□ H21年04月期 A-07  Code:[HC0208] : サージ保護デバイスの保護動作の原理と求められる特性
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05/14 04月期問題頁掲載
01/11 12月期問題頁掲載
2021年
10/17 09月期問題頁掲載
H2104A07 Counter
無線工学 > 1アマ > H21年04月期 > A-07
A-07 次の記述は、サージ防護デバイス(避雷器)について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
(1) 避雷器は、侵入してくる雷電流をバイパスするための素子であり、規定電圧値[A]の電圧が加わった場合に電流が流れ、素子の両端の電圧を一定に保つような非直線特性を持っている。
(2) 避雷器として求められる条件は、動作電圧が適切で、応答時間が[B]こと及び静電容量が[C]、信頼性が高いことなどである。最近では、サイリスタなど半導体素子を用いたものが多く用いられている。


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 正直に白状しますと、私はこの問題を見るまで、サージ防護デバイスのことはよく知りませんでした。この問題はサイリスタですが、最近ではサージ防護デバイスとしてサイリスタよりもガス入り放電管などが多く使用されているようですので、こちらについても説明します。

[1]直撃雷と誘導雷

 世の中に、雷ほど恐ろしい電気現象はありません。これは、通信経路が空間である無線も、電線である有線も、はたまた電力線でも同じことです。制御が効かない自然現象である上に、短時間に莫大なエネルギーを放出しますから、機器を防御する必要があります。
 ところで、雷害には大きく分けて2つのパターンがあります。一つは、「直撃雷」で、これはまさにアンテナや電話線、電力線に直接雷が落ちるものです。これを食らってはたまりません。電灯線に落ちれば電気製品は丸焦げになりますし、アンテナに落ちたらリグも丸焦げになるでしょう。雷は逃げ場を求めて、電灯線に廻り込み、周囲の電化製品に被害を与えるかもしれません。
 もう一つは、「誘導雷」というもので、これは雷放電に近い場所で、電磁誘導により誘起する電流・電圧のことです。直接、雷の電荷を受けるわけではないので、被害はさほど大きくはなりませんが、接続されているのが電子機器の場合、半導体素子は数10〜数100 [V]でも破壊されますから、これも防護しなくてはなりません。

[2]サージ防護デバイスとは何か

 そこで、雷から誘導した電圧・電流を、機器の中を通さず、地球に逃がしてやるようなデバイスが必要になります。これを「サージ防護デバイス」といい、Fig.HC0208_aの左上のように、アンテナと受信回路の間に、グランドと並列に挿入します。無線家になじみの用語では「避雷器」です。
 なお、JISでは、サージ防護デバイスを下記のように呼び分けています。
 ・高圧電力線用…避雷器
 ・低圧電力線や通信線用…SPD(Surge Protective Device)
ここで扱うのは、通信線用のサージ防護デバイスに限られますから、JISに倣い、SPDと呼ぶことにします。
 一般に、通信用のSPDに要求される条件は、
(1) 動作電圧が適切であること
サージで機器が故障せず、なおかつ通常送受信時等に掛かる程度の電圧では動作しないように、設定された動作電圧でなければなりません。
(2) 動作が高速であること
サージ電圧が上がり始めてから保護動作に移行するのに時間が掛かっていては、その間にサージ電圧が機器側に通り抜けてしまいます。
(3) 静電容量が小さいこと
静電容量が大きいと、通常時、アンテナに誘起した高周波電流がグランドに逃げてしまい、感度が低下(受信時)してしまいます。
(4) 信頼性が高いこと
雷は何度も襲ってきますから、いざという時、故障していては話になりません。
といったことが挙げられます。
 通信用のSPDとして、よく用いられるものとしては下記の3種類があります。
・サージ防護サイリスタ(TSS)
・金属酸化物バリスタ(MOV)
・ガス入り放電管(GDT)
それぞれに特徴があり、使い分けられています。回路図記号は、Fig.HC0208_aのように決められています。ここでは、この順に、構造や動作原理、特徴を見て行きます。
Fig.HC0208_a サージ防護デバイス
Fig.HC0208_a
サージ防護デバイス

[3]サージ防護サイリスタ(TSS)

 まず、サイリスタは、Fig.HC0208_b左のように、PN接合が3つ直列になったような構造をしています。ここに、順方向に電圧をかけ、その電圧を徐々に上げていったのが、同図の右半分の曲線(の青線)です。
Fig.HC0208_b サイリスタの構造と特性
Fig.HC0208_b
サイリスタの構造と特性
 サージの保護に必要なのは、低い信号電圧に対しては反応しないものの、高い電圧が掛かると短絡に近い状態に変化するデバイスです。
 Fig.HC0208_bの右図のように、サイリスタのA-K間の順方向はまさにそのような特性を持っていて、ある電圧を超えると、一気に両端電圧が下がり、その後は電流をどんどん増やしても電圧はあまり上がりません
 逆方向の特性は、通常の接合ダイオードとよく似た特性であり、電圧を上げて行くと、降伏現象が起こります。
 サイリスタの特徴として、一般に、
 ・応答(サージが掛かり始めてから電流が流れるまで)が高速である
 ・一定電流を超えると、両端電圧は下がる
 ・半導体なので、一般に信頼性は高い
 ・静電容量は大きめである
といったことが挙げられます。
 実は、サージ保護デバイスとして用いるには、これでは不十分です。そもそも、雷サージがサイリスタの順方向に現れる保証などどこにもありません。つまり、逆方向電圧が掛かった時、降伏電圧まで行ってしまっては、破壊してしまいます。
 そこで、実際の防護デバイスとしては、サイリスタをもう一つ用意して、Fig.HC0208_b左下のように逆方向に並列接続し、双方向のサージ電圧に対して保護できるようにしたものが、製品化されています。

[4]金属酸化物バリスタ(MOV)

 金属酸化物バリスタは、用途が非常に広いサージ防護デバイスです。耐電圧と耐電流を広い範囲でコントロールできるため、電力線のサージ防護にも用いられています。
 構造は、Fig.HC0208_cのように、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物を焼き固めたものを電極でサンドイッチした形になっています。
 金属酸化物は、粒界と呼ばれる部分の粒と粒が接している部分の電気的特性が非線形で、電圧をかけると、急に電流が流れ出す特性を持っており、この性質を利用した素子です。
 金属酸化物の断面積の大小で放電電流の値が、電極間の距離か粒径で保護電圧の値がコントロールできます。
 この素子の特徴としては、
Fig.HC0208_c 金属酸化物バリスタの構造と特性
Fig.HC0208_c
金属酸化物バリスタの構造と特性
 ・応答は(他の素子程)高速ではない
 ・電流の増加とともに電圧の上昇を抑えることができる
 ・様々な耐電圧、耐電流のものを作ることができる
 ・静電容量は大きめである
 ・無極性
といったことが挙げられます。
 静電容量が大きめなのは、構造がコンデンサのような形をしていることからも想像できます。商用電力線は50Hz又は60Hzですから、静電容量の大小はあまり問題になりません。
 また、Fig.HC0208_c右の電圧−電流特性(グラフは順方向側ですが、無極性素子なので、逆方向も同じ特性)のように、電流が増加した時に、サイリスタ(この後述べるガス入り放電管も)とは異なり、両端電圧が下がらないため、雷サージの電力がこの素子で熱になります。そのため、他の素子程小型にできません。

[5]ガス入り放電管(GDT)

 ガス入り放電管は、通信用途に適したサージ防護デバイスです。単純な構造でありながら、小型で比較的大電流の放電に耐えるので、よく用いられます。
Fig.HC0208_d ガス入り放電管の構造と特性
Fig.HC0208_d
ガス入り放電管の構造と特性
 その構造と特性はFig.HC0208_dのようになっています。
 絶縁体容器の中で、電極を対向させた間に、ガスを封入したシンプルな構造です。電極間の電圧が上がってくると、アーク放電が起こります。アーク放電はいわば短絡状態に近いので、電極間の電圧は一気に下がり(通常10V以下)ます。放電電流が大きくても、電極間電圧が小さいので、電力はさほど発生せず、小型の割に大電流を流せる利点があります。
 アーク放電が開始される電圧は、中に封入するガスの種類や電極表面に塗布する物質の種類等でコントロールします。
 この素子の特徴としては、
 ・応答が高速
 ・一定電流を超えると、両端電圧は下がる
 ・体積の割に大電流を流せる
 ・静電容量は小さい
 ・無極性
といったことが挙げられます。
 静電容量は、電極が対向しているので大きいようにも思えますが、間に挟まれているのは誘電体ではなくガス(比誘電率≒1)ですし、コンデンサのように電極間も狭くないので、数pF程度です。高周波用には、ガラス容器の中に針のような電極を2本突き合わせた構造の物もあり、静電容量は電極とガスの設計でさらに小さくできます。
 MOV同様、無極性素子なので、Fig.HC0208_dのグラフは逆方向にも同じ特性です。

それでは、解答に移ります。
 …避雷器はある規定電圧以上の電圧に対して動作するようにします
 …応答速度は短い方が避雷器としては高性能です
 …静電容量は小さくないと、高周波信号が減衰してしまいます
となりますから、正解はと分かります。