□ H20年08月期 A-15  Code:[HF0604] : スーパーヘテロダイン受信機の中間周波増幅器の働きと影像混信の軽減法
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2008A15 Counter
無線工学 > 1アマ > H20年08月期 > A-15
A-15 次の記述は、スーパヘテロダイン受信機における影像(イメージ)周波数妨害を軽減する方法について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。
中間周波増幅部の同調回路の選択度を良くする。
中間周波数をできるだけ高く設定する。
高周波増幅部の同調回路の選択度を良くする。
影像周波数に対するフィルタ(トラップ回路)を受信機の入力端に入れる。

 スーパーヘテロダインに特有の中間周波増幅器と影像周波数妨害の問題です。中間周波数増幅器は近接周波数の妨害除去の機能を持っています。一方、影像周波数妨害ですが「えいぞう」を「映像」と書いてしまうと、テレビの妨害になってしまいますからご注意を。「影像」を英語でいうと、イメージ周波数妨害となります。アンテナなどで出てくる「電気影像」と同じですね。この妨害が起こる原理は簡単ですので、対策とともにマスターしてしまいましょう。

[1]中間周波増幅器の役割

 中間周波増幅器の役割としては、もちろん弱い信号を増幅することもありますが、そのほかに、近接周波数妨害の除去という役割もあります。
Fig.HF0604_a 同調回路(IFT)の多段化と帯域幅
Fig.HF0604_a
同調回路(IFT)の多段化と帯域幅
 Fig.HF0604_aにはその様子を示しています。
 中間周波数増幅器の段間は、一般に増幅器の間をフィルタやIFTで結合します。これらは、上にも書いたように周波数選択性を持っていますから、複数接続すると帯域内の信号のみが残って、帯域外の成分はどんどん減衰して行きます。これは、周波数特性がフィルタやIFTの特性の乗算となるからです。
 もちろん回路が複雑化=コストアップしますし、IFTなどには減衰もありますから、よいことばかりではありませんが、近接混信を避ける解としては正解です。
 市販のHFリグでは、8.83 [MHz](第一IF)と455 [kHz](第二IF)といった2段構えのスーパーヘテロダイン方式(ダブルスーパーヘテロダイン)やさらにIFを1段増やしたトリプルスーパーヘテロダイン方式もあります。これは、IFの周波数が高いほど抑えられる影像周波数混信と、IFの周波数が低い方が有利な近接周波数妨害に対して、それぞれの妨害除去機能を分担させるためです。

[2]影像周波数妨害はなぜ起こるのか?

 次は、影像周波数妨害について調べます。最初に、この妨害がなぜ起こるのか、確認しておきましょう。いろいろと周波数が出てきますから、それぞれの周波数の高い低いの関係をよく掴んで下さい。
 Fig.HF0604_bに、スーパーヘテロダイン方式のブロック図と各周波数の高低の関係を示します。
 高周波増幅段(以下、RF段)は通常アンテナから入ってきた信号をそのまま増幅します。局発(局部発振器、以下、LO)では、受信したい周波数fRとの差の絶対値が中間周波数fiになるような周波数fLを発生します。
 RF段の出力とLOの信号とを周波数変換部(混合器、ミキサ)に加えると、両者の和(fR+fL)と差(の絶対値|fR−fL|)の周波数が同時に得られます。このうち、和の周波数は、使いません。
Fig.HF0604_b 影像周波数混信の起こる原理
Fig.HF0604_b
影像周波数混信の起こる原理
 変換部の出力が一定の周波数fiになってくれないと、後段で処理(検波など)ができないからです。中間周波数増幅段(以下、IF段)は、fiにのみ選択性を持たせた増幅段です。これ以外の周波数はフィルタでカットしてしまいます。すると、
 fL−fR=fi …(1)
の関係が成り立つ入力信号fRが受信機から聞こえてくることになります。ところが、このままでは不都合が生じます。今、アンテナには希望の信号fRと同時に、
 fU=fL+fi …(2)
となる信号fU(但し、fL<fU)が入感していたとしたらどうでしょうか。(2)式を変形すると、
 fU−fL=fi …(3)
が成り立ちますから、これも、ミキサの出力としては、希望の信号fRと同じ周波数になり、IF段で増幅されてしまいます。このfUの信号を、「妨害波」と呼ぶことにします。
 簡単に書くと、これがイメージ混信の起こる原理です。この現象は数式で説明できる原理的なものであって、高価な素子を使ったからといって防げるものではありません

[3]影像周波数妨害の解決法

 では、影像周波数の不要波を取り除くにはどうしたらよいでしょうか? IF段の入力に高価な狭帯域フィルタを入れても防げません。妨害波と信号波はIF段に入ってくるところで、同じ周波数だからです。もう一度式(1)と式(3)をよく見てみましょう。両者を加算すれば、
 fU−fR=2fi …(4)
です。これはFig.HF0604_bのグラフを見ても、直感的に分かりますね。
 アマチュアの場合、周波数の指定がバンドなので、RF段はIF段に比べて広帯域に設計しますが、そのためにイメージ混信が発生しやすいわけです。ならば、(4)式から、iを高く取ったらどうでしょう? こうすれば、妨害波fUと信号波fRは周波数が離れてくれます。Fig.HF0604_b下段右のグラフでは、fiを2倍に取り、RF段の帯域を狭くしたケースを想定しています。このようにすれば、イメージ混信を起こす周波数の信号はRF段で増幅されなくなりますから、除去することができます。
 要するに、中間周波数を高く取って影像周波数を高周波増幅の帯域外に出してしまうことで、影像周波数混信を避けよう、というわけです。このため、中間周波数を高く取ることが影像混信の解決策の一つとなります。

それでは、解答に移ります。
 …IF段の選択度を上げても、影像混信は防げないので誤り
 …IF周波数を上げると、影像周波数が離れて分離しやすくなるので正しい
 …RF段の選択度を上げると影像周波数信号は減衰するので正しい
 …トラップにより影像周波数の信号が減衰するので正しい
となりますから、正解(誤った記述)はと分かります。