□ H30年04月期 A-03  Code:[HA0701] : トロイダルコアに巻いた2巻線の各インダクタンスと結合係数、合成インダクタンス等の計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3004A03 Counter
無線工学 > 1アマ > H30年04月期 > A-03
A-03 図に示すように、環状鉄心に巻いた二つのコイルA及びBを接続したとき、端子ad間のインダクタンスの値として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、Aの自己インダクタンスは16 [mH]、Bの巻数はAの1/2とする。また、磁気回路に漏れ磁束はないものとする。
 4 [mH]
 8 [mH]
12 [mH]
18 [mH]
24 [mH]
問題図 H3004A03a
Fig.H3004A03a

 2つのコイルが磁気的に結合して巻かれている時、合成インダクタンスを求める公式は、覚えなくてはなりません。暗記が苦手でも、オームの法則や、LCの共振周波数を求める公式と同様、こればかりは仕方ありません。

[1]磁気的に結合した2つのコイルのインダクタンス

 自己インダクタンスがLAのコイルAとLBのコイルBの合成インダクタンスLは、次の式で与えられます。
 L=LA+LB±2M …(1)
 ここで、Mは「相互インダクタンス」といわれるものです(Mの係数2を忘れないように)。ちなみに、巻き方の形態はトロイダルコアに巻かれたような形状になっていても、棒状のコアに巻かれたようになっていても、(1)式は同じです。
 注意したいのはその複号で、コイルAとコイルBに同じ向きの電流を流した時、両者が作る
 ・磁力線の向きが同じなら
 ・磁力線の向きがなら
となります。問題の図のコイルの巻き方向が違っていたりするので、注意して図を良く見て下さい。この問題の図では、Fig.HA0701_aのように2つのコイルに同じ電流を流したとすると、トロイダルコアに沿っての磁力線の向きは逆なので、式(1)の複号は−を取ります。
 ところで、この「相互インダクタンス」とやらをもう少し詳しく見てみましょう。
Fig.HA0701_a 結合した2つのコイル
Fig.HA0701_a
結合した2つのコイル

[2]相互インダクタンスとは何か

 相互インダクタンスというのは、2つのコイルが磁気的に結合することによって生じるインダクタンスと考えていいでしょう。ではもう少し突っ込んで、「磁気的に結合することによって生じるインダクタンス」とは何でしょうか? そもそも、コイルが「磁気的に結合する」とは、AとBの2つのコイルがあるとすると、これらのコイルに電流(交流)を流すと、Aで生じた磁力線がBに誘導し(起電力を生じる)、また、Bで生じた磁力線もAに誘導する、ということです。
 このため、コイルは結合がゼロでない限り、抵抗やコンデンサの直列・並列合成のように、合成インダクタンスが単純には計算できないのです。
 相互インダクタンスは、複数のコイル間の結合なので、結合の度合いが強いか弱いかによって、その値が変わってきます。では、「結合が強い(結合が密)」とか「結合が弱い(結合が疎)」というのは、何によって決まるのでしょうか?
 それは、一方に流れる電流によって生じた磁力線が、他方のコイルにどれだけ鎖交したか、で決まります。つまり、お互いに相手の発生させた磁力線がすべて自分と鎖交するなら結合は最も強く、全く鎖交しないなら結合は0ということになります。
 そこで、この結合の強さという概念を「結合係数」という定数k(0≦k≦1)で表します。結合係数が1、ということは相手の発生させた磁力線がすべて自分と鎖交すること、結合係数が0、ということは、相手の磁力線が全く自分に鎖交しないことを意味します。
 ここで、相互インダクタンスMと結合係数の関係は、
 M=k√(LA・LB) …(2)
となります。Mがこのようになる理由について、数式での導出は行いませんが、次のように考えます。
 コイルAに変化する電流が流れて、自らに発生させる起電力とコイルBに発生させる起電力の比と、その逆、及びコイルA・B各々の巻き数比×結合係数kの関係から、巻き数比を消去すると(2)が得られます。
 さて、問題を解くには、各コイルの自己インダクタンスと結合係数が与えられていますから、(2)を(1)式に代入すれば、
 L=LA+LB±2k√(LA・LB) …(3)
となり、合成インダクタンスが求められます。

それでは、解答に移ります。
 過去、この問題が出た時は、コイルA・Bの各々のインダクタンスの値と結合係数が与えられていて、トータルのインダクタンスを計算する問題でした。ところが、今回(平成30年4月期)は、ひねりが加わりました。インダクタンスが与えられているのはコイルAのみで、コイルBについては巻き数が示されているだけ。結合係数は明示されていません。これで、どうやって解くのか…。
 まず、簡単な話から。結合係数は与えられていませんが、問題文には「磁気回路に漏れ磁束はない」と書いてあります。結合係数の本質的な意味は、2つのコイルがお互いの磁束を共有しているかどうかの度合い、ですから、漏れ磁束がないなら、コイルA・コイルBは完全に磁束を共有していて、結合係数k=1となるはずです。
 コイルBのインダクタンスは、コイルAのそれから計算できます。ここで使う知識は、巻き数以外(コアの材質、1ターンの面積など)に違いがないコイルであれば、インダクタンスは巻き数の2乗に比例する、という事実を使います(このことについては、H1908A02の解説をご参照下さい)。
 この問題では、「コイルBの巻数はコイルAの1/2」と書かれています。コイルAのインダクタンスLA=16 [mH]ですから、コイルBのインダクタンスLBは、以下のように求められます。
 LB=LA×(1/2)2=4 [mH]
 また、(3)式の複号のどちらを使うのか、を考えます。端子a→端子dの向きに電流を流すと考えると、コイルAが作る磁界は、問題図のコアの時計回り、コイルBが作る磁界は反時計回りで、コイルA・Bの作る磁界はお互いに反対向きです。なので、複号は−を取ります。
 ここまでくれば、あとは(3)式に、LA=16 [mH],LB=4 [mH],k=1を代入(複号は−)すれば、
 L=16+4−2×1×√(16×4)=4 [mH]
となりますから、が正解と分かります。
 くれぐれも、図をよく見て、2つのコイルが作る磁力線が、強め合う方向(複号が+)なのか、弱め合う方向(複号が−)なのかを間違えないようにして下さい。