□ H20年08月期 A-20  Code:[HH0511] : 折り返しダイポールアンテナの電気的特性と用途
インデックス
検索サイトから来た方は…
無線工学の基礎 トップ

以下をクリックすると、元のページが行き先に飛び、このウインドウは閉じます

 ■ 無線工学を学ぶ
 (1) 無線工学の基礎 
 年度別出題一覧
  H11年 4月期,8月期,12月期
  H12年 4月期,8月期,12月期
  H13年 4月期,8月期,12月期
  H14年 4月期,8月期,12月期
  H15年 4月期,8月期,12月期
  H16年 4月期,8月期,12月期
  H17年 4月期,8月期,12月期
  H18年 4月期,8月期,12月期
  H19年 4月期,8月期,12月期
  H20年 4月期,8月期,12月期
  H21年 4月期,8月期,12月期
  H22年 4月期,8月期,12月期
  H23年 4月期,8月期,12月期
  H24年 4月期,8月期,12月期
  H25年 4月期,8月期,12月期
  H26年 4月期,8月期,12月期
  H27年 4月期,8月期,12月期
  H28年 4月期,8月期,12月期
  H29年 4月期,8月期,12月期
  H30年 4月期,8月期,12月期
  R01年 4月期,8月期,12月期
  R02年 4月期,9月期,12月期
  R03年 4月期,9月期,12月期
  R04年 4月期,8月期,12月期
 分野別出題一覧
  A 電気物理, B 電気回路
  C 能動素子, D 電子回路
  E 送信機, F 受信機
  G 電源, H アンテナ&給電線
  I 電波伝搬, J 計測

 ■ サイトポリシー
 ■ サイトマップ[1ama]
 ■ リンクと資料

 ■ メールは下記まで



更新履歴
2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2008A20 Counter
無線工学 > 1アマ > H20年08月期 > A-20
A-20 次の記述は、折り返し半波長ダイポールアンテナについて述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
(1) 給電点インピーダンスは、約[A][Ω]である。
(2) 実効長は、使用する電波の波長をλ [m]とすれば、[B][m]である。
(3) 八木アンテナの[C]として多く用いられている。


292 2λ/π 放射器
292 λ/π 導波器
292 2λ/π 導波器
75 λ/π 導波器
75 2λ/π 放射器

 ダイポールアンテナと、折り返しダイポールアンテナの特徴をまとめてみました。
(なお、利得、実効高等の用語については、それらについての問題の解説を参考にして下さい。また、利得などは一般に市販されているものを参考にしているので、絶対的なものではありません。)

[1]ダイポールアンテナと折り返しダイポールアンテナ

 ダイポールアンテナは自作もできる基本的なアンテナです。折り返しダイポールアンテナは、指向性アンテナの放射器によく用いられます。テレビのアンテナ等でおなじみだと思います。
Fig.HH0511_a 半波長ダイポールの構造と特性
Fig.HH0511_a
半波長ダイポールの構造と特性
Fig.HH0511_b 折り返しダイポールの構造と特性
Fig.HH0511_b
折り返しダイポールの構造と特性

半波長ダイポールアンテナ(Fig.HH0511_a)
項 目 特  性
構造・動作原理 片側約λ/4のエレメントを直線状に展開し、平衡給電する。共振させて用いる
指向性・偏波面 指向性:水平面内=8の字 垂直面内=無指向性
偏波面:銅線の展帳方向に同じ(一般に水平)
インピーダンス 73+j43 [Ω]だが、普通両側を短縮してλ/2より短くし、リアクタンス分(虚数部:j43)をゼロにして使う
利得・実効長(高) 利得2.15 [dBi] 実効長λ/π [m]
電流分布 給電部が電流最大で末端に行くほど正弦的に減少する分布。先端では原理的にゼロ
周波数帯域 共振周波数を中心とする、狭い帯域。
(エレメント径を波長に対して太くすると多少広がる)
特徴・用途等  アマチュアでHFのワイヤー系といえばダイポール。長波長側のバンドではコイルを入れて短縮
 この変形に、インバーテッドV(逆V)アンテナがある。これは、給電点を頂点として逆V形に張ったもの。敷地の狭い所でも張れる。開き角が小さくなるほどインピーダンスは低下、帯域は狭帯域に。他の特性は、ほぼ半波長ダイポールと同様

折り返しダイポールアンテナ(Fig.HH0511_b)
項 目 特  性
構造・動作原理 片側λ/2のダイポールを折り返してループにした構造。前後のエレメントの径r1、r2やエレメント間隔dでアンテナの特性が変化する。
指向性・偏波面 (水平設置の場合)
指向性:水平面内=8の字 垂直面内=無指向性
偏波面:水平
インピーダンス 半波長で太さがどこも同じの単純な折り返しなら、理論上292+j168 [Ω](半波長ダイポールの4倍)
実用はリアクタンス分を打ち消して200〜300 [Ω]
利得・実効長(高) 利得:約2.15 [dBi]  実効長2λ/π [m]
半波長ダイポールの倍(*欄外に解説)
電流分布 λ/2ダイポールとほぼ同じ
周波数帯域 λ/2ダイポールよりも広帯域
特徴・用途等  広帯域を必要とする、TV受信機のアンテナ(八木アンテナ)の放射器として用いられることが多い。アマチュアでも、周波数の割に帯域が広い430 [MHz]の八木アンテナの放射器として用いられる。
 折り返さないダイポールと異なり、平衡電流が流れないので、同軸ケーブルで給電可能

(*解説…なぜ実効長が半波長ダイポールの倍なのか?
 まず、半波長ダイポールアンテナと折り返しダイポールアンテナのインピーダンスをそれぞれZd [Ω](約73 [Ω])とZf [Ω](約292 [Ω])とします。簡単に言えば、
 Zf/Zd=4 …(1)
です。
 次に、両者が、電界強度E [V/m]の中に置かれている時、各々の有効電力(受信系のインピーダンスが整合している時に受信機に供給される電力)をそれぞれPd [W]とPf [W]をとしてこれを求めます。(実効長をそれぞれ、led [m]とlef [m]とします。)
 Pd=(Eled)2/4Zd [W] …(2)
 Pf=(Elef)2/4Zf [W] …(3)
両者は、利得が同じなので、同じ電界中に置かれた時の有効電力も同じはず、つまり、Pd=Pfのはずですから、(2),(3)式より、
 (Eled)2/4Zd=(Elef)2/4Zf
この式は、
 led2/Zd=lef2/Zf
とできて、さらに、
 (lef/led)2=Zf/Zd …(4)
この(4)式の右辺に(1)式を代入して、
 (lef/led)2=4
 ∴ lef/led=2 …(5)
つまり、折り返しダイポールの実効長は、半波長ダイポールの2倍、ということになります。何だか不思議な感じもしますが、インピーダンスが異なるので、「利得が同じなら実効長も同じ」という関係が成り立たない、という例です。

それでは、解答に移ります。
 …折り返しダイポールのインピーダンスは理論上292 [Ω]です
 …単体での利得はダイポールと同じで、実効長は倍の2λ/π [m]です
 …折り返しダイポールは、八木アンテナの放射器として用いられます
となりますから、正解はと分かります。