□ H28年12月期 A-09  Code:[HD0104] : 雑音指数についての説明・計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2812A09 Counter
無線工学 > 1アマ > H28年12月期 > A-09
A-09 次の記述は、増幅回路の性能を示す雑音指数について述べたものである。このうち正しいものを下の番号から選べ。
雑音指数は、雑音が連続性雑音であるとき、その平均レベルを表したものである。
入力側の信号対雑音比をA、出力側の信号対雑音比をBとしたとき、雑音指数は(A/B)で表される。
雑音指数は、任意の雑音の電力が、ある温度の抵抗体が発生する熱雑音の電力に等しいときの温度を表したものである。
雑音指数は、自然雑音、人工雑音など空間に放射されている電波雑音の強度を表したものである。

 これまで、この分類の問題は、雑音指数の計算問題でした。今回(2016年12月期)はじめて用語・知識の問題として出題されましたので、もう一度復習しておきます。

[1]増幅回路の雑音(ノイズ)とは?

 まず、この問題を解く前に、増幅回路の雑音について考えてみます。雑音指数の定義式を暗記してしまえば、問題はすぐに解けてしまいますが、意味も分からず暗記しても、すぐ忘れてしまいます。他の問題にも役に立つ、増幅器と雑音について考えておくことが、結局は早道です。
 増幅回路(アンプ)の雑音(ノイズ)を考える場合、入力には信号分Siとノイズ分Niが混じっています。すなわち、入力信号のS/NはSi/Niです。
 今、アンプの利得がα倍だとすると、出力の信号分So
 So=αSi …(1)
となります。入力のノイズもまたα倍されますから、αNiのノイズ分が出てきます。出力のノイズを計算するには、これだけでいいように思われますが、アンプ自身もノイズを発生することを忘れないようにしなければいけません。
Fig.HD0104_a 多段アンプとノイズの増幅
Fig.HD0104_a
多段アンプとノイズの増幅
 実際の送受信機等やオーディオアンプでは、Fig.HD0104_aのように多段でシステムを構成しますが、一気に見てしまわないで、1段ごとに考えてみましょう。
 まず、アンプ自身が発生するノイズをNEとすると、出力のノイズ分Noは、
 No=αNi+NE …(2)
(この式は正確ではありません。正確には√{(αNi)2+NE2}でなければなりませんが、ここでは、「ノイズは単純に足されるもの」というように考えます。)となります。ここで、入力信号のS/Nと出力信号のそれを比べてみると、
 [入力] Si/Ni > αSi/(αNi+NE) [出力] …(3)
 つまり、(3)式からは、(アンプ自身のノイズがゼロでない限り)アンプを通って出てきた信号のS/N比は、必ず入力のS/N比よりも小さくなることが分かります。アンプは、(ノイズのみをフィルタリングする機能を持たせない限り)入ってきた信号もノイズも区別なく増幅するので、S/N比は変わらないはずですが、アンプ自身の発するノイズ、という厄介なものを抱えているため、出力のS/Nは入力のS/Nよりも悪くなってしまう、ということです。
 UHF帯などで、ノイズすれすれの信号を拾っている場合、いくら途中の段でゲインを上げても、S/Nは良くなりません。高周波増幅段で発生した雑音も増幅してしまうからです。これを防ぐには、フロントエンド(受信機の最もアンテナに近い)のアンプ自身が発するノイズが、徹底的に少なくなるようなデバイスを選択する以外にない、と(3)式は言っているのです。

[2]雑音指数(ノイズフィギュア、NF)とは?

 では、この「S/N比が劣化してしまう度合い」はどうやって示せばよいでしょうか? 実は、高周波や広帯域アンプでよく聞く「雑音指数」とはまさにこの「入出力でS/Nが劣化する度合い」なのです。その定義は、以下の通りです。
 NF=(入力のS/N比)/(出力のS/N比)
   =(i/Ni)/(o/No) …(4)
 電気の世界では、S/N比はデシベルで表すことが多いので、雑音指数もデシベルで表すことがほとんどです。(4)式の対数を取れば、
 20logNF=20log(Si/Ni)20log(So/No) …(5)
となります。赤字は出力のS/Nのデシベル表示、青字は入力のS/Nのデシベル表示ですから、デシベルで表した雑音指数は、入出力のS/Nの差、ということになります。
 多段で構成されたアンプの場合は、各段でのS/Nの劣化の合計、ということになります。

それでは、解答に移ります。
連続性の雑音の平均レベルは、単に雑音電圧又は電力の平均値であり、雑音指数ではありません。
この文は、雑音指数の定義式(4)そのものの説明ですからこれが正しい記述です。
この文は、等価雑音温度の説明です。
通常は、空間に放射された電波雑音の強度を表すのに、雑音電界強度を用いますから、この文は雑音指数の説明ではありません。

従って、正解はと分かります。