□ H20年12月期 A-06  Code:[HD0302] : 水晶発振子が安定な発振素子として用いられる周波数範囲をリアクタンスで示す
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2012A06 Counter
無線工学 > 1アマ > H20年12月期 > A-06
A-06 次の記述は、図に示す特性曲線を持つ水晶発振子について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
(1) 水晶発振子は、単純なLC同調回路に比べて尖鋭度(Q)が高く、周波数の精度向上の鍵となるデバイスで、水晶の[A]効果を利用して機械的振動を電気的信号に変換する素子である。
(2) 水晶発振子で発振を起こすには、図の特性曲線の[B]の範囲が用いられ、水晶発振子と外部負荷で共振させる。このとき、水晶発振子自体は、[C]として動作する。


ペルチェ コイル
ペルチェ コンデンサ
ピエゾ コンデンサ
ピエゾ コンデンサ
ピエゾ コイル
問題図 H2012A06a
Fig.H2012A06a

 水晶振動子の等価回路を理解していると、割と容易に解ける問題です。曲者なのが、水晶を挟んでいる電極で、この影響を考えに入れなければなりません。これがこの問題のキーになります。
 問題図において、周波数の低い方の共振周波数(リアクタンス=0)をf0、高い方の共振周波数(リアクタンス=±∞)をfpとします。

[1]水晶発振子の等価回路はどうなっている?

 水晶発振子は、電極間に挟まれた、水晶振動子に発生する圧電効果と、外部から掛けられる振動電界が「共振」することを利用して、一定周波数のメカ的振動と電気的振動(圧電効果)を起こすものです。
Fig.HD0302_a 水晶発振子の等価回路と共振周波数
Fig.HD0302_a
水晶発振子の等価回路と共振周波数
 水晶発振子の等価回路はFig.HD0302_aのようになっています。水晶振動子は、水晶片を電極に挟んだ構造(同図右)をしています。この構造は、見方によっては水晶片を誘電体とするコンデンサで、等価回路で言うと、Cpがその容量を示しています。
 一方、水晶片そのものは電気的等価回路で言うと直列共振回路になっています(正確な理由を私は説明できませんが、多分、共振した時に最もインピーダンスが下がるためでしょう)。
 この図のように端子を引き出し、その両端のリアクタンスを観測したのが問題のグラフ、というわけです。

[2]水晶発振子の等価回路を解析する

 ここで、水晶片の各定数をL0, C0, R0とします。水晶片は非常にQが大きいことが知られています。つまり、LやCのリアクタンスに比べると、抵抗分R0はきわめて小さい、ということになります。その条件では、水晶片単体での共振周波数f0は、
 f0=1/{2π√(L00)} …(1)
と表されます。
 また、水晶片が持っている等価的な静電容量C0は電極間容量Cpよりも十分小さくなっています。上に述べたf0とは別に、電極間容量Cpも含めたこの系全体の共振周波数も存在しますが、それを考えるには、この回路図中に含まれる2つのコンデンサの合成容量を検討しなくてはなりません。この2つは共振電流に対してシリーズ(直列)に入っていますから、合成容量は直列合成したものCsとなります。Csは、
 Cs=C0p/(C0+Cp) …(2)
となります。系全体の共振周波数をfpとすると、
 fp=1/{2π√(L0s)}
   =1/[2π√{L00p/(C0+Cp)}] …(3)
 f0とfpの値の大きさを比べるために、(3)式を(1)式で割って、fpをf0で割ってみると、
 fp/f0=1+C0/Cp …(4)
となり、この値は1よりわずかに大きくなります(∵C0≪Cp)。つまり、pはf0よりもわずかに高いところにあります。

[3]リアクタンスの周波数特性…共振周波数が2つある

 それでは次に、問題文のグラフの意味を見てゆきましょう。このグラフは水晶発振子のリアクタンスの周波数特性です。マイナス側は容量性、すなわちこの合成回路に交流を加えると電流は電圧より進み、プラス側は誘導性で電流は電圧より遅れる、という意味です。
f<f0 の領域
 この周波数領域では、リアクタンスは容量性です。f→0でリアクタンスが−∞に発散するのは、C0とCpがともに低周波(直流も)を阻止するからです。
f=f0 の場合
 ここが水晶片の共振点です。水晶片が直列共振しているので、リアクタンスはほぼゼロです。
0<f<fp の領域
 この領域では、リアクタンスは誘導性です。0とCpのリアクタンスの寄与が下がりますが、今度はL0のリアクタンスが大きくなってくるためです。周波数がfpに近づくとともに、リアクタンスは+∞に発散します。発振回路の中で水晶を使う場合は、通常この範囲の周波数(わずかにf0より高い周波数)で使用します。
f=fp の場合
 f0とともにもう一つの共振点はfpで、ここではリアクタンスが±無限大に発散しています。電極の容量も含めた系が並列共振していて、外からは電流が入りこめない状態になっています。
p<f の領域
 ここの領域では、端子から見たリアクタンスのうち、水晶片側はL0の寄与でどんどん増加しますが、極板容量側はコンデンサなので、周波数が上がれば−∞→0に漸近します。トータルとして、端子から見れば並列回路なので、極板容量側の−∞→0に漸近する特性が合成された特性となります。

 水晶を用いた発振器は、このf0付近の周波数で発振させますが、発振周波数が安定なのは、C0やL0といった、水晶片固有のパラメータが温度などの変動に対して安定なためです。

それでは、解答に移ります。
 …「振動を電気に変換」するのは圧電(ピエゾ)効果です
 …発振回路中では、f0少しより高い周波数ですので、の範囲です
 …区間bでは、リアクタンスは誘導性、つまりコイルとして働きます
となりますから、正解はと分かります。