月期
  R04年 4月期,8月期,12月期
 分野別出題一覧
  A 電気物理, B 電気回路
  C 能動素子, D 電子回路
  E 送信機, F 受信機
  G 電源, H アンテナ&給電線
  I 電波伝搬, J 計測

 ■ サイトポリシー
 ■ サイトマップ[1ama]
 ■ リンクと資料

 ■ メールは下記まで



更新履歴
2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2004A24 Counter
無線工学 > 1アマ > H20年04月期 > A-24
A-24 階級精度が1.0(級)で最大目盛値が250 [V]の電圧計で測定したとき、110 [V]を指示した。真の電圧値の範囲として、正しいものを下の番号から選べ。ただし、電圧計の読み取りによる誤差はないものとする。
105.0〜110.0 [V]
105.0〜111.1 [V]
107.5〜112.5 [V]
108.9〜111.1 [V]
110.0〜112.5 [V]

 測定器には誤差がつきものです。ものさしでさえ、温度が違えば誤差を生じたりしますが、ここでは電圧計に生じる、「読み」と「真の値」の差を議論します。「階級誤差」という、聞きなれない言葉が登場しますが、内容は難しくありません。

[1]測定器の誤差はフルスケールを基準に定義する

 まず、測定器の誤差の表示の仕方、を見ておきます。一般に、電圧計などの測定器はフルスケールが決まっていて、その値で誤差を定義します。
Fig.HJ0102_a 真の値と読み値の関係
Fig.HJ0102_a
真の値と読み値の関係
 Fig.HJ0102_aはその様子を図にしたものですが、要するに、フルスケールが100 [V]の電圧計があったとして、その電圧計の盤面(デジタルの場合は本体のどこか)に「1%FS」と書いてあったら、読みが100 [V]の時に、真の値が99〜101 [V]の間に存在しますよ、という意味です。ここまでは、「ああ、1%の誤差の電圧計なんだな」とすんなり飲み込めるのですが、問題はそこからです。
 この(1%の)階級誤差というのは、読みがいくらであってもフルスケールで定義された誤差が生じます、という意味です。この電圧計の例でいえば、もし10 [V]を差していたとすると、真の値は10±1 [V]、つまり9〜11 [V]の中にある、ということを言っています。
 「何だよそれ、1%って書いてあるんだから、真の値は9.9〜10.1 [V]の間にあるはずだろ。高い金出していい精度のを買ったのに…」と言いたいところですが、誤差の定義はこうなっています、としか言いようがありません。
 実際に簡単な測定器でも製作してみると分かりますが、オフセットが乗っていたり、内部の素子に非線形性があったりで、目盛のゼロ点(原点)とフルスケールの間は直線で結べないケースがほとんどです。
 要するに、フルスケールがEで、階級誤差がq [%]の計測器を使って測定したX(X≦E)という値は、Xがいくらであろうと「真の値はX±Eqの幅の範囲にある」という「誤差」が含まれる、ということなのです。もし、読みに応じて誤差も小さくなる(先の電圧計でいえば、10 [V]を測っても真の値が9.9〜10.1 [V]になる)ならば、小さいレンジに切替える必要がなくて便利なんですが…。
 高いお金を出して測定器を買っても、フルスケールに近い値を測らない限り、見合った効果は得られない、というわけです。

[2]精度と確度の違いとは

 測定で問題になる、似たような用語で「精度と確度」があります。これを定義通り言える方は、上の誤差の問題も簡単でしょう。
 能書きはおいておいて、例を元に議論しましょう。ある既知の値(真の値)を2つの測定器で何度も測定しました。
 測定器Aは、Fig.HJ0102_b左のように、毎回の測定値のばらつきは非常に少ないものの、その平均値は真の値からかなりずれていました。
 一方の測定器Bは、測定値はかなりばらついていましたが、平均すると真の値に非常に近い値になりました。
 人間に例えれば、「言っていることはブレが無いんだけど、外してる」人、「毎回言うことは少しずつ違うんだけど、大体において正しい」人、のような感じです。
 ここに挙げた例は極端ですが、精度と確度をわかりやすく示すために、あえてへんてこな測定器を2台持ってきたことにします。
Fig.HJ0102_b 精度と確度
Fig.HJ0102_b
精度と確度
 では、どちらが高精度な測定器で、どちらが高確度な測定器でしょうか? 測定の世界の定義では、以下のようになります。
 測定器A…高精度、低確度 繰返し再現性はあるが真の値からはズレている
 測定器B…低精度、高確度 真の値からズレは少ないが、再現性が悪い
 一般には、「確度」は校正によって修正することが可能ですが、「精度」は測定器の内部で生じるノイズ等で、根本的に取り除くのが困難なことが多いため、「高精度測定器」なものが高価です。中には、時間原器として用いられるようなルビジウム原子時計のように、その超高確度が命で、時間と共に多少(とはいってもこれもすごい「精度」ですが)周波数が揺らいでも平均値がド真中にきていればいい、という特殊な「計測器」もあります。

それでは、解答に移ります。
 「階級精度が1.0級」というのは、読み値に対して、フルスケールに対する±1.0 [%]の誤差を持つ、ということですから、250 [V]のフルスケールで読みが110 [V]なら、真の値は、
 110−250×0.01 〜 110+250×0.01 [V]
 →107.5 〜 112.5 [V]
の間にあるはずです。従って、正解はと分かります。