□ H29年08月期 A-12  Code:[HE0509] : FM変調における最大周波数偏移と信号の最高周波数、占有周波数帯幅の関係
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H2908A12 Counter
無線工学 > 1アマ > H29年08月期 > A-12
A-12 アマチュア局において435 [MHz]帯でFM(F3E)通信を行うとき、最大周波数偏移を5 [kHz]、変調信号は最高周波数が3 [kHz]の正弦波としたとき、占有周波数帯幅の値として、最も近いものを下の番号から選べ。
 8.0 [kHz]
12.5 [kHz]
16.0 [kHz]
20.0 [kHz]
25.0 [kHz]

 この問題を見た時、2アマ以下で出題されていたような気がしました。1アマではよく出る、FM変調につきものの、変調指数等の扱いは出てきませんが、FMの占有周波数帯幅の公式を覚えていないと解けません。難しい公式ではありませんので、すぐ覚えられると思います。

[1]FM変調の帯域幅

 まず、この問題を解くのに、覚えていなければならないのがFM変調の占有周波数帯幅の計算式です。最大周波数偏移をΔfm、信号波の最大周波数をfsとすると、占有周波数帯幅Wは

 W=2(Δfm+fs) …(1)

となります。
 難しいことを言うと、この式は近似式です。FM変調の側波帯はAM変調のように有限範囲には収まらず、原理上無限に広がるので、変調波のエネルギーがこの帯域の中にほぼ全部(法の定義では99 [%]以上)収まっている、という範囲です。係数2は、搬送波周波数を中心に、片側にB=Δfm+fsの幅で両側に広がっている、という意味です。つまり、変調すると、搬送波の上側か下側どちらかに偏ってエネルギーが分布するのではなく、AM変調のように、幅Bで搬送波の上下両側に均等に分布する、ということなのです。

[2]変調指数について

 FMは、振幅に応じて周波数が変化しますから、どの程度の振幅で、どれだけの周波数偏移にするのかを、変調器の設計時に決めておかなくてはなりません。また、受信側でもどれだけの周波数偏移でどれだけの振幅を得るのかを送信側と合わせておかないと、音が大き過ぎたり小さ過ぎたりします。
 最大振幅で、どれだけの周波数偏移を得るのか、を最大周波数偏移Fmといいます。変調指数mFMというのは、最大周波数偏移を変調信号周波数fsで割ったもの、すなわち、

 FM=Fm/fs …(2)

と定義されます。
 変調指数は、変調器・復調器の設計の際に重要なパラメータとなります。占有周波数帯幅、得たい音質などの要求事項から決められる設計事項となります。

[3]FM変調の帯域幅(余分な知識)

 ここからは、1アマの試験には余分かも知れない知識です。
 まず、(1)式を「カーソンの式」と呼びます。
 FM変調波のスペクトルを定量的に表現するのはなかなか難しく(以下、その言い訳ですが)、搬送波角周波数をωC [rad/s]、信号波の角周波数をωS [rad/s]、変調指数をmとすると、振幅がAでFM変調された変調波Sは、

 S(t)=Acos(ωCt+msinωst) …(3)

と表されます。三角関数の角度部分にさらに時間変化する三角関数が入っており、これを周波数軸上に表現するには、ベッセル関数、という特殊関数にお出ましいただかなければなりません。
 FM変調の帯域幅を(実測ではなく机上で)求めるのに、いちいち特殊関数の数表を引っ張り出して周波数成分について積分をして電力を求め…という計算が面倒なので、カーソンの式が使われるわけです。(普通は手計算なんてせずに、PCで簡単に積分してしまうでしょうが…)
 但し、カーソンの式が使えるのは、変調指数mが1程度までと言われていて、それ以上になると、スペクトルが広範囲に散るため、きちんと積分しなければなりません。

それでは、解答に移ります。
 (1)式のΔfmに5 [kHz]を、fsに3 [kHz]をそれぞれ代入すれば、占有周波数帯幅W [kHz]は、
 W=2(Δfm+fs)=2×(5+3)=16 [kHz]
となりますから、が正解と分かります。
 H29年8月期初出、と記録しておきますが、この問題は電話級の時代から2アマでも出題された記憶があり、問題としては古い問題です。ただ、公式が簡単なために忘れてしまうと解けませんので、ご注意を。