□ H30年04月期 A-16  Code:[HF0507] : 周波数偏移通信(F1B:RTTY)の動作原理
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3004A16 Counter
無線工学 > 1アマ > H30年04月期 > A-16
A-16 次の記述は、アマチュア局の24 [MHz]以下の周波数帯において使用される、周波数偏移(F1B)通信(RTTY)の動作原理等について述べたものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。
発射される電波は、電信符号のマークとスペースに対応して、指定周波数などを基準にそれぞれ正又は負へ一定値だけ偏移させる
マークとスペースの切替え(偏移)は、搬送波を直接キーイングするFSK(Frequency Shift Keying)方式や、可聴周波数によりキーイングした信号を、電話送信機のマイクロホン端子に入力して送信するAFSK(Audio Frequency Shift Keying)方式がある。
電波は、電信符号のマークかスペースのどちらかが常に発射されているため、受信機側においてはAGCが有効に動作し、周期性フェージングの影響を軽減できる。
マークかスペースのどちらかの周波数を固定し、他方の周波数の変位量を小さくするほど信号対雑音比(S/N)が」改善されるが、占有周波数帯幅は広くなる。
復調は、2個の帯域フィルタ(BPF)によるマークとスペースの分離が可能であるが、近年ではコンピュータのソフトウェアによる復調が使われることが多い。

 HFのRTTYの問題は、今回(H30年4月期)が初出です。RTTYをメインでやっている、という方なら簡単だと思いますが、1アマは全ての電波形式に出られる資格なので、免許を受けていない通信モードについても知っておく必要があります。
 とはいえ、SSBやFM等の知識があれば、解けない問題ではないと思います。

[1]RTTYとは何か?

 RTTYはRadio Tele TYpeの略です。昔の電動タイプライターで、タイプ(キーボードを打つ)部分と文字を印字する部分を通信で結んだもの、と考えて下さい。有線で送るのがTele Type、無線で送るのがRadio Tele Typeというわけです。(なお、電信を使う電報とは違います。電報は人間が受信して文字にしますが、RTTYは機械受信です。)
 アマチュアならパケット通信やD-Star、一般にはインターネットや衛星通信網が発達した今の時代においては、パソコンのキーボードでタイプした文字が地球の裏側で即時に文字として印刷することなど、何の困難もない話ですが、高速通信ができなかった時代に、いかに文字を早く正確に送るか、を工夫した通信方式です。
 符号は、電信(CW)と似ていて、2値符号です。違うのは、CWは可変長符号(文字によって長さが違う)ですが、RTTYは固定長符号(1文字あたりのビット数が一定)です。HF帯のRTTYでは、狭帯域のFSK(周波数シフトキーイング)を使用して2値の符号を送ります。2値のそれぞれの値のことを、マークスペース、と呼び、マークとスペースで異なる2周波数を切れ目なく交互に発射するので、Frequency Shiftと呼ばれるわけです。アマチュアバンドではSSBモードで聞くと、「ピロピロ」という音が連続して聞こえます。(ここで、「スペース」といっても電波が出ていないわけではないので、ご注意下さい。)
 なお、この問題で述べられているのは、アマチュアのRTTYで、プロの通信で使われている規格とは、周波数シフト量など一部の仕様が異なるのでご注意下さい。

[2]RTTY送信側の構成…AFSKとFSK

 Fig.HF0507_aにHFのSSB送信機を使った簡単なRTTY送信側の構成を示します。この図はAFSKとFSKという2つの方式を同じ図に書いたもので、普通は、どちらか一方の方式が使用されます。
 まず、AFSKについてですが、AFSKというのはAudio Frequency Shift Keyingの略で、分かりやすく言うと、SSB送信機のマイクの代わりに、2つの周波数(RTTYでは2125 [Hz]と2295 [Hz])を発振する正弦波発振器を接続したもの、と考えられます。マークとスペースの符号により、どちらの周波数を出力するかを高速に切替えられれば、RTTYの電波が得られます。マークとスペースの周波数差は、170 [Hz]と決められています。
 この方法は、SSB送信機と発振器があれば、すぐにRTTYの電波が出せることが利点ですが、発振器に歪みや周波数の不安定があると、そのままそれらが電波に乗って出てしまうので、要注意です。
Fig.HF0507_a RTTY送信側の構成
Fig.HF0507_a
RTTY送信側の構成
 一方、FSKは170 [Hz]異なる局発の周波数を外部から切り替えて、RTTY波を得ようとするものです。この時は、前述のマイクや発振器は接続しません。
 この方法は、送信機がRTTYモード専用の入力(周波数切替の)を持っていることが必要になります。AFSKとは違い、外部に接続する装置により、歪みや周波数の不安定が送信電波に持込まれることはありません。
 RTTYは狭帯域の周波数変調の一種なので、電波が出ている間は振幅が不変です。従って、FM変調の特徴がそのまま当てはまり、受信側では振幅が一定なので、ノイズの影響を受けにくい、とか、AM受信機を使う場合はAGCが効きやすい、といった特性を持ちます。また、変調速度(単位時間あたりに送る文字数)をあまり上げなければ、電信よりも狭帯域にできる、という利点もあり、これがHF帯でもデジタル通信が可能な理由となっています。

[3]RTTY受信側の構成1…ハードウェアで復号

 RTTYは機械受信なので、機械(回路)で符号を復号(解読)します。昔は、メカ部分が動き始めると、けたたましい音のするお化けのような装置だったそうですが、今ではコンピューター化され、アマチュアにはフリーウェアもあり、パソコンと無線機を接続するだけで送受信環境ができてしまいます。
 まずは、専用受信機で復号する場合の構成を見てみます。
Fig.HF0507_b RTTY受信…ハードウェア複号方式
Fig.HF0507_b
RTTY受信…ハードウェア複号方式
 Fig.HF0507_bのように、受信した高周波に局発を混合して…とやっている部分は普通の受信機と同じです。
 しかし、その先にある2つの帯域フィルタ(BPF)で、マークの周波数(BPFm)とスペースの周波数(BPFs)を分けている部分が、普通の(音声の)受信機とは違います。
 各々で、信号があるかないかの識別を行い、このデータから符号(文字)に復号します。
 この方法では、(周波数差が170 [Hz]しかないので)シャープに切れる帯域フィルタが2本必要になるため、高価になります。

[4]RTTY受信側の構成2…ソフトウェアで復号

 周波数のシフト幅が170 [Hz]しかないので、SSBやCWの受信機でも帯域の中にマークとスペースの信号が十分入ってきます。
 音声帯域の信号になってしまえば、今では、パソコンでも簡単にデジタル信号処理ができるので、受信機の音声をソフトで解析してマーク/スペースを復号することも可能になっています。
 Fig.HF0507_cは、受信機と計算機を繋いで復号するシステムの構成図です。
 受信機の部分は通常のSSBやCWの受信機で、この音声出力をパソコン等に繋ぎます。最近のリグは高速なDSPを積んでいますから、受信機の中に組込まれた計算ハードで処理しても構いません。
 信号をA/D変換した後、FFTにかけて周波数分解し、デジタル化した帯域フィルタでマークとスペースに当たる周波数で信号の有無を検出します。FFT以降は全てソフトで処理しますから、特性の変更はハードよりは格段に自由になります。
 信号を分離するデジタルフィルタも、特性が十分シャープなものがソフトで作れるので、ハード処理の場合のようなコストの問題も殆どありません。
Fig.HF0507_c RTTY受信…ソフトウェア複号方式
Fig.HF0507_c
RTTY受信…ソフトウェア複号方式
(なお、上記の構成例以外にも、ソフトウェアで異なる処理をして、マーク/スペースを分離している可能性があります。すべて調べきれていませんので、Fig.HF0507_cの構成が唯一の方法ではないことをご承知置き下さい。)
それでは、解答に移ります。
 …RTTYは中心から±85 [Hz]ずらした電波を発射するので、正しい記述です
 …搬送波を直接キーイングするのがFSKで、低周波発振器を用いるのがAFSKなので、正しい記述です
 …RTTYは送信中、振幅が一定で、受信側のAGCが効きやすく正しい記述です
 …変位量を小さくすれば、占有周波数帯幅は狭くなるので、誤った記述です
 …復調は2個のBPFを使ったハードによる方法と、ソフトで信号処理する方法があるので、正しい記述です。
となりますから、正解(誤った記述)はと分かります。