□ H29年04月期 A-06  Code:[HC0209] : ある電圧-電流特性を持つPN接合ダイオードを直列にした場合の電圧-電流特性
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2904A06 Counter
無線工学 > 1アマ > H29年04月期 > A-06
A-06 図1に示すように、電気的特性が同一のダイオードDを2個直列に接続したときの電圧電流特性(V-I特性)を表すグラフとして、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、1個のDの電圧電流特性(VD-ID特性)を図2とする。
問題図 H2904A06a
Fig.H2904A06a
問題図 H2904A06b
Fig.H2904A06b
問題図 H2904A06c
Fig.H2904A06b

 デバイス単体の特性グラフから、それを組合せた時の全体の特性を導き出す、という問題です。複雑な特性のデバイスだと、考えるのも大変ですが、示されているのはモデル化された、単純な特性のダイオードなので、ポイントを押さえれば解くのは容易です。

[1]素子をモデル化する、ということ

 この問題では、ダイオードをモデル化しています。回路シミュレータ等でよく用いられる用語の、「モデル化」というのは、回路を構成する個々の素子を、簡単な関数で表せる(=計算しやすい)特性だ、としてしまうことです。問題文の中に、よくある仮定として「電源の内部抵抗は0とする」とか、「浮遊容量は無視できるものとする」というのも「モデル化」の例です。
Fig.HC0209_a モデルダイオードの特性
Fig.HC0209_a
モデルダイオードの特性
 この問題で問われているダイオードは、左のような特性です。ある順方向の電圧VTを境に、それより低い電圧(逆方向も含む)では、電圧に対して電流は常にゼロTより高い電圧では、電圧に対して直線的に電流が増加しています。
 つまり、このデバイスは、左図の左下にあるようなかけ方の電圧に対して、2つの動作領域を持っていることになります。
 もちろん、現実のダイオードは、逆方向電圧を上げて行けば、どこかでブレークダウンしますし、VTを超える領域も、温度などに依存する指数関数で表され、決して直線ではありません。ですが、モデル化、というのは上にも書いたように、現実を「単純化」することです。
 ここから、この素子を複数接続して「回路」とした時、そのひとまとまりとしての特性はどうなるのか、という話になって行きます。この時、上で考えた「2つの動作領域」に分けて考えると、考えやすくなります。

[2]直列にしたら、掛かる電圧は半分、電流は同じ

 上で述べた素子を、同じものを直列に接続したら、全体としてどういう特性になるのか、ということを調べます。複数の素子を扱う時は、上のようなモデル化の他に、素子間のバラつきがない、という理想的な仮定が(通常は)導入されます。
 同じ特性の素子が直列なのですから、(直列にしたものの)両端に電圧Vを掛けたとすると、一つの素子に掛かる電圧は、常にV/2です。抵抗やコンデンサ等の「線形」素子なら直感的に分かりますが、ここで扱っているような、電圧と電流が比例関係にない(要はV-I特性が「曲がっている」)素子でも同じです。
 そこで、まずVTがどうなるか、を考えてみます。深い逆バイアス状態から徐々に電圧を上げて行くと、各々の素子に電圧VTがかかった時に電流が流れ始めます。この時、全体としてはV=2VTとなっていますから、Fig.HC0209_b左のように「折れ曲がり」の点は2VTの所に来ます。
Fig.HC0209_b 同一素子の直列特性
Fig.HC0209_b
同一素子の直列特性
 Fig.HC0209_aでは素子は2個ですが、これがn個になっても、全体の閾値がnVTになる(素子にバラつきがない限り)ことは容易に想像できると思います。
 次に、引続き、電圧を上げて行き、電流が流れ始めてからの直線の傾きがどうなるか、考えてみます。各々の素子を流れる電流は共通ですから、同じです。個々の素子の特性で、この領域での電圧変化ΔVDに対する電流変化ΔIDをSDとする、つまり、
 SD=ΔID/ΔVD …(1)
として、直列(ここでは2直列)にした時の回路としての電流変化をΔI、電圧の変化をΔVとすると、
 ΔI=ΔID …(2)
 ΔV=2ΔVD …(3)
となるので、回路としての電圧変化ΔVに対する電流変化ΔIをSとすると、
 S=ΔI/ΔV=ΔID/2ΔVD …(4)
となります。これは、Fig.HC0209_bのグラフで言うと、太い赤のラインの傾きで、個々のデバイスが持っている傾きΔI/ΔV(同図の紫)の半分であることを示しています。もちろんこれも、素子数がn個になったとしても、全体のこの部分の傾きが1/nになることは容易に分かります。
 見方を変えてみると、1つの素子にVTより高い電圧が順方向にかかっている場合、ΔID/ΔVDは一定なので、その逆数ΔVD/IDも一定で、これを「抵抗分RD」と考えることができます。抵抗なので、n個直列に繋げば、全体の合成抵抗はnRDとなります。Fig.HC0209_bのグラフの赤のラインは、合成した回路は電圧の変化に対して電流の変化が元の素子より緩やかであることを示していますから、2個直列にして抵抗が倍になった、と理解することができます。

それでは、解答に移ります。
 まず、問題のグラフからの読みで、個々のダイオードのVT=0.5 [V]で、電圧変化に対する電流変化ΔID/ΔVD=1 [A/V]です。同じ素子を2個直列にすると、全体のVTが2倍の1.0 [V]、傾きが1/2の0.5 [A/V]となるので、このようになっているが正解と分かります。