□ R01年08月期 A-03  Code:[HB0104] : 抵抗からなる回路網の合成抵抗・枝の電流・未知の抵抗値等の計算
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09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3108A03 Counter
無線工学 > 1アマ > R01年08月期 > A-03
A-03 図に示すπ形抵抗減衰器(アッテネータ)の減衰量Lの値として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、減衰量Lは、減衰器の入力電力をP1、出力電力をP2とすると、次式で表されるものとする。また、log102≒0.3とする。

  L=10log10(P1/P2) [dB]
 6 [dB]
 9 [dB]
12 [dB]
16 [dB]
20 [dB]
問題図 H3108A03a
Fig.H3108A03a

 この問題は、現時点(2019年8月)で過去に出題の例がありません。「アッテネータ」と聞いて、面食らった方も多かったのではないかと思います。新たな分類にしようかとも思いましたが、あることを知っていれば、単なる合成抵抗の問題に帰することができるので、合成抵抗の分類としました。

[1](π型)電力比を電圧比で表す

 アッテネータ(減衰器)は、通常は高周波用の部品で、インピーダンス整合が取れるように、入出力の「インピーダンス」が同じです。高周波に詳しい方なら、「アッテネータなんだから当たり前じゃないか」と思われるかもしれません。私は見たことがありませんが、入力が50 [Ω]、出力が75 [Ω](又はその逆)などというアッテネータも、原理的には作れないことはありません。
 なお、アッテネータの回路構成には、π型とT型がありますが、π型を例に説明してから、T型を説明します。
Fig.HB0104_n 「見込む」の考え方
Fig.HB0104_n
「見込む」の考え方
 もう一つ、高周波的な見方は、「ある回路を見込む」という考え方です。アッテネータの入力側(回路図を見て明らかなように、このアッテネータは入出力対称なので、方向性はないが、仮にどちらかを「入力側」とする)から出力方向、或いは、出力側から入力方向に特性値を求めたりすることを、「入力(出力)から出力(入力)を見込む」という言い方をします。
 Fig.HB0104_nの上の図のように、出力に負荷が繋がった状態で、ab端から電源を切り離し、出力側のインピーダンス(今回は合成抵抗)を測ったり、同図下のように、入力に電源が繋がった状態で出力を切り離し、xy端から入力側のインピーダンスを測ることを考えます。
 この時、出力側から入力側のインピーダンスを求める時には、電圧源は交流的には短絡なので、ショートとして考える所がミソです。こうして見れば、入出力共にインピーダンスは同じRLです。このような場合は、デシベルで表した入出力の電力比と電圧比は同じになります。このことを、簡単に証明します。
 まず、入力の端子間に生じている電圧をV1、出力の端子間に生じている電圧をV2とすると、入力電力P1と出力に出てくる電力P2はそれぞれ、次式で表されます。
 P1=V12/RL …(1)
 P2=V22/RL …(2)
電力比を求めるには、(1)式/(2)式から、
 P1/P2=(V1/V2)2 …(3)
となります。この両辺の常用対数(の10倍)を取れば、減衰量L [dB]は、
 L=10log10(P1/P2)=10log10[(V1/V2)2]=20log10(V1/V2) …(4)
となって、電力比で表したデシベル値は、電圧比で表したデシベル値に等しいということが分かります。但し、これができるのは、比較する両側のインピーダンスが等しいことが条件です。(実は、電力比のデシベルのlogの前の係数10、電圧比や電流比のデシベルのlogの前の係数20は、この理由により決まっている。)

[2](π型)合成抵抗の分割比の計算

 上記のことが知識としてあれば、問題が求めろと言っているLが、π型のアッテネータではFig.HB0104_oのように、電源を繋いだ時にab端に生じる電圧V1とxy端に生じる電圧V2の比であることが分かります。
 さらに、この図から、V2を求めるのにRBは必要ありませんから、RA, RC, RLの3本の合成抵抗(並列になったRCとRLにRAが直列になっている)の電圧分割比を求めれば良い(同図右)ことが分かります。
 電力(の対数比)で表された減衰量が、抵抗3本の合成抵抗とその電圧(抵抗)分割比(の対数)で求められる、という単純な方法で求められるのは、(繰返しますが)整合が取れていて、しかも入出力側共に同一インピーダンスであることが必要です。このことは、くれぐれも忘れないようにして下さい。
Fig.HB0104_o 合成抵抗の電圧分割比による解法
Fig.HB0104_o
合成抵抗の電圧分割比による解法
 さて、あとは計算あるのみで、電圧(=抵抗)分割比を求める(5)式から、(6)式が導けます。
 

 

[3](T型)ストレートに電力比の計算

 上のπ型では、簡単に電圧比から計算できましたが、T型では素直に電力比を計算しても比較的簡単に求められそうです。このあたりは、どちらをどの方法で求めた方がいいかを丸暗記するより、合成抵抗の計算や枝に流れる電流の計算を数多くやって、「見通しのいい」求め方ができるようになることです。
 さて、π型でもT型でも、ポートポートとは、高周波の用語で電磁エネルギーの出入り口のことです)を「見込む」という考え方は同じです(Fig.HB0104_p)。
Fig.HB0104_p T型でも「見込む」の考え方は同じ
Fig.HB0104_p
T型でも「見込む」の考え方は同じ
Fig.HB0104_q 枝を流れる電流の比率
Fig.HB0104_q
枝を流れる電流の比率
 さて、Fig.HB0104_qのようにRCの枝に流れる電流をI1、RB+RLの枝に流れる電流をI2とします。この時、ab間から負荷側を見込んだインピーダンス(純抵抗)はRLで、流れている電流はI1とI2の合計ですから、入力電力P1は、
 P1=(I1+I2)2L …(7)
と表せます。一方、出力電力P2は、電流I2が流れているRLの電力を求めればよいだけなので、
 P2=I22L …(8)
と表せます。求めるアッテネータの減衰量L [dB]は、
 
で求められます。さらに、このカッコの中のI1/I2は、Fig.HB0104_qの右側の回路で、Cの両端の電圧と(RB+RL)の両端の電圧が等しいことから、
 
と求められますから、これを(9)式に代入して
 
と求められます。
 一般に、アッテネータを設計する時は、欲しい減衰量があって、抵抗値をどう組み合わせようか、という話になりますので、この式のように減衰量を求める式よりは、抵抗値を求める式の方が一般的です。

それでは、解答に移ります。
 問題から、(6)式にRA=(3/4)RL、RC=3RLを代入すると、L=20log102≒6 [dB]と求められます。従って、正解はと分かります。

 この問題は、単純な合成抵抗の問題でありながら、「電力のデシベル値」=「入出力電圧のデシベル値」がある条件(整合終端、同一インピーダンス)でのみ成立することを知識として要求する、いわば「知っていればすぐ解ける問題」です。今迄1アマには出てこなかった知識ではありますが、高周波の世界では基本なので、頭に入れておきましょう。