□ H20年12月期 A-18  Code:[HG0205] : 整流回路+平滑回路で無負荷時のダイオードの逆耐電圧を計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2012A18 Counter
無線工学 > 1アマ > H20年12月期 > A-18
A-18 図に示すコンデンサ入力形平滑回路を持つ単相半波整流回路において、交流入力が実効値106 [V]の単一正弦波であるとき、無負荷のときのダイオードDに加わる逆方向電圧の最大値として、最も近いものを下の番号から選べ。
150 [V]
212 [V]
300 [V]
318 [V]
424 [V]
問題図 H2012A18a
Fig.H2012A18a

[1]交流電圧の表示の仕方

 まずはじめに、交流電圧の表記の仕方を復習しましょう。電源を扱っている問題は、特に断りがない限り、一時側の入力波形は正弦波です。
Fig.HG0205_a 半波整流回路と各部の電圧
Fig.HG0205_a
半波整流回路と各部の電圧
 まずはFig.HG0205_aの左下を見て下さい。
最大値…これは単純に正弦波の(片側の)「山の高さ」の電圧を示します。つまり、基準電位(通常GND)からピークまでの電圧です。
実効値…これは、「その値の直流電圧を抵抗負荷に接続した場合と、消費する電力が同じ交流電圧」です。分かりにくいですが、直流100 [V]と交流(実効値)100 [V]の電源を持ってきて、同じ抵抗に接続すると、発生する熱量が同じ、という意味です。
 この他にも、交流の電圧を表す値として、平均値がありますが、この問題では使わないので省略します。
 正弦波交流では、普通その値を実効値で表記します。また、最大値Vpと実効値Vrにはよく知られた次の関係があります。
 Vr=Vp/√2 (又はVp=√2Vr) …(1)
つまり、正弦波では、実効値の√2倍が最大値、というわけです。この関係は電源や交流回路の問題のみならず、AMの変調度と電力、給電線に通せる最大電力の問題などにも出てきますので、覚えておきましょう。
 早い話が、我々が普段使っている100 [V]の交流と単純に言っても、山と谷では280 [V]近い差がある、ということなのです。

[2]無負荷の平滑出力は最大値

 では、無負荷の時、単相半波整流回路の出力電圧はどうなるでしょうか。Fig.HG0205_aの右上を見て下さい。
 平滑用のコンデンサは、整流後の脈流電圧がピーク(=最大値)になるまで充電され、負荷がなければその電圧を保ち続けます。つまり、平滑出力電圧は交流電圧の最大値と同じです。

[3]ダイオードにかかる逆電圧(半波整流の場合)

 Fig.HG0205_aに示す単相半波整流回路の場合の、ダイオードにかかる逆電圧を調べてみます。まず、基準電位はこの図の左上の回路図で、出力の下側の端子に取ります。また、入力交流の実効値をViとします。
 ダイオードのカソード側の電位は上で見たように、+√2Viでほぼ一定の電位です。アノード側は交流電源に繋がっているので、時間的に変化しますが、最もマイナス側に振れる瞬間で、−√2Viです。ダイオードにかかる逆電圧は、カソード電位−アノード電位で、これをグラフにしたのが、Fig.HG0205_aの右下のグラフです。
 これを見ると、逆電圧の最小は交流電圧のプラス側の最大時でゼロ。最大は交流電圧のマイナス側の最大時で、2√2Viとなります。

[4]ダイオードにかかる逆電圧(全波整流の場合)

 今度は、Fig.HG0205_b左上のようなブリッジダイオードを用いた単相全波整流回路の場合について、同様にダイオードにかかる逆電圧を考えてみます。
 まず、この図で、ブリッジの右上のダイオードをD1、その対辺のダイオードをD2とします。入力電圧は半波整流の時と同様に実効値Vi [V](最大値Vmax [V])の正弦波だとすると、無負荷時の平滑出力はこの図の右上のようになり、Vmax [V]の(ほぼ)直流です。ここまでは、半波整流の設定と何も変わっていません。
 ここで、入力電圧が負の側に振れている半周期(この図左下の入力電圧が青の部分)について考えてみます。この時は、逆方向の電圧がかかるダイオードはD1とD2です。(緑の点線で示されたダイオード2本は、順方向バイアスがかかるため、ここでの考察の対象外です。)
Fig.HG0205_b 全波整流回路と各部の電圧
Fig.HG0205_b
全波整流回路と各部の電圧
 つまり、D1とD2の2本で、最大2Vmax(=2√2Vi) [V]の電圧を受け止めているわけです。通常、ブリッジダイオードを構成する各ダイオードは特性が揃ったものですから、これら2本のダイオードで逆電圧を等分に分担している、と考えるのが自然です。
 従って、D1では、最大でVmax(=√2Vi) [V]の逆電圧がかかることになります。

それでは、解答に移ります。
 ダイオード一つの単相半波整流回路で、実効値106 [V]の交流を整流するのに、どの程度の逆耐圧が必要なのか、という問題です。Viが106 [V]ですから、その2√2倍は299 [V]となります。従って、正解はと分かります。