□ H20年04月期 B-04  Code:[HI0505] : デリンジャ現象の起こるメカニズムと特徴
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2022年
05/14 04月期問題頁掲載
01/11 12月期問題頁掲載
2021年
10/17 09月期問題頁掲載
H2004B04 Counter
無線工学 > 1アマ > H20年04月期 > B-04
B-04 次の記述は、電離層伝搬において発生する障害について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句を下の番号から選べ。
(1) D層を突き抜けてF層で反射する電波は、D層の電子密度に[ア]した減衰を受ける。太陽の表面で爆発が起きると、多量のX線が放出され、このX線が地球に到来すると、D層の電子密度を急激に[イ]させるため、短波(HF)帯の通信が、太陽に照らされている地球の半面で突然不良又は受信電界強度が低下することがある。このような現象を[ウ]という。この現象が発生すると、短波(HF)帯における通信が最も大きな影響を受ける。
(2) この障害が発生したときは、電離層における減衰は、使用周波数の[エ]にほぼ反比例するので、[オ]周波数に切り替えて通信を行うなどの対策がとられている。
 磁気嵐  3乗  下降  高い  反比例
 2乗  低い  比例  上昇 10 デリンジャー現象

 HF以下の伝搬異常現象のデリンジャ現象は、良く出題されます。太陽現象が原因となっているためですが、最近は、これらの現象に対して、宇宙天気情報センターのページやここでのメーリングリストサービスなどで、配信されていますので、利用すると良いでしょう。

[1]太陽表面で何が起こっているか

 まず、これらの異常現象を調べる前に、予備知識として太陽表面で起こっていることを調べておきましょう。なお、以下の記述は、研究者向けでなく、我々素人にも分かりやすく書かれた、独立行政法人情報通信研究機構宇宙環境情報テレホンサービスガイドを参考にしました。また、JARLに入会されている方は、JARL NEWS 2006年秋号及び2008年冬号の特集を参照下さい。電離層や太陽の物理現象が専門家の手により(私が書くよりもずっと深く、易しく)解説されています。

 太陽の表面には時々黒点が現れ、これが(太陽の磁極の反転の周期である)約11年周期で増減して、短波帯の伝搬に大きな影響を与えていることはご存知かと思います。これを書いている現在は、サイクル23の終焉が過ぎ、次のサイクル24が始まったか始まらないか、というところです。では、太陽の黒点が短波の伝搬に何故影響するのでしょうか?
 それは、一言で言うと、太陽の表面から放射される電磁波(主に短波長の紫外線やX線などエネルギーの大きな電磁波)や粒子が電離層や地球の磁気圏に大きな影響を与え、その放射頻度や強度が太陽の黒点活動と密接に関わっているからです。もっと正確に書くとこうなります。
 太陽の黒点からは時折、「フレア」と呼ばれる炎のような高温のプラズマが噴出することがあり、ここから強力なX線や紫外線や高速のプロトン(陽子)が放射されます。このうち、X線や紫外線は電離層の電離を促進させて電子密度を上昇させ高速なプロトンは大電流となって元々ある地球の磁場を撹乱します
 X線や紫外線は大気に吸収され、高速のプロトンは地球の磁場に巻きついて両極(南極、北極)に集束してしまいますので、我々の人体に影響はほとんどありませんが、大気の薄い宇宙空間を飛んでいる人工衛星は、こんな物騒なものが飛来しては、たまったものではありません。実際、太陽電池パネルが損傷したり、衛星のコンピュータがエラーを起こしたりして、障害となることがあります。
 このように、太陽はその黒点と時折起こる爆発=フレアによって、我々の無線のアクティビティだけでなく、生活にも影響を与えているのです。

[2]デリンジャ現象はなぜ起こる?

 上で書いたように、フレアに伴って太陽から強力なX線や紫外線が放射されることがあります。X線や紫外線はものをイオン化(電離)する働きが強いので、地球の大気がある部分に到達すると、大気を構成する酸素や窒素をイオン化します。つまり、電離層にしてみれば、X線や紫外線が十分な強度で当たりつづければ、その電子密度がどんどん上昇することになります。X線や紫外線は特に大気の密度が高い下層の電離層(主にD層)で多く吸収され、ここでの電子密度を上昇させます。
Fig.HI0505_a 太陽の輻射とデリンジャー現象
Fig.HI0505_a
太陽の輻射とデリンジャー現象
 通常、HFの14 [MHz]以上では、D層の第一種減衰(通過する時の減衰)が少ないので、F層反射が有効ですが、太陽からのX線や紫外線が増加して電離層の電子密度が上昇すると、第一種減衰が増加して通信不能になります。これがデリンジャ現象です。F層反射では、D層の通過が2回ありますから、減衰量は2倍(減衰率で2乗)となり、大きく効いてきます
 デリンジャ現象の源はX線や紫外線という(質量を持たない)電磁波です。太陽でフレアが起こると即座に(と言っても、電磁波でも太陽から地球まで約8分かかります)この現象が現れますから、始まり方も終息も変化が急です。
 持続時間は、数分〜数時間です。
 太陽が当たっていない場所では、この現象は起こりません。また、低緯度ほど単位面積あたりの照射量が多いので、影響が大きいといえます。
 まとめると、デリンジャ現象は昼間に(主にD層の)電子密度が急上昇して、第一種減衰が増えて数分〜数時間通信できなくなる現象です。

[3]第一種減衰と電子密度・周波数の関係

 電波が電離層を突き抜ける時に受ける減衰を「第一種減衰と言います(Fig.HI0505_b)。定性的には第一種減衰は、周波数が一定なら、電子密度が高いほど大きく、また、電子密度が一定なら、周波数が低いほど大きくなります。
 もう少し定量的に書くと、減衰量は、
 ・電離層の電子密度にほぼ比例する
 ・周波数の2乗にほぼ反比例する
という性質を持ちます。
 従って、デリンジャー現象が発生して電子密度が上がっても。周波数を上げて通信が可能なら、第一種減衰を抑えることができます。
 ただ、あまり電子密度が上がってしまうと、周波数を相当上げなければならなくなりますので、相手との距離によってはMUF(使用可能な最高周波数)を超えてしまうまでになると、周波数では逃げられなくなります(実際の通信の現場では対策をしているのかどうか、私は知見がないですが)。
Fig.HI0505_b 第一種減衰と使用周波数
Fig.HI0505_b
第一種減衰と使用周波数

それでは、解答に移ります。
 …D層を突き抜ける時、電子密度に8比例した減衰を受けます
 …太陽からのX線は、電子密度を9上昇させます
 …このような伝搬異常現象を10デリンジャー現象といいます
 …第一種減衰は周波数の6 2乗にほぼ反比例します
 …第一種減衰を避けるには4高い周波数に切替えればよいことになります
となります。