□ H25年12月期 A-19  Code:[HH0802] : 実効長or実効高、電界強度、周波数からアンテナ誘起電圧等を計算
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更新履歴
2019年
12/18 12月期問題頁掲載
09/02 08月期問題頁掲載
04/13 04月期問題頁掲載
H2512A19 Counter
A-19 周波数が14 [MHz]の電波を理想的な半波長ダイポールアンテナで受信したとき、これに接続された受信機の入力端子の電圧が96 [mV]であった。この電波の電界強度の値として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、アンテナと受信機入力回路は整合しているものとする。
10 [mV/m] 14 [mV/m] 28 [mV/m] 42 [mV/m] 96 [mV/m]

 この問題を解くには、アンテナの実効長・実効高という概念を理解しておかなければなりません。概念といってもさほど難しいものでもありません。

[1]アンテナの実効長・実効高とは何か

 まず、Fig.HH0802_aを見て下さい。アンテナにはその動作状態で、垂直系のアンテナと、水平系のアンテナがありますが、普通、水平系には「実効長」、垂直系には「実効高」という用語を用います。
 水平系のアンテナを例に取ると、アンテナに給電すると、そのアンテナの特性で決まる電流分布が生じます。これは、通常一様に分布することはなく、場所によって電流が変化しています。例えば、λ/2ダイポールに中央部から給電すれば、電流は給電部で最も強く、末端に行くに従って正弦的に減少します。
 これを、全長に渡って一様な電流が流れている分布、つまりどこを取っても同じ電流が流れている分布だと仮定すると、素子の長さはいくらになるか、という問題です。
Fig.HH0802_a 実効長・実効高の考え方
Fig.HH0802_a
実効長・実効高の考え方
 Fig.HH0802_a左の図に描いたように、エレメント長の全域にわたってある電流分布をしているアンテナが、全く一定な分布を持っている仮想的なアンテナと同じとすれば、この仮想的なアンテナの全長はいくらになるか、ということです。
 垂直系のアンテナに関しても、全く考え方は同じです。アンテナの実際の高さと、電波を送受信するのに、実質的に必要な高さが異なることを言っています。

[2]電界強度と実効長(高)、誘起電圧の関係

 実効長や実効高を求めて、何の役に立つんだ、と思われるかもしれませんが、実は、ある電界強度の中にこのアンテナを置いた時、アンテナに誘起する電圧が微分も積分も要らず、掛け算だけで出るのです。電界強度の単位は[V/m]なので、実効長[m]または実効高[m]を掛けると、アンテナの誘起電圧 [V]になります。それに、長い(高い)アンテナなのに、実効長/実効高が短い/低いということは、そのアンテナは実際には電波が出ている部分(高周波電流が流れている部分)があまりない、ということが分かります。
 λ/2ダイポールやλ/4垂直接地といったアンテナの実効長・実効高は、電流分布が単純なので、紙と鉛筆で計算できます(電流分布の導出と微積分が必要なので、証明は行ないません)。λ/2ダイポールの実効長がλ/π [m]で、λ/4垂直接地の実効高がその半分のλ/2π [m]です。
 電界強度E [V/m]と、アンテナの誘起電圧V [V]、それにこの実効長L [m]の関係は、
 V=EL …(1)
という、非常に単純な関係です。λ/2ダイポールの場合はL=λ/π、λ/4垂直接地の場合はλ/2πを代入すればよいだけです。

 実効長・実効高と似た概念に、アンテナの「実効面積」という考え方があります。これは、空間を流れている受信電波のエネルギーをどれだけ受信機に伝達できるかを面積で表したものです。アンテナと受信機のインピーダンス整合までを考慮に入れた、エネルギー伝達の効率とも呼べるものですが、アマチュアでは出題されたのを見たことがありません。

それでは、解答に移ります。
 これまで出題されていたのは、周波数(=波長)と電界強度が与えられていて、誘起電圧を求めるものでした。この問題は、周波数と誘起電圧から、電界強度を求めるものです。オームの法則を習った時、電圧と電流から抵抗を求めるか、電圧と抵抗から電流を求めるか、という程度の見方を変えた問題で、考え方さえ分かれば難しくありません。但し、従来の問題と同様、「アンテナと受信機入力回路は整合しているものとする」の文言の意味に、十分にご注意下さい。
 まず、理想的な(この「理想的な」の意味は、「受信電力が熱に変換されてしまうロスがない」という意味に解して構いません)λ/2ダイポールアンテナの実効長Lはλ/πですから、14 [MHz]では約6.82 [m]となります。
 一方、受信機の入力端の電圧Vが96 [mV]なので、すぐに(1)式を変形すれば、求める電界強度Eが出るはずだ…とやると、間違えてしまいます。なぜなら、(1)式のVはあくまでも負荷をつながない時のアンテナ端の誘起電圧であって、整合負荷を接続すれば、電圧は半分になるはずです。つまり、受信機を接続したコネクタの部分で96 [mV]出ているのなら、コネクタを外せば、開放されたアンテナ端では倍の192 [mV]が出るはずです。
 つまり、Vに代入すべきなのはこの192 [mV]なのです。後は計算です。(1)をEについて解いて、各値を代入すれば、
 E=V/L=192/6.82≒28 [mV]
従って、が正解と分かります。

 「アンテナとマッチングが取れた受信機を繋ぐと、電圧が半分になるのは分かった。じゃぁ、残りの半分はどこへ行ったのか」という疑問が湧きませんか? 実はここからは、1陸技の無線工学Bへの入口です。
 アンテナと受信機はマッチング(整合)が取れているので、アンテナに生じた電力は、最大限、受信機に届けられます。ただ、考えてみると、電力を受信機に届けるためには、アンテナにも電流が流れなければなりませんアンテナに電流が流れれば、電波として空間に放射されてしまいます。
 つまり、アンテナで受信した電力の半分は受信機に(途中のケーブル等に損失がなければ)ロスなく届きますが、残りの半分は、アンテナから再放射されている、というのが物理的な解釈です。ダイポールだろうが、オフセットカセグレンアンテナだろうが、アンテナの種類や形状には無関係です。受信した電力を半分逃がしている、というのは何とももったいない話ですが、こればかりは物理法則で決まっているので、リンゴが地面から木に「落ち」ない限りは、改善できません。