□ R01年12月期 A-21  Code:[HH0511] : 折り返しダイポールアンテナの電気的特性と用途
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3112A21 Counter
無線工学 > 1アマ > R01年12月期 > A-21
A-21 次の記述は、図に示す素子の太さが均一な二線式折返し半波長ダイポールアンテナについて述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。ただし、波長をλ [m]とする。
(1) 実効長は、[A][m]であり、アンテナ利得を[B]で表すと約2.15 [dB]である。
(2) このアンテナに75 [Ω]の給電線を接続したとき、給電点におけるVSWRは、約[C]である。

λ/π 相対利得 4.0
2λ/π 絶対利得 4.0
2λ/π 相対利得 3.0
2λ/π 絶対利得 3.0
λ/π 相対利得 2.0
問題図 H3112A21a
Fig.H3112A21a

 これ(2019年12月期)までに出題されていた折り返しダイポールアンテナの問題ですが、インピーダンスを直接的に問う代わりに、75Ω給電線を接続した時のVSWRで聞いています。1つの問題で2つのことを問う、複合的な(嫌な)問題になっています。ここでは、ついでにダイポールアンテナと抱き合わせで解説しています。

[1]ダイポールアンテナと折り返しダイポールアンテナ

 ダイポールアンテナは自作もできる基本的なアンテナです。折り返しダイポールアンテナは、指向性アンテナの放射器によく用いられます。テレビのアンテナ等でおなじみだと思います。
Fig.HH0511_a 半波長ダイポールの構造と特性
Fig.HH0511_a
半波長ダイポールの構造と特性
Fig.HH0511_b 折り返しダイポールの構造と特性
Fig.HH0511_b
折り返しダイポールの構造と特性

半波長ダイポールアンテナ(Fig.HH0511_a)
項 目 特  性
構造・動作原理 片側約λ/4のエレメントを直線状に展開し、平衡給電する。共振させて用いる
指向性・偏波面 指向性:水平面内=8の字 垂直面内=無指向性
偏波面:銅線の展帳方向に同じ(一般に水平)
インピーダンス 73+j43 [Ω]だが、普通両側を短縮してλ/2より短くし、リアクタンス分(虚数部:j43)をゼロにして使う
利得・実効長(高) 利得2.15 [dBi] 実効長λ/π [m]
電流分布 給電部が電流最大で末端に行くほど正弦的に減少する分布。先端では原理的にゼロ
周波数帯域 共振周波数を中心とする、狭い帯域。
(エレメント径を波長に対して太くすると多少広がる)
特徴・用途等  アマチュアでHFのワイヤー系といえばダイポール。長波長側のバンドではコイルを入れて短縮
 この変形に、インバーテッドV(逆V)アンテナがある。これは、給電点を頂点として逆V形に張ったもの。敷地の狭い所でも張れる。開き角が小さくなるほどインピーダンスは低下、帯域は狭帯域に。他の特性は、ほぼ半波長ダイポールと同様

折り返しダイポールアンテナ(Fig.HH0511_b)
項 目 特  性
構造・動作原理 片側λ/2のダイポールを折り返してループにした構造。前後のエレメントの径r1、r2やエレメント間隔dでアンテナの特性が変化する。
指向性・偏波面 (水平設置の場合)
指向性:水平面内=8の字 垂直面内=無指向性
偏波面:水平
インピーダンス 半波長で太さがどこも同じの単純な折り返しなら、理論上292+j168 [Ω](半波長ダイポールの4倍)
実用はリアクタンス分を打ち消して200〜300 [Ω]
利得・実効長(高) 利得:約2.15 [dBi]  実効長2λ/π [m]
半波長ダイポールの倍(*欄外に解説)
電流分布 λ/2ダイポールとほぼ同じ
周波数帯域 λ/2ダイポールよりも広帯域
特徴・用途等  広帯域を必要とする、TV受信機のアンテナ(八木アンテナ)の放射器として用いられることが多い。アマチュアでも、周波数の割に帯域が広い430 [MHz]の八木アンテナの放射器として用いられる。
 折り返さないダイポールと異なり、平衡電流が流れないので、同軸ケーブルで給電可能

(*解説…なぜ実効長が半波長ダイポールの倍なのか?
 まず、半波長ダイポールアンテナと折り返しダイポールアンテナのインピーダンスをそれぞれZd [Ω](約73 [Ω])とZf [Ω](約292 [Ω])とします。簡単に言えば、
 Zf/Zd=4 …(1)
です。
 次に、両者が、電界強度E [V/m]の中に置かれている時、各々の有効電力(受信系のインピーダンスが整合している時に受信機に供給される電力)をそれぞれPd [W]とPf [W]をとしてこれを求めます。(実効長をそれぞれ、led [m]とlef [m]とします。)
 Pd=(Eled)2/4Zd [W] …(2)
 Pf=(Elef)2/4Zf [W] …(3)
両者は、利得が同じなので、同じ電界中に置かれた時の有効電力も同じはず、つまり、Pd=Pfのはずですから、(2),(3)式より、
 (Eled)2/4Zd=(Elef)2/4Zf
この式は、
 led2/Zd=lef2/Zf
とできて、さらに、
 (lef/led)2=Zf/Zd …(4)
この(4)式の右辺に(1)式を代入して、
 (lef/led)2=4
 ∴ lef/led=2 …(5)
つまり、折り返しダイポールの実効長は、半波長ダイポールの2倍、ということになります。何だか不思議な感じもしますが、インピーダンスが異なるので、「利得が同じなら実効長も同じ」という関係が成り立たない、という例です。

それでは、解答に移ります。
(1) 折り返しダイポールの実効長はダイポールの倍の2λ/π [m]です
(2) 折り返しダイポールの利得はダイポールと同じですが、これを絶対利得で表せば、2.15 [dB]となります
(3) 折り返しダイポールのインピーダンスは理論上292 [Ω]ですから、75 [Ω]の給電線に接続すると、接続点ではVSWR=292/75≒4となります
となりますから、正解はと分かります。
 75 [Ω]の給電線に292 [Ω]のアンテナを接続すると、なぜVSWRが4になるのか、については、H1312A20の解説をご参照下さい。