□ H20年12月期 A-01  Code:[HA0206] : 均一な電界中に置かれた点電荷に働く力と電位差の計算
インデックス
検索サイトから来た方は…
無線工学の基礎 トップ

以下をクリックすると、元のページが行き先に飛び、このウインドウは閉じます

 ■ 無線工学を学ぶ
 (1) 無線工学の基礎 
 年度別出題一覧
  H11年 4月期,8月期,12月期
  H12年 4月期,8月期,12月期
  H13年 4月期,8月期,12月期
  H14年 4月期,8月期,12月期
  H15年 4月期,8月期,12月期
  H16年 4月期,8月期,12月期
  H17年 4月期,8月期,12月期
  H18年 4月期,8月期,12月期
  H19年 4月期,8月期,12月期
  H20年 4月期,8月期,12月期
  H21年 4月期,8月期,12月期
  H22年 4月期,8月期,12月期
  H23年 4月期,8月期,12月期
  H24年 4月期,8月期,12月期
  H25年 4月期,8月期,12月期
  H26年 4月期,8月期,12月期
  H27年 4月期,8月期,12月期
  H28年 4月期,8月期,12月期
  H29年 4月期,8月期,12月期
  H30年 4月期,8月期,12月期
  R01年 4月期,8月期,12月期
  R02年 4月期,9月期,12月期
  R03年 4月期,9月期,12月期
  R04年 4月期,8月期,12月期
 分野別出題一覧
  A 電気物理, B 電気回路
  C 能動素子, D 電子回路
  E 送信機, F 受信機
  G 電源, H アンテナ&給電線
  I 電波伝搬, J 計測

 ■ サイトポリシー
 ■ サイトマップ[1ama]
 ■ リンクと資料

 ■ メールは下記まで



更新履歴
2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2012A01 Counter
無線工学 > 1アマ > H20年12月期 > A-01
A-01 次の記述は、電界の強さがE [V/m]の均一な電界について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
(1) 点電荷Q [C]を電界中に置いたとき、Qに働く力の大きさは、[A][N]である。
(2) 電界中で、電界の方向にr[m]離れた2点間の電位差は、[B][V]である。


E/Q E/r
E/Q Er
QE E/r
QE Er

 物理の基本的な問題です。「電界」「電位差」「電荷」それぞれの物理的意味を掴んでおけば、さほど難しい問題ではありません。

[1]電界は「電気の力が働く場」、電荷は「電気の量」

 まずは簡単な復習からはじめます。小中学生の静電気の実験であるように、物体は多かれ少なかれ、電気を溜めることができます。その、電気が溜まっている状態を「帯電している」といい、溜まっている(静)電気の量を「電荷(量)」といい、単位は[C](クーロン)で表します。電荷には、正と負の2種類があります。
 帯電している物体の周囲には、電界(あるいは電場)という力の働く「場」ができていて、同じ符号の電荷を持った物体を近づけると、反発し合い、異符号の電荷を持った物体を近づけると、引き合います。
 電界を定量的に表現するには、+1 [C]の点電荷Q(電荷量はあるが大きさがないもの)を持ってきて、それが受ける力の大きさ[N](ニュートン)とその向きで定義します。なので、Qが1 [N]の力を受ければ、そこの電界の強さは、1 [V/m](ボルト毎メートル)である、といいます。電界の向きは、Qが受ける力の向きそのものです。
 上記からも分かるように、「電界」は強さ(大きさ)と向きを持つベクトル量です。例えば、正の点電荷の周囲では、その電荷から全方向に放射状に電界が向いていて、その強さは、クーロンの法則により、点電荷からの距離の2乗に反比例して弱くなります。
 この問題では、電界の強さは均一(一様)である、とされていますので、場所による電界の向きや強さの変化など複雑なことは考えずに単純に考えればよいのです。
 Fig.HA0206_aに一様な電界E [V/m]の中にある、正の点電荷Qpと負の点電荷Qnについて、電界から受ける力の様子を描いてみました。
 上の定義から、Qp,Qnが一様な電界E [V/m]から受ける力の大きさFp,Fnは、次式で表されます。
 Fp=QpE …(1)
 Fn=QnE …(2)
Fig.HA0206_a 点電荷が電界から受ける力
Fig.HA0206_a
点電荷が電界から受ける力
 一方、力の向きですが、正の電荷Qpに対しては電界と同じ向き、負の電荷Qnに対しては、電界と逆向きになります。

[2]電位は電場の「位置エネルギー」

 残りの一つの定義である「電位」について考えましょう。まず、Fig.HA0206_bのように、一様な電界E [V/m]の中に、電荷量(正とします)が等しい4つの点電荷X1,X2,Y1,Y2が最初は基準の位置Pにあったとします。
 このうち、X1,X2は基準の位置より右側にあり、電界も右向きなので、X1,X2をP点からこの位置まで持ってくるのに、エネルギーは必要ないどころか、何か別の「仕事」をさせることができます(ここでいう仕事とは発熱させるとか、質量のあるものの運動を加速させるとか、物理的な意味での仕事をいいます)。つまり、基準線から右側は、「エネルギー的に低い」ということができます。
 反対に、Y1,Y2を基準の位置から左側に持って行くには、正電荷に対しては右向きの力が働いているものを逆向きの力を加えて行かなくてはなりませんから、「仕事をしてやる」必要があります。
 
Fig.HA0206_b 一様な電界中の基準位置と電位
Fig.HA0206_b
一様な電界中の基準位置と電位
Fig.HA0206_c 電界を斜面に例える
Fig.HA0206_c
電界を斜面に例える
 電界が作る「場」で、エネルギーに着目して考えるには、同じように、離れていても働く力である重力を考えると分かりやすいかもしれません。それを説明したのが、Fig.HA0206_cです。
 灰色に見えるのが「電界」という「斜面」で、横軸には基準位置からの距離が、縦軸には「位置エネルギー」に相当する「電位」が取ってあります。実際の斜面で考えると、茶色の線の基準位置より、X1,X2は低い位置にあり、Y1,Y2は高い位置にあります。斜面の傾きは、どこでも同じ(一様)です。
 この斜面の傾きが、「電界の強さ」に相当するので、P点から電界の方向に同じ水平距離にあるX1,X2とY1,Y2はそれぞれ、同じ電位になる、というわけです。基準点からの水平距離d1,d2に、傾きである電界の強さEをかければ、その距離間の電位差V1,V2が、
 VX=−EdX …(3)
 VY=EdY …(4)
と計算できる、という算段です。
 もちろんこれは、斜面の傾き(=電界)がどこでも同じだからで、ゴルフコースのように凹凸がある曲面(場所によって向きも大きさも違う)では、こんな単純な計算はできず、「積分」という手段が必要になります。
 もう一つ気をつけなければならないのは、「電位差」は2点間の電位の差で定義されるので、どこか基準になる点がないと、意味を成しません。電気の世界では、暗黙の了解として、GND(地球)を基準に取ります。

それでは、解答に移ります。
 …電界の強さがEで電荷量がQなら、働く力はQE [N]です
 …一様な電界E中で、rだけ離れた点の電位差はEr [V]です
となりますから、正解はと分かります。
 実はこの問題、「次元」に着目するだけで、答えが出ます。物理を学んだことのある方ならお分かりになると思いますが、電界の強さ[V/m]を電荷量[C]で割ってしまうと、力の次元[N]になりません。また、電界の強さ[V/m]を距離[m]で割ってしまうと、電位差[V]の次元になりません。
 前者からが、後者からが正解と絞れてしまいます。